あなたが理由




快勝、その一言に尽きる戦だった。
自分が進言した策が通って、この勝利に貢献できた事は嬉しく思うと同時に興奮さえした。
早朝に帰還する予定の為、既に眠らないといけない時間だというのはわかっている。
しかし眠れないのだ。
簡素な寝台の上で何度寝返りを打ったかわからない。
こんな事ではいけないと溜め息を漏らす。
その時自分の幕舎の幕が開けられた。
「伯言」
自分の字を呼ぶ鈴の音のような声の主は姿を見ずともわかっている。
「尚香様、どうしました?」
「ん、何だか寝付けなくて」
伯言は?と聞かれ、私もですと答えた。
暗闇の中でもその気配はよくわかる。
「一緒に居ても良い?」
「もちろん、構いません」
むしろ離れないで下さいと言いたかったが、それはもう少し後で言おうと考えた。
「明かりを点けますか?」
「ううん、いらない」
声はすぐそこで聞こえる。
手を伸ばして彼女の体を抱き寄せた。
悲鳴にならない小さな声と共にその華奢な身体は腕の中に納まる。
「もう今日は眠れませんね」
「・・・どうして?」
「ただでさえ高揚しているというのに、また一つ高ぶらせる原因が出来てしまったんですから」
「それって」
彼女の言葉が終わる前に自分の膝の上に体を乗せ、目の前の首に吸い付いた。
「あっ」
小さく悲鳴に似た声を上げたが構わず続けた。
ゆっくりと唇を離す、きっと痣が出来ているだろう。
少しだけほくそ笑んだが、自分の所有の印を刻んだだけでは満足できない。
尚香の頬に手を当てて引き寄せる。
そのまま唇を重ねた。
始めはゆっくりと啄ばむ様に、次いで舌が彼女の口を割って入って行く。
火が点いた様にお互いの舌を絡ませあうと、どちらのものかもわからない唾液が零れ落ちた。
陸遜はそのまま尚香の頬や顎、首に口付けを繰り返す。
その間に空いた手を服の中へと潜り込ませ、直に彼女の肌に触れた。
「やっ、伯言」
「嫌、ですか?身体はこんなに喜んでいるのに」
既に桃色の先端は尖り始めている。
上衣を脱がすと白い乳房の先端に吸い付いた。
「んぅ・・・ゃあ」
舐めては吸うを繰り返し、手で周辺をねぶっては形を変えるその柔らかさを楽しむ。
楽しみながらも片手は徐々に下へ下へと移動して行った。
下衣に手をかけると、尚香が僅かな抵抗をみせる。
「まだ嫌だって言うんですか?」
「だっ、て」
「嘘吐きな口ですね、こちらはこんなに正直なのに」
そう言って滑り込ませた指を蜜壷に差し込んだ。
「っあぁ!」
「ほら、こんなに欲しがっている」
指をかき回す度に卑猥な水音が響いた。
快感に身を震わせる尚香を見て笑う。
更に指の数を増やして、ざらついた部分をなぞった。
「ひっ、あぁ!・・・んぅ」
「我慢しなくて良いですよ」
親指で器用に陰核を撫でると尚香の体は跳ね上がる程に震える。
陸遜の指が速度を上げると、彼女の手が彼の上着をぎゅっと握った。
「あっ、も・・・もう、っやぁ・・・ああっ!」
指を締め付け、がくがくと痙攣する身体。
収まりかけた所で指を引き抜いたが、その瞬間さえ彼女には刺激だったらしい。
小さく悲鳴をあげて身体を震わせた。
腕の中でぐったりとする尚香の衣服を全て取り払う。
「きょ、今日の・・・伯言は、意地悪・・・ね」
息も絶え絶えに漏らす苦言に彼は苦笑した。
「自覚はありますよ。でも、こうさせたのはあなたですから」
「私・・・何もしてないもん」
「そうですね、私が勝手にあなたで昂ってしまっただけの事です」
力の抜けた尚香の身体を抱いて、己を差し込んだ。
「っっあぁ!」
「さすがに、きついですね」
言葉は余裕だが、その表情は正反対のものだ。
きつく締め付けてくる尚香の中で動けずにいる。
彼女の額や頬に口付けを落としていると、中が少し緩まって来た。
頃合を見計らって腰を動かす。
結合する部分から粘り気のある蜜音が絶えず聞こえた。
「っはぁ!ん・・・あっ・・・」
尚香の艶声に刺激される。
唇を重ねて、速度を上げた。
「んむっ!んっふ・・・っは、ぁあああっっっ!!」
唇を離す瞬間に彼女の一際高い嬌声が響き、陸遜を熱く締め付ける。
「っは・・・熱い、ですね」
白濁の液を最奥へと注ぎ、纏まり付く襞が気持ち良い。
しばらくその心地良さに浸っていたが、
名残惜しくも引き抜こうとした刹那、引き留める様ときゅっと締まった。
掴まれた感覚に男根が硬くなる。
「続けましょうか?」
「っや、だぁ・・・もう」
ほとんど泣き声になってしまった尚香を再度抱き締め僅かに腰を動かすと
陰唇は嬉しそうに咥えた。
「ここは私を離したくないようですが」
意地悪く耳元で囁いて、真っ赤に染まった尚香に優しく口付ける。
くすりと微笑んで、熱い身体を密着させた。
「どうせ今夜は眠れませんから」
つまりはあなたを寝かせません、という意味ですよと聞かされるのは
もう少し後の事になる。



<了>