茨城県の中小企業のため、宇宙への夢を形に

      小型ロケットビジネス研究会 その軌跡
                                           2004・12・12
 本年3月まで茨城県商工労働部長を務められていた滝本徹さんが茨城を去る前に
「茨城県の中小企業が元気になるためのカンフル剤としての事業」をさがしていたところ
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の柴藤さんが持つロケット作りのノウハウを知り
JAXAと県内企業の技術を組み合わせれば、小型ロケットを作れるのではないか?
とのテーマで各界に諮ったのです。
 つくばに居を構えるつくば研究支援センターを中心に、ロケットビジネスに係わる
企業体に通知が出され、また商工労働部の藤沼課長が声かけをして平成15年2月から
準備会を開催しました。

 県内の中小企業(団体)の中から選ばれた我々「日立青年経営者研究会」でも
滝本さんが在職当時、会長であった煙山のところに打診があり、若手会員に広く広報
するようにとのことだったが、あいにく賛同を得られず「代表」として数度にわたる研究会
の準備会議に参加しました。
 同16年7月2日に設立準備会を行うことになったが、このときには参加団体
潟xンチャーラボ・鰍ツくば研究支援センター・NPO法人ひたちなかワーク
東邦殖産梶E金澤工業梶E茨城県商工労働部が名前を連ねて、そこに中小の
企業十数社が正式入会の意志を固める前の段階で名簿に名を連ねたのです。

 そして幾度かの準備会議を経て、いよいよ記者会見を開く日が来たのです。

以下、楽天日記に掲載した僕の日記からの転記。
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    2004年9月14日(火曜) 

 僕が参加している団体の中に「民間でロケットを飛ばせるか?」という研究会が
あります。
 経緯はさておき、茨城県庁内で記者会見を行ったのですが、折りしも県庁一階の
エントランスでは、オリンピックでメダルを取ってきた県内出身の選手たちの歓迎
レセプションが行われておりまして、僕たちの記者会見には県庁詰めの記者が
8〜9名しか来てくれませんでした。


     rose
          研究会の代表幹事ほかが質問に答えました
 真剣に「飛ばそう!」と思っている私たちと「そんなもん出来るんかいな?」と
訝しがる記者たち。

 正式な発足と総会は9月16日に「つくば研究支援センター・テクノ大ホール」で
行われるのです。
そこでの記者会見ではもっと突っ込んだ質問が飛び交うと思われますが、秘密に
しておきたい項目もあったりして。

 記念講演は「松本零士」さんが来てくれる事になっています。
「銀河鉄道999」などに表現された「青年の夢・宇宙への憧れ」などが、僕たちの
研究会で実現されることにでもなれば、松本さんにとっても他人事じゃないのかも
しれません。
 
 他の新聞は取っていないので、読売新聞に掲載された一文を転記します。

   茨城県産ロケット開発〜中小15社で研究会〜

   茨城県内の中小15社が、小型ロケットの製造・打ち上げを目指して研究会を
発足させる。
  宇宙ビジネスを巡っては、大阪府東大阪市の中小企業が小型人工衛星の開発に
乗り出しているが、小型ロケット製造などを専門的に行う民間企業は国内にはなく、
中小企業による新規事業開拓に期待がかかる。

   研究会の構想では、ロケットは高さ17m、直径2mで、二段式液体燃料の使用を
想定。
  高さ400kmの低軌道に小型衛星や実験装置を打ち上げる能力を持ち、価格は
同じ能力を持つ他国のロケットの1/5から1/10に抑え、1機1億円を目標にする。

  参加する15社は、機械加工、小型モーター、精密洗浄、ベンチャー支援などで、
ロケット部品製造に携わったことがあるメーカーが中心となる。
  1社50万円ずつ資金を出し合い、今年度中に小型ロケットの市場調査や、民間
技術による製造・打ち上げの可能性を探る。県も100万円を助成する方針。  
  ビジネスとして可能性があると結論が出れば新会社を設立、2008年の打ち上げを
目指す。

