岩手県立盛岡第一高等学校1960年卒在京同期会
在京白堊三五会・エッセイ(野田坂伸也)

花林舎・ガーデニング便り 季刊No.33 (2009/03)
発行:竃田坂緑研究所



花林舎・ガーデニング便り(No.33)
(巻頭エッセイ)

 『「迷う人」と「迷わない人」』


01 01
02 02
03 03






花林舎動物記 17&18

 『インコと娘の涙―1』



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04 04
05 05
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07 07
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09 09
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 『インコと娘の涙―2』



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在京白堊三五会 エッセイ(野田坂伸也) 岩手県立盛岡第一高等学校1960年卒在京同期会
在京白堊三五会・エッセイ(野田坂伸也)

花林舎・ガーデニング便り 季刊No.20 (2005/05)
発行:竃田坂緑研究所







 『専門家の価値観』



 『通販生活』という雑誌を愛読しているのですが、その中に全国の無用、
無駄と思われる公共建築を弾劾する連載がありました。1回に4〜5ヵ所紹
介されていましたが、その最終ページに特に大きく取り上げられたのが京都
駅でした。全国に数多くある問題建築の中でもこれが最も悪い、という指摘
でした。

 私も数年前に京都に行った時〔この駅舎を見て驚きました。『通販生活』
の筆者は、「この駅舎は原子力空母である」と書いていますが、まさにその
とおりの形状と巨大さで、たいていの人は「何で京都のど真中にこんなもの
を」と思うに違いありません。

 以前京都タワーが景観を阻害する、と非難の的になりましたが、京都駅舎
は全く比較にならないスケールで“京都らしさ”をこっぱみじんに打ち壊し
てしまいました。

 しかし、建築家はそのようには思わないでしょう。私の知人のある建築家
(某県のリーダー的存在)は、京都駅舎を見て「美しい」と思ったそうです。
なにしろ当時の我が国のトップクラスの建築家の設計コンペの中から選ばれ
たデザインなのですから、賛否両論は常にあるものの、多くの建築家は素晴
らしい建築だと考えたであろうと思います。

 ところで、盛岡駅の西側に高くそびえる“マリオス”というビルは盛岡市
の都市景観賞を受賞しています。私は開運橋の方から新幹線盛岡駅舎の後ろ
にそびえるマリオスを初めて見た時、「ここは大阪か」とびっくりしたこと
を今でもはっきりと覚えています。マリオスの出現によって、盛岡駅近辺は
決定的に地方都市らしさを失ってしまいました。

 しかも、マリオスは国鉄機関車工場という、レンガ造りの文化財ともいう
べき建築を破壊して建設されました。あのレンガの建物を化粧直ししてマー
ケットとして活用し、これを中心とした下町風の街づくりをすれば、盛岡駅
西口は我が国でも有数の魅力ある町になったのではないでしょうか。盛岡が
より魅力ある町になる大きなチャンスを逃がしてしまったことが悔やまれて
なりません。

 私は、マリオスには「景観破壊特別大賞」こそがふさわしいと思っていま
す。この建物に都市景観賞を与えるというのは専門家でなくてはできないこ
とです。すべての分野で、専門家というのは時に、一般生活者には考えられ
ない判断をするものです。

これが、みちのく岩手の玄関の風景なのです。