岩手県立盛岡第一高等学校1960年卒在京同期会
在京白堊三五会・エッセイ『花を買い来て―』by佐藤勇夫

結婚記念日にまつわるエッセイ




『花を買い来て―』


 昨日は我々夫婦の39回目の結婚記念日であった。記念日当日の昨日は所用が
あったので、前日に娘の誕生日祝いも兼ねて三人で会食をした。レストランに事
 前に会食の目的を伝えていたので、結婚記念日祝い、誕生日祝いの気配りがあり、
それなりに楽しい会食となった。39年、天皇皇后両陛下の金婚式50年には遥
かに及ばないけれど、長い年月が経過したものだ。ここまで何とか持ち堪えられ
たのは東北人(私のこと)の忍耐強さのお蔭と私は言うのだが、勿論家内は耐え
たのは自分だと納得はしていない。                   

 この記念日で何時も思い出すのが啄木の                

   友がみなわれよりえらく見ゆる日よ                
   花を買い来て                          
   妻としたしむ                          

の歌である。この歌は昔から好きな歌で、こんな関係の夫婦が良いだろうなと思
っていた。20年以上も前のことだろうか、日々の帰りも遅くなり、家には寝に
帰るだけの日が続いていたある日、乗り継ぎ駅近くの花屋が閉店間際に花の安売
りをしているのが目に入った。そこでこの啄木の歌を思い出し、値下げされた花
を買って帰った。家内は何事かと言う顔をしたが、喜んで受け取って呉れた。こ
れで遅い帰宅の埋め合わせが出来たかな、と思った。           

  何回か続いたある日、家内が「お父さん(俺はお前の父親ではない、「旦那様」
と言え、「旦那様」と。しかし、私も母親でもないのに「お母さん」と言ってい
 るので、お互い様か。これは余談である)花を買って来て呉れるのは嬉しいけど、
この花は仏さんに上げる花だ」と言ったのである。思い起こせば、確かに菊とか
地味な色の花が主体であった。                     

  啄木はどんな花を買って帰ったのであろうか? どんな花でも良いのであって、
買って帰り奥さんと一緒にその花を愛でるのに意義があるのである。私はその後
 も記念日には花を買うようにしている。勿論、仏さんに上げるものではない花を、
である。                               

 白堊35会の白堊健児の皆さん、結婚記念日を覚えておりますか、奥様の誕
日を覚えておりますか?お互い、認知症と言われないようにしなければなりませ
んね。                                

                            終わり    

                          2009年4月25日   佐藤 勇夫