優しき熱
僅かな隙間から入る月光だけがこの部屋の明かり
切なげな吐息が漏れる小さな寝台の上
女を組み敷く男の腕は熱い
「辛そうだな?」
男の問い掛けに女は言葉にせずに苦笑で返す。
汗で額に張り付いた前髪をそっと掬った。
その動作一つでも彼女は痛そうに眉を寄せる。
「ここで止めるか?」
「止めたく、ない」
掠れそうな声に胸が痛む。
彼女の全てが欲しい、でも負担は掛けたくないのだ。
まだ半分も入っていないのだが、初めて男を受け入れる身体、痛みも相当なのだろう。
彼女も辛いが自分もまた辛い。
柔らかい花弁がきつく締め付けてくる快感に気を抜いたらイってしまう。
どうしたものかと考えていると尚香の腕が首に回された。
「ね、興覇」
「なんだ?」
「一気に来て」
「おま!今でさえ辛そうなのに本気かよ?」
だって、と小さな声が続く。
「辛いんでしょう?」
「・・・そりゃ、な。だけど、お前に比べれば大した事ねぇよ」
「あなたのそうゆう優しいところ大好きよ。でもね、このままで居るのも辛いの」
だったら一気に貫いて、そう願う尚香に真面目な顔で「わかった」と答える。
「手、背中に回せ」
「嫌」
「嫌って」
「嫌ったら嫌」
いつの間にか両手はシーツを掴んでいて、少し拗ねた様に視線を外した彼女に苦笑する。
「お前が思ってるほどやわじゃねーし」
「でも、嫌なんだもん」
「いーんだよ、ほら」
甘寧は尚香の腕を取って自分の背中に回させた。
渋々ながらもその手は外さないでいてくれる事に軽く微笑む。
「お前の痛み、俺にもくれよ」
「え?あっ、んん」
唇を奪われ、口内に熱い舌が入り込んで言葉で次げなかった。
そのまま舌を絡み取られ、掻き乱される。
唇の僅かな隙間から水音が漏れて部屋に響く。
甘寧の手が首から肩へ、そして滑る様な手つきで胸へと落ちていった。
敏感な頂に触れただけで尚香の体がビクリと震える。
撫でる様に、捏ねる様に、力を入れすぎない程度に巧みに手を動かす。
その間も唇は決して離す事はない。
甘寧の手による快感と、呼吸が出来ない程の口付けに頭の芯が揺れる。
刹那、彼が彼女の中へと入った。
声にならない叫びが甘寧の背中に痛みとして跡を付ける。
唇を離し、尚香の目から流れ落ちる涙を拭ってやった。
「大丈夫か?」
「っつ、少し痛いけど、大丈夫」
はーはーと辛そうに呼吸する尚香の髪をかき上げてやる。
力なく微笑む彼女の頬に口付けを落とす。
そのまま見つめ合って、しばしの時間を越すと呼吸を整えた彼女が優しく笑った。
「動いて良いよ」
「無理すんなって」
「ううん、大分慣れたし・・・ずっと我慢しててくれたんでしょう?」
実はずっと我慢してた、きつく締め付けてくる花弁の熱と柔らかさ。
動きたい雄の衝動を抑えるだけでもずいぶん精神を使った気がする。
「ね、もう我慢しなくても良いよ」
尚香の言葉に本能が疼く。
「悪ぃ、限界かもしれねぇ」
良いよと微笑む尚香の唇に自分のを合わせてからゆっくりを動き始める。
初めは痛みに眉を寄せていた彼女だったが、次第に鼻に掛かった甘い声が漏れた。
律動する甘寧に合わせて艶かしい唇から吐息が吐かれる。
「ぁん、はぁっ」
色白の肌は熱を纏って桃色の変化しているだろう。
やばいぐらいにその色っぽさに心も身体も奪われた。
どこかでそんな事を思っていたら、彼女の中の収縮が一層きつくなる。
「っう、ひぃあっ!あぁぁぁっ」
「くっ、すげ」
彼女がイった後の強烈な快感に甘寧も自分を解放した。
白濁の豪流が尚香の奥へと注がれる。
朦朧とする意識の中で彼女は自分の額へ口付けされたのを感じ取った。
ありがとう、声にならなかったけれど多分笑えたはずだから伝わってくれただろう。
そのまま意識は遠のいた。
僅かな隙間から入るのは朝焼けの明るい光
穏やかな寝息が聞こえる寝台の上
女を抱きしめる腕はこの上なく優しかった
<了>