今日終わらせなければならない仕事の竹筒を持って廊下を歩いていると後ろからいつもの音が聞こえた。
彼女の走る音、これが殿や周瑜などに見つかったら叱られるのは目に見えているのだが
当の本人は走ることをやめようと思うことすらないようだ。
「こぉーせきーーー!」
後ろから走ってきた速度のまま抱きつかれ前へつんのめる。
普通だったら一緒に倒れるところだろうが、予想は出来ていたので踏ん張りがちゃんと効いた。
「っと、相変わらず元気が良いですね姫様は」
「もちろんよ。ねぇねぇ外行こう外!こーんなに天気が良いのにもったいないわ」
「あの、俺一応仕事があるんですけど」
「そんなの後で手伝ってあげるから、ね!」
このおねだり光線に勝てる奴がいるなら会ってみたいもんだ。
「しゃーない、付き合いますか」
「やった。早く行きましょ兄様に見つからない内に」
「はいはい、ほんと姫様には参りますよ」
帰ってきたら孫権に怒られ、陸遜や甘寧には嫉妬の目で見られるんだろうなと考えつつ、
この仕事が片付くまで尚香の側にいられるのはチャンスの一つだろう。
そう思うとほくそ笑んでしまうのは仕方が無い。
「ちゃんと最後まで付き合ってもらいますからね」
あなたが側にいてくれるなら
怒られるのも、嫉妬されるのも悪くない
<了>