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1)福士哲夫(エジンバラ)/斜め45°からの夕陽が射し、建物を色濃く染める。
茶系の色調の中に陽射しが作る影が画面の中でリズムを与える面を作る。
何か荘厳なシンフォニーを聴いているような感覚を起こさせる。 |
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2)鈴置昭(精霊の栖)/神が潜む深い森に、崇高に高くそびえたつ一本の樹を
真正面に捉え、狙いのはっきりとした作品になっている。淡い黄色系の空が神々の
神秘さをかもし出し、全体の画調をまとめ一体化させている。グリザイユの部分と
そうでない部分の使い分けをすればもっと絵が強くなり、訴える力が増すのではないだろうか。 |
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3)金井千映(オストゥーニ)/白壁に囲まれた家並みに光あふれる午後のシエスタの街であろうか。
画面中央に置かれた花が住む人の温もりを感じさせ暖かい生活観あふれる作品となっている。
もう少し足を運んで向こうの風景を見たい気に誘われる。 |
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4)杉坂厚子(希望)/窓から入り込む光が明日への希望の光として捉えられていているのだろう。
対象は人形なのだが生命感を感じさせる。明るさと暗さのバランスが程よく構成されていて
壁の微妙な色のニュアンスが画面に変化を与える。 |
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5)宮本みつ子(雨上がりの街で)/雨上がりのぬれた歩道、洗われた木々の緑、
向こうから差し込む穏やかな光、喧騒な街に一瞬静寂が戻った感じがする。少しデッサンの
狂いと木々の単調な色調が気にはなるが、まとまった作品となっている。 |
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6)三度毅(斜光)/人通りのない石の街。下り坂の前方に明るい光を浴びた建物が
細い隙間空間から垣間見られる。その光につい誘われて歩みを進めたくなる。
暗と明のかもし出す画面と色調が歴史の重さを感じさせて秀逸な作品となっている。 |
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7)伊藤昌子(ボトル色の影)/モノクロームの中にワインの赤味をアクセントとして置き、
狙いの効いた作品となっている。シルエットの百合の表現が白さを感じさせなかったのと、
ボトルとその影の表現に多少甘さがあったのは残念な気がするが、まとまった作品となった。 |
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8)村木フミ(木漏れ陽)/絵の具がしっかりと乗って色調、彩度、明暗が強く歯切れの言い
作品となった。木立の陰の奥にある光に引き込まれるように、
たおやかに散歩する二人に親しみのある風景画となっている。 |
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9)砂田拓治(エリスマン邸)/木立に埋もれる白い家。周りの暗い緑がなお一層家の
白さを引き立たせて、バランスが取れている。家の中から仄かな光が見られほっとする雰囲気になる。
建物の陰の部分をもう少し強くすると一層光を受けた感じが強くなるだろう。 |
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10)早川時江(緋色の記憶)/狙いの面白い秀逸な作品。赤い実が程よく画面のアクセントになっているが
少し強さに変化が欲しかった。窓に滴る水滴を主役とすれば、向こうの窓に映った教会は
もう少しあっさりとシルエット風に表現すればよかったかも知れない。 |
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11)西山幸子(西沢渓谷の秋)/渓谷を分け入り、色を変えた木々が重なり合う。
程よい汗が周りの冷気に心地よさを感じ、沢のせせらぎも聞こえるような気がするそんな絵に仕上がった。
近いところの木立の葉をもう少したっぷりと絵の具を乗せたらよかった。 |
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上杉紀恵子(アクシデント)/親子の猫が天衣無縫に遊びまわっているユーモラスな絵だ
(飼い主にはたまらないだろうが)。蝶の飛び回る動きにしばし動きを止めたしぐさが
緊迫感を与える。障子の中央にスポットを当てたような光を入れるとドラマチックになる。 |
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13)広田勇(回生の刻)/使い古しの機械がコウノトリに又再生の生命を与えられる。
二層三層のイメージの重なりで絵に変化が出てきた。分割の構成をもっと突っ込みたいし、
分割表現に変化がほしい気がする。よく見ると各ディテールが美しいタブローに仕上がっている。 |
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14)松村裕子(永遠の記憶)/古びた木質の上にダブルイメージで老婆が浮かび上がる。
顔と手のコントラストが劇的に表現され見るものに威圧感を与える。限られた生命が終わり、
無限という時間に変容し記憶の中に刻印されたとき、初めて存在が永遠のものになるのだろうか。
