「たかつえ」一泊ツーリングにおいて、ひとつの事件が起こった。私はこの事件を記録にとどめなくてはならない、という使命感により、つたない文章ながらもここに記するものである。
名づけて「会長『癒された〜』事件!」
はたして、会長を癒したものの正体とは、、、!?
塩原でスープ焼きそばを食べ終え、高橋君は日帰りなので帰ることになった。この後の予定は、時間があれば『日塩もみじライン』を走るはずであった。しかし、天気が怪しい。雨が降りそうである。さて、どうする?――と、相談していたとき会長が突然、 「ここに、行ってみっぺ」(注:茨城弁/訳「行ってみようよ」の意)と言い出したのは、『奥会津歴史民俗資料館』???日塩を走るか、早く宿へ行って温泉に入るか、を悩んでいたところ、まったく考えてなかった案に虚をつかれ、、、、、そこへ行く事に。
途中、やっぱり雨に降られ、カッパを着ながら到着した『奥会津歴史民俗資料館』。平日だからか、雨だからか、それともいつもそうなのか、ひっそりとしていて他に客はいない。。。もしかして、休み?いや、そうではないらしい。「やる気無さそ〜」私は、ちょっと不安な気持ちになった。
入口で記念撮影をし、いそいそと入っていく会長。折角来たんだから、、、とついて行くベンちゃん、中村教官、と私。他のみんなは駐車場に待機。みんな今ひとつ興味がわかなかった様子である。正直、私もたいして興味は無かった。中へ入ってみると、古い道具や生活用品などを展示している展示館と、古い民家などを再現している外の散策コースの2つに分かれている。
展示館では、巨大なのこぎりや、かま、古い和太鼓、、、などいろいろなものが展示してあったが、私とベンちゃんはスイスイと見終わってしまい、展示館を出てしまった。会長は、実にじっくりと見ている。その会長を待つようにゆっくり歩いていた中村教官も、ついにしびれを切らして出て来た。
散策コースは、わらぶきの民家や水車小屋など、5軒ほどの建て屋があるようだ。敷地は結構広く、起伏に富んでいる。我々は最初の民家の中に入り、真っ暗な中、電灯が点かないか試行錯誤した。やがて『分電盤』(元電源)を探し当て、自ら投入。(おそらく、観光バスでも来ない限り、ここの職員は電源をわざわざ入れに来ない、とみた。[注:完全に私の憶測に過ぎません])民家の中は土間、板の間に続き、畳の部屋があり、結構広い。板の間に3人で寝ころんで、しばしマッタリ、、、「こういうの、、、興味ある?」「いやー、、、、、あります?」「いや俺も、、、」という会話がかわされていた?かもしれない。
しばらくして、会長が民家に到着。「ここは、馬をつないでいたんだね」「ここがトイレ」「ここで飯炊きをしたんだね」着くなり解説が始まり、なにやら感慨深げ。あちこち歩き回って、興味は尽きないようである。畳の部屋に上がりこんで、「あー、ここで寝たんだね」「じいさん、ばあさんと、子供と、、、」そこまで考えて、会長はひとつのことに思い当たったらしく、しみじみと言ったのである。「昔の人は、どこでチョメチョメしたんだろうねぇ〜」その時は、大して気にも止めなかった会長の発言が、『癒された〜』発言の発端であったことを、我々は後に知ることになるのである。
外は小雨が降ったりやんだりしている。次に見たのは、水車小屋。中には入れないようになっていた。道端にはアジサイが咲き、とてもキレイであった。その次にあったのは、炭焼きの施設。4本の柱の上に屋根が乗っかっている。その下には材料の薪が積み重なっていた。「これは、屋根があるだけで、家とはいえない」(by ベンちゃん)、、、聞かなかった事にしてそのまま歩いて行く私たち。
次にあったのは、なにやら木のお椀を造っているらしい作業場。ここでは、電気のスイッチが見つけられなかった。薄暗い部屋の中、会長が突然「ああ〜」と、納得したような声を出した。「ここでしたねェ〜、昔の人は〜」私は少し考えて、さっきの民家の中でなにやら言っていたのを思い出し、心の中で突っ込んだ。「ずっと、それを考えていたのかよ!」
最後に訪れたのは、農具などを入れる納屋。結構広く、中にはちょっとした畳の部屋がある。会長の解説が始まる。「ここは、小作人みたいな人を住まわせていたんだねぇ」「牛をここにつないで、、、」そしてもちろん、一番気になっていたのは「あ〜、ここでもしたねェ〜、昔の人は〜」チョメチョメであった。ここに来て、昔の人がどこでチョメチョメしたのか理解し、すっかり心のつかえが取れて満足した会長。納屋を出て帰り道を歩き出したとき、会長は声高らかに言ったのである。
『あ〜、癒された〜』
駐車場で待ちくたびれ、雨にも降られたみんなは、ちょっぴり恨めしい視線を送ってきた。会長、気にせず「また、降ってくっから早く行くべ!」(注:茨城弁/「また、降ってくるから早く行こうよ」の意)昔の人のチョメチョメに思いをはせ、すっかり癒された会長を先頭に、我々は今宵の宿へと走り出した。私は、駐車場でさんざん待たされた連中に「今夜この話をしてやろう」と、ちょっと優しい気持ちで、最後尾から走り出したのである。
会長『癒された〜』事件!