陰事の如く<後半>
言ったじゃない、あなたまで苦しむ必要は無いんだって。
泣きそうな瞳で、震える腕で、私に触れようとしないで。
あなたの優しさが、すごく痛い。
薄暗い小屋の中へ尚香を連れて入った凌統は、板張りの床に彼女を降ろした後、
無言で向かい合ったまま動けなかった。
触れて良いのか、抱いて良いのか、心が定まらない。
不安だった、選ぼうとしている道は正しいのかわからない上に、他ならぬ大切な彼女を
傷つけるのは必至だったから。
「姫・・・」
呼ぶ声すら掠れてて、行動に移れない自分が情けない。
「名前呼んでりゃ、姫さんが救われるとでも思ってるのか?」
突如沸いた声に振り返れば、酷く不機嫌な面の甘寧が立っていた。
「興、覇?」
「悪い、少し遅くなった」
扉を後ろ手に閉めて、凌統の横を通り過ぎて尚香の前で屈む。
「戦の方は大丈夫だ、敵本陣も壊滅寸前だってよ」
「そっ・・・か、良かった」
息も絶え絶えに安心した様子の笑みを見せる。
「姫さんは具合が悪くなったから休ませてるって言っといた、早朝までには戻って来いと」
「・・・うん」
答える声に先程の安心した響きは無い。
「心配すんなよ、ちゃんと帰れる」
「興覇?」
「もう我慢しなくていいぜ?」
言うが早いか手が早かったのか、甘寧の利き手が尚香の衣服の中へと入った。
「うあぁっ!」
「甘寧!!」
「何もできねぇーんなら黙ってろ!」
凌統に向かって鋭い視線を送る。
「このまま放っておけば、狂うのは間違いねぇんだよ!助ける方法は一つだろうが!!」
「それはお前の勝手だ!そんな事で救えるかどうかなんてわからない!」
「・・・てめぇはただ逃げてるだけだ」
「・・・っ!」
「好きだから抱けないんだろ?俺は違う、好きだから抱ける!」
言い切った甘寧を潤んだ瞳で見上げ、名前を読んだ。
「興・・・覇」
わからないけど、嬉しかった。
媚薬のせいで思った事とは違うと断言出来る。
これは自分の本心だと、確信めいた何かがあった。
「抱いて、くれる?」
「あぁ、気が済むまで抱いてやる」
「・・・嬉しい」
目が嬉しそうに細まった。
無理やり押さえつけていたものから開放されてた出た表情は、濃艶な女の顔。
衣服を脱がされた肌は、薄闇の中で更に白さを浮き立たせる。
「苦しいのはもう止めてやるよ」
噛み付くように唇を奪う。
同情で触れられる事を嫌がっていた尚香は、愛情で触れてくる男には
嫌な気が微塵も起きない事に不思議な気さえしていた。
嬉しい、嬉しいと心が弾む。
身体が、心が、空いた隙間を埋めてくれるモノを求めていた。
「んっ、あぁっ!」
甘寧と尚香の動きの一つ一つが凌統には、綺麗に見えた。
上気した頬や、僅かに開いた唇の隙間から覗く赤い舌が艶かしい。
尚香の身体を弄る甘寧の動きさえも、けして汚らわしいものには見えなかった。
「もっと!!」
突如尚香が声を上げた。
切羽詰った声は、立っていた凌統へ向けられる。
細腕を必死に伸ばして彼を熱い眼差しで見つめ、甘えるように声を出す。
「公績ぃ」
凌統は伸ばされた手を取って思わず口付けていた。
そのまま指の間に舌を這わせる。
躊躇はなかった、尚香に触れて、抱く事こそ自分の本心で願いだと悟った。
それさえ確定してしまえば、他に考える事などない。
逃げる意味などないのだから。
「俺だって男ですからね、あなたが欲しくて欲しくて仕方なかったんですよ」
揶揄するように言えば、尚香は恥ずかしそうに視線を逸らす。
しかしそこを狙ったかの如く、甘寧に唇を奪われた。
「んむっ」
舌が口内で暴れ回り、呼吸が出来ない。