それではあまりにも切なく悲しすぎる。 |
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15)新井美代(潮路)/たしかな存在の重圧感に圧倒される作品。
色調が単調になってしまったこととデッサンが少し狂ったことは残念だ。
背景の板の表現をもっと確かなものにすることや、ペンキなどの剥がれ、
汚れなどの色調を変え入れれば画面に変化が出たと思う。 |
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16)山本啓子(日々の余韻)/物売り少年の動きのある生活観あふれるたくましさが
表現されている。手前に差し出された右手、持ち上げた左足の色調と明暗を強くすると
動きの確かな表現になる。人物表現(特に顔)をこれからデフォルメか写実かを徹底しないと
中途半端な表現に終わりそうだ。 |
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17)小林和夫(晩秋)/秋のまだ暖かさが残るある日、木立の影が白壁に落とす。
色調が穏やかで陽の短い秋日、時の移る様が感じられる。
しっかりと絵の具もつき重厚感がありいい作品となっている。 |
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18)斎藤民子(友からのプレゼント)/誕生日プレゼントの花束なのだろうか。
嬉しい気持ちの表れが明るい色調に表現されている。ポップな音楽が聞こえてきそうな雰囲気で、
見る側を楽しくさせる。リボンの動きをちょっと工夫すれば面白くなっただろう。 |
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19)枝寿一(時の流れに涙する)/多少デザイン的になってしまったが狙いの面白い作品。
人物をモノクロームにしたり、又一部別の質感表現にしたり(紙、コンクリート、木など)
すると面白い作品となったかも知れない。下地層を工夫したい。 |
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20)鈴木シヅ子(制作)/単なる人物表現とは違いちょっとひねって、作品としての絵になっている。
キャンバスの下方の一部、パレットの赤がアクセントになってバランスが取れている。
筆の表現も現実の世界として表現すれば引き締まったかもしれない。 |
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21)津輕石信一(遊び空間1:1618)/現代の何がウソなのかマコトなのか混沌としている世の中、
画面の中にウソなのかマコトをナンセンス風に表現する。
バランスの取れた黄金分割比で世の中をたぐってみる事も面白いのだろうか。 |
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22)吉岡進(撃留)/浮き球とロープの流れが作品にリズム感を与え、
下方の鉄の塊が画面を引き締めている。明るい色調でさわやかな感じがする。
船室の正面を暗くし、手前のロープの描きこみをもう少し描き込みするとよかったかもしれない。 |
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23)山田裕子(オンリー・ワン)/軽快な色調と線、面。半抽象化された花の色彩リズムが美しい。
部分的にマチエールが効いて上に乗せる色に変化を持たせる。
さらにこのシリーズでもっと抽象化し、計画的に下地層を作くれば完成度の高い絵が出来るだろうと思う。 |
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24)富山朋子(陽光にさそわれて)/出番が終わりひと休みしている大道芸人。
寒色系と暖色系の細やかなタッチの重なり合いが美しい画調にまとめている。
人物のズボンの色調が黒すぎ重過ぎた。もう少し明るいタッチを乗せ全体の明暗をまとめたら良かった。 |
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25)川ア健嗣(白川郷の夕映)/画面全体茜色に染まった一種独特な雰囲気の秋の絵である。
稲刈りも終わりほっとする農家の生活の安堵感が仄かな灯りの中から伝わってきて、
観る側に郷愁を感じさせる絵だ。 |
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26)山形勝子(創作人形)/人形の顔が妖気を帯びている。それぞれのディテールは
工夫を凝らした画肌になっていて苦心の跡が見られる。
縄、爪、唇、ラフな感じの線描写の人物など同じ色が散らばって目の流れが散漫になる。
焦点を絞ったところだけに使用したほうがいい。 |
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27)東谷たか子(間宿)/さびれた宿へのる入り口なのだろうか。
暖簾の色あせた感じが風情をかもし出し、鉢に差した植物が季節感を与えている。
敷石をもう少し平板に表現すればよかった。全体的に描き込みが不足なような気がする。
絵の具の層をつけると重厚感が増す。 |
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28)福士善江(河畔の春)/異国の春爛漫な穏やかな季節感が樹木の花や、
ゆったりと流れる川の様に出ている。メインカラーを決め余計な色調は出来るだけ省略するか、
