言える訳ない




呉の姫、孫尚香が蜀へ嫁いでどれくらいたっただろうか?
ハッキリ日にちを数えたならば、そろそろ一年。
西の方向ばかりを向いてしまうのはまったく直らない。
もうすぐ夕暮れ、一日の終わりも近いがため息ばかり出る。


尚香は劉備と仲睦まじく、蜀の連中とも上手くやっていると報告は受けている。
沈む夕日を見ながら感傷に浸ってみた。
「姫様が幸せならそれで良いんです・・・なーんて言える訳ないっつうの!」
こっちは夜も眠れないほどにあなたが恋しいって言うのに。
俺の事少しは気にしてくんないのかねぇ?
なんて毒づいてみるが、遠い地にいる彼女には届かない。


姫様、あなたがいなくなってから

空風ばかりが吹いている気がする

まったくあなたって人は存在そのものが大きすぎて

いなくなったその日から

心(ここ)はぽっかりと穴が開いたまま



「本当に、あなたがいないと駄目なんだよなぁ」

姫様、俺ここで誓っちゃって良いですか?

いつになるかわからないけど

「あなたをこの腕に取り戻す!」


<了>