だがそこにばかり集中していると、耳の穴に入れられた舌の感覚に身を震わせることになる。
言葉は勿論発せない、逃れようと身を動かしても男二人に抑えられて動けなかった。
呼吸困難に陥る間際でようやく離された唇から息を吸い込めた。
だが、落ち着こうとする身体は、蜜壷に差し込まれた長い指にまた翻弄される。
「ひあっ!ん、あ・・・あぁっ」
「トロトロですよ姫」
中を掻き回していた指を引き抜き、尚香の眼前でそれを舐め取る。
「やだっ!公績」
「照れる事ないでしょう?」
ニヤリと笑い、愛液が溢れ出す蜜壷にまた指を入れ、先程より激しく動かす。
「やぁ、んっ・・・あ、あっ」
「嫌じゃないでしょう?気持ち良いなら気持ち良いって素直に言って下さい」
「気持ち・・・良いっ!あ、はっ・・・んぅ」
指を増やして出し入れを繰り返し、陰核を舌先で転がす。
首の辺りは執拗に甘寧に攻められ、赤い跡が鮮やかに浮かんでいた。
只でさえ感じやすくなっているので、性感帯が敏感に反応を示す。
胸の頂を甘咬みされて、一度目の絶頂へ達する。
ひくつきながら、指を締め付ける感覚にほくそ笑んだ。
だがこんなものでは足りないだろうという予想は、彼女の唇から漏れた言葉で正しかったと思わされる。
「・・・足りない、の」
「心配すんなよ、俺等もまだまだ足りねぇんだから」
尚香を後ろから抱きしめるようにして耳元で囁く。
そのまま彼女を四つんばいにして後ろから彼自身を挿入した。
「はぁ、んっ・・・」
「く、すげぇ熱い」
襞が吸い付く様に甘寧を包み、きゅうっと締め上げる。
「姫、こっちもよろしく」
尚香の口に凌統は陰茎を入れた。
「ん、む」
快感の波に揉まれながらも、一生懸命に凌統に奉仕する姿に彼は目を細めた。
たまに上目遣いで見られるのも心地が良い。
甘寧が動く度に揺れる彼女の髪を掬うが、逃げる様に指の間からさらりと零れていった。
だがその感触が気持ち良くて、飽きる事無く彼女の髪を救い続ける。
唇の隙間から、結合している部分から、卑猥でいてなお彼等三人を興奮させる水音が響く。
甘寧の腰の動きが早まり、尚香の舌も動きが怠慢になる。
それでも何とか唇を離さずに、口付けたりする彼女の
口内で硬さは増して、今にも吹き出そうな程。
「そろそろ、か?」
大きく出し入れをしていた甘寧の動きが、小刻みに早くなり、尚香を上へ上へと追い上げる。
「んっぅ、んー!っふぁ、んうーー!!」
「っきつ!うぁ・・・く」
彼女の内部のきつさに、甘寧もほぼ同時に達した。
熱く白濁した液体が注がれていく。
尚香の喉奥へも凌統から吐き出されたものが注ぎ込まれる。
「・・・っす、げぇ」
そのまま飲み込んだ彼女の喜悦した濃艶な表情に惹きこまれ、思わず言葉が漏れた。
甘寧は自身を引き抜き、尚香を抱き抱えながら顔を覗き込んで尋ねる。
「もっと欲しいだろ?」
「・・・欲しい」
その言葉に赤い頬に口付けを落として、尚香の身体を反転させた。
「次、凌統そっちな・・・俺こっち行くから」
「あぁ・・・姫、まだまだですよ」
「ふぁっ!あぁ、ん」
時間を置かずして硬くなった男根が再び陰唇へと入れられる。
唇を割って狭い口内へも入ってきた。
「まだ時間はたっぷりあるからな、好きなだけ溺れろよ」
息も絶え絶えに繰り返される行為の中で、
二人の男に抱かれながら尚香は思う。
二人共離したくない程愛してしまった私は
このまま時間が止まれば良いのにと願ってしまう
その想いは陰事の如く
私の胸だけで
密やかに、密やかに
<了>
・・・終わったー!
終わったよ!!ようがんばったで自分!(笑)
待ってて下さった皆様に捧げます←いらんって言われそうだ(^^;)