駘蕩恋花
春の陽気は近くまで来ている。
小鳥の囀る声も心なしか喜んでいる気がした。
気づかぬ内に机に突っ伏していて、そのまま浅いような深いような眠りへと誘われる。
こんこんと扉を叩く音が聞こえたが、瞼が上がらず声を出す事も出来なかった。
「失礼します」
丁寧な開け方で扉を開けて入ってくる人物はわかっている。
対応したいのに全身を襲う眠気が許してくれない。
動かない自分の身体が恨めしかった。
「眠っておられるのですね」
すぐ側でくすりと笑う声が聞こえる。
眠気で応えられない私の髪に何かが差し込まれた。
「やはり似合っておられる」
甘い香りが微かに香る・・・恐らく何かの花だろう。
この気遣いが嬉しい。
「春が近いとはいえ、風邪を召されますよ」
身体に回された腕の感触に、抱き上げられるのがわかった。
「んっ」
「起こしてしまいましたか?」
申し訳無さそうな声に、何とか違うという事を伝えたくて彼の服の端を握る。
「もしかして、眠くて仕方ないのに起きようとしていらっしゃいます?」
彼の問いに、答えたかった。
あなたと一緒に居たいのよ、と。
でもそれは頭の中でしか言葉にならなくて。
悔しい思いが手から伝わったのか、姜維は優しく笑った。
「大丈夫です。わかっておりますから」
そっと耳元で囁く声が柔らかい。
寝台に寝かされるのではなくて、腕に私を抱いたまま彼は腰を下ろした。
「あなたの眠りが覚めるまで・・・いえ、覚めてからも側に居ますから」
「は・・・くや・・・く」
「はい。あなたの望みのままに」
何処までも優しい声に導かれるように眠りの淵へと足を踏み入れる。
起きた時に目の前にあなたが居るなんて
こんな幸せないわよね
微笑んだ私の額に優しい口付けが降りて来た
<了>
リウさんとのコラボ作品です。今までもコラボしてきましたけど、今回は
私が先に小説を書いて、そこからリウさんがイメージしたイラストを描くという
幸せ一杯なコラボ作品となっております。
コラボまたやりたいな〜vv