夢の中の私は

何の苦も無く伝えられる

「あなたが好きです」  と


夢の中なら


「今日も鍛錬ですか?」
見知った後姿に声をかけると、しなやかな体が笑顔で振り返る。
「そうよ。天気が良いんだもの、体を動かさなくちゃもったいないじゃない?」
春の日差しと同じような柔らかい微笑みのまま答えた彼女に、わざとしかめっ面で返した。
「尚香様の綺麗な体に傷が付いたりする方がもったいないと思いますが」
この言葉に目前の彼女はむっと眉を動かす。
不機嫌な表情の尚香に真顔のまま尋ねた。
「・・・怒りましたか?」
「怒ってるって言ったらどうするの?」
「たとえあなたが怒ってしまっても、私は発言を撤回するつもりはありません」
「だと思った。伯言の性格はわかってるつもりよ」
「そうですか。ですが、私も尚香様の事はわかっていますよ」
「なら止めたりしないでよ」
「心配してるんです・・・それは知っておいて下さい」
陸遜の言葉に、今度は破顔する彼女。
「わかってるって!ありがとう伯言」
走り去って行く背中に溜息をつく。
本当は、本当に伝えたい気持ちは、一度も言った事が無い。

「好きです・・・あなたが、誰よりも」

夢の中なら伝えられるこの想い

いつになったら、本物のあなたへ伝えられるのだろうか?



<了>
短っ!って思いますけど、たまには簡潔に(笑)
まだまだ片思い中の陸遜を書きたくて書きました。