   小林敏明代表幹事は
  
「疲弊した中小企業が元気になることが出発点。
  技術、資金などの問題をつかんで、夢を実現させたい」

   と話している。


 僕たちの話したことが100%伝わったわけじゃないことが良く判りましたが、まぁ
こんなものでしょうか。

 16日の発足総会では、また取材してきます。って、僕ってば、傍観しているし。
 研究会は独自のリサーチや研究が出来ないので、委託先の報告を待つしか
ないんですけれどね。
 でも、夢を現実に出来るなら、ちょっとくらい苦労しても良いんだけれど……

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 そしてその設立総会の模様も以下

   2004年9月16日(木曜)

 茨城県の肝いりで始まった「小型ロケット研究会」の設立総会が行われました。
3月までに実現の可能性を検証するだけの研究会ですが、賛同各社、つくば支援
センター、茨城県(商工労働部)、JAXA、アドバイザー会社など、みんなが真剣に
なって今日を迎えました。

 総会は型どおりに終了して、記念講演の松本零士さんが会場入りすると、背後の
気配はまさに<宇宙>。

 小学生だった戦時中の逸話では、ややもすると後ろ向きに捕らえる「終戦の日、
その前後」を(自分にとっての勉強の場であった)と位置づけていることに驚かされ
ました。

活字じゃなく、目の前で起きた出来事や人情の機微などは、僕の財産」とまで仰る。
 漫画化仲間(石ノ森さん&手塚さん)のお話しは活字にはできない面白さでしたし、
宇宙への憧れに至っては「あなたたちのロケット事業は僕の夢でもある」とまで
言い切りました。
 
 「数度の失敗で懲りたりせず、近い将来に迫りくる天体異変や地球の大きな
  変化に備えるためにも、宇宙で生活できるような基礎技術を、日本人の手で
  開発、実践させてください

という内容のお話を戴いたときに、会場のほとんどの人が思ったに違いありません。
  ……(もしかしたら私たち、とっても大切な一歩を踏み出そうとしているのでは?

これが最後のメッセージでした。
 「子供たちの心の中に、すでに未来は出来上がっています
  その子供たちが手に入れる未来を実現させるために
  子供たちを応援し、守り、励ましましょう


 朝日新聞の女性記者は、記者会見のときにも突っ込んだ質問をしていましたが、
この日も前列で松本さんのお話に聞き入り、膝の上においたノートに速記で内容を
記しておりました。
 月曜には訝しがっていた記者たちも、木曜には自分たちの問題として捉え始めて
いる……だってこんな大きな夢、こんなにも必要性のある夢は、誰も、他に出会った
ことがないのですものね。

 この話を持ってきてくれた前の商工労働部長からメッセージが届いておりました。
もしかしたら彼がイメージしていたよりも、もっと大きな花が咲くのではないかな?
そんな気がしてやまない午後のひと時でした。

            999-1
            演題 [ すべては人間の心の目から始まった ]

            999-2
             先生と僕   先生はシャイな人、らしい


 関係者や記者が入り乱れた懇親会では、お開きの挨拶を頼まれてしまいました。
先生や関係者へのお礼を申し上げて、3月までの決意を述べて「一本締め」をさせて
いただきました。

 夢を現実にするために、僕たちは今日から歩き始めました……

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 それからの我々は、3月末日に出さなければならない結論を、できれば
GO!
へと持って生きたいと願っているので、ビジネスとして成り立つかどうかを評価して
くれる関係企業の
意見にも、良い色を探し出そうと必死になっているところです。

 具体的な流れで言えば、1月末には報告がなされて、それを元に研究会で討議し
新しい組織作りに持っていけるかどうかを検証するのですが、なにせ数億円の
初期資金が必要とされているこの事業なので、初期投資した企業も慎重にならざる
を得ません。

 上手く軌道に乗れば、平成20年には一号機を飛ばすことも可能ということなので
もし僕たち研究会の手を離れてしまったとしても、小型ロケットが宇宙への架け橋に
なることができれば、それは大きな喜びです。

 日本国の予算をふんだんに使って作成された「H2Aロケット」は、この2月にも
飛行実験を経て発射台に乗るとの情報もあります。
国内外でヒートアップする衛星研究:たとえば東大阪の「まいど一号」をはじめとする
民間の技術が宇宙で花開く日も近いのだと思えば、我々研究会の「小さな夢」でも
今後の「地球号」の運命を左右する仕事ができるだろうと期待しているところです。