色調を抑えるかしないと全体が絵の具に遊ばれているような気がする。 |
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29)梅村和男(マリアダジリ)/激しく、厳しく、又優しく包み込むような色をした波頭、
絶え間もなく押寄せる波に命の鼓動を感じる。作者は岩場にマリアの像を見たという。
黄金比で分割された水平線、岩場の切れ目が画面に安定感を覚える。遠くの半島を暗くすれば良かった。 |
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30)鈴木美津子(チューリップ畑)/N36.5展で始めての点描画。単純化された色面が多くの点で
埋められ軽快なリズムを生み出す。わずかうねりを持った黄色と赤の縞模様が遠近感をあらわし、
その向こうにある家へ視線を導入させる。明るく軽快な楽しい絵に仕上がっている。 |
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31)荒井陽子(冬支度)/秋の穏やかな光に包まれた何気のない田舎の情景が表現されている。
壁や藁屋根の細部の表現もあまり説明的でなく程よく描き込まれている。
唐辛子の赤と補色関係の緑が印象的な構成になっている。 |
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32)会沢澄子(僕らが照らしてあげる)/迷い苦しむ人々に可愛い天使が一筋の幸せを授けるため飛び回る。
背景や天使の部分は色相が何層にもかけられ、油絵独特の深みのある色調になっていて時間の
かかった作品と見受けることができる。 |
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33)瀬谷道男(奥会津の秋)/藁屋根の民家にポストや鶏などの生活感あふれる情景が描きこまれていて
しっかりとした絵になった。しかし画面に必要な事をもっと選択し省略してもいいのではないだろうか。
個々の細部にあまりとらわれない様に描く様にしたい。 |
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34)板橋正子(香嵐渓の秋)/同一色で遠近のある木々の表現をうまくまとめた。
川の流れが遠近感を手助けし自然と目線が奥へと行く。遠くにやはり紅葉した木々があり、
背景の緑と微妙なコントラストを見せている。赤系、茶系の色調に左の青系の石垣は少々違和感がある。 |
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35)瀧口恵子(蒼)/題名の通り青いイメージでまとまり、所々に入った黄色、ピンク、緑が効果的だ。
ソフトなイメージでまとまりがあり、自由で大胆なタッチが画面を生き生きとさせた絵になっている。 |
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36)宮崎勝行(五月の立山縦走)/春色した空が残雪といい配色を見せている。
岩場の立体感や遠くの山の色調にも破綻がなくよくまとまった作品となった。
手前の岩場は色調を幾分黒くさせ、向こうとの距離感を増せばよかったか。 |
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37)菊池守(五月の風)/たおやかな春の風をはらんで泳ぐこいのぼり。
所々に見られる菜の花の黄色がアクセントとなっている。田植えの時期の、
のどかな田園風景を感じ、澄み切った五月晴れの空の下、野草を摘みながらハイキングをしたくなるような絵だ。 |
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38)内田弘(NIGHT)/ライトアップされた赤レンガの倉庫。それを映す夜の海。
明るい所の絵の具の盛り上げが適所に効いていてきらびやかな夜の街をほうふつとさせ、
よい作品となっている。手前の船の明るさをもう少し暗くすると視線が奥へと行く。 |
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39)長山源(大漁を夢見て)/温かみのある色調がしばしの休息感を覚える。
ただ、浮き球とロープの構成がこの絵の見せ所だが、いったい主役がどれだかがはっきりとせず
絵が弱くなってしまったのが残念だ。 |
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40)滑川恭信(A婦人)/じっくりと人物と対峙し描き込んだ作品だが、
婦人坐像はテーマ感が希薄になりやすいので難しいモティーフだ。一体人物の何を表現したいのかを
はっきりとしないと作品とはなりえず習作と化してしまう。 |
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41)池田八重(田植え前)/水をたっぷりと溜めて田植えを待つ水田。水の温もりを感じ、
水面をかすかに揺らす春の若草色した風が体の中を通り抜ける。
のどかな田園風景の情感があふれる絵になっている。今度は田植えが終わった風景もいいですね。 |
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42)小林輝子(親子)/親鹿をじっと見つめる子鹿。子が親を求めている情愛を感じさせ
ほのぼのとした暖かい雰囲気だ。親鹿も子鹿を見つめるとなお一層その情愛が増したのではないだろうか。
画面が少々粉っぽい感じがするのでしっかりと絵の具を塗りこむようにした方がいい。 |