ホテルへ着き、部屋に集まった我々は、今回の企画者としお君からスケジュールなどの説明を聞いていた。既にみんな、暑苦しいライダージャケットを脱ぎ、軽装になっている。着くなり早速買ってきた、ビールを片手にしている。
としお君からの話も終わり、早速お風呂へ行こうとみんなが動き始めたとき、その出来事は起こった。そう。その時、歴史は動いたのである。
その時の人の配置を記さねばなるまい。会長は窓際、つまり部屋の一番奥にいた。そのまわりで、みんな輪になって話をしていた。ベンちゃんはドアの近く、会長とは反対側にいた。話が終わり、輪が崩れた――そのとき、何度も言うが、歴史は動いたのである。
会長がいつもの調子で、ベンちゃんに呼びかけた。この時、ベンちゃんと会長の間には、2・3人の人が座っていた。ちょっと遠くへ呼びかけるような感じであった。「ベンちゃーーん」人が動いている。みんなお風呂の準備に動いているのである。会長から良く見えない位置にいた、ベンちゃんの姿が見えた瞬間、会長は今、話そうとしたことも忘れ、ちょっとキレぎみに言ったのである。
『なーんで、グリーンなんだ!!!?』
その場にいた全員が凍りついた。その、脈絡のなさ。その、理不尽さ。その、キレ加減。いつもなら軽くダジャレで返すベンちゃんも、あまりの言われように、口をパクパクさせて言葉が出ない。目が点になっている。その時、ベンちゃんが着ていたのは、緑のポロシャツに、緑の短パン。全身まさに「グリーン」であった。
どれだけの時間、沈黙が流れたか。その沈黙を破ったのも会長であった。「いやー、いつも緑ばっかり着てるなーって思って、、、なんでなのかなー?って」いつもの口調にもどって、会長が話し出すと、みんな堰を切ったように爆笑したのである。腹を抱えて笑っている。大声で笑っている。涙を流しながら笑っているものもいる。
ようやく、べんちゃんから「み、緑が好きなんです」と言葉が出てきたが、まだショックは隠し切れない。心に負ったダメージは深そうである。それだけのインパクトのある、会長の発言であった。
みんな、まだ笑っている。ながやま君は、たっぷり5分は腹を抱えて転がっていた。それからしばらくしてからも、みんなで思い出しては笑っていたのである。誰かが言い出す「な、なんで、、、」と全部言い終えられないうちに、みんな爆笑してしまう。そんな笑いの嵐が、たかつえの夜に吹き荒れたのであった。
当然、「なんで、**なんだ!!」と言うのが、楽走会で流行る事になった。しかし楽走会の中でも、その場に居なかった人には何のことだかわかるまい。ああ、なんとももどかしいが、この事件はやはり、その場に居合わせた人にしかわからないもの、なのかもしれない。あの時の空気をお伝えできないのが残念である。しかしこの事件は、楽走会の爆笑事件として長く語り継がれる出来事であるのは、間違いない。
『なんでグリーンなんだ!?』事件!