楽走会


『二代目 サドー・ウルフ』事件!

「那須甲子道路」ツーリングにおいて、忘れられない事件があった。あれから2年、今なおあの出来事は私の脳裏に強烈に焼きついている。今さらながら、ここに記録をとどめたい。
『二代目 サドー・ウルフ』事件! 「二代目」に秘められた思いとは、、、!?

那須甲子道路を走り終えた楽走会の面々、餃子を食べるため宇都宮へ移動することに。那須からの道路はとても混んでいて、我々は暑さにくじけそうになりながらも、餃子のために何とか頑張り通したのであった。

宇都宮にたどり着くと、いつも置かせてもらう、有名な神社の前に駐車。結構沢山のバイクが止まっていたが、ほとんどは地元と思われる原付スクーターであった。

バイクを置くと、いつもなら「よーし!餃子食いに行ぐべー!」(注:茨城弁/「さあ、餃子を食べに行こうよ」の意)と、誰とも無く言い出すところが、、、誰も言い出さない。みんな道路に、ごろり、と転がって動き出そうともしない。那須からの道中の暑さが、かなり堪えたのである。そして動こうとしないのは、動けば日陰から出なければならないからだ。あと少し、あと少しだけ休ませてくれ、みんな心からそう思っていた。

そのまま、15分は経っただろうか。我々がごろごろしている神社の前に、2台のバイクが入って来た。我々と同じように、ここにバイクを止めて、餃子を食べに行こうとしているに違いない。しかしバイクを止めようにも、我々がごろごろしているため、止められないでいる。当然、我々は優しく道を開け(当たり前?自分の家じゃないしね!)2台のバイクを止めさせてあげた。

みんなは、おっ!という顔で2台のバイクを見てる。それもそのはず、ライムグリーンのZRX1100と、同じくライムグリーンのZRX400。パッと見、そっくり兄弟だったのである。1100から降りてきたのは、族っぽいアンちゃん。400から降りてきたのは、かわいい女の子だった。(みんなの目を引いていたのは、こっちだったかもしれない。)大胆なバイク・ペアルックとも言える。1100のアンちゃんは、「なんか文句あっか!」と言いたげに我々に一瞥くれると、さっさと背を向けて歩き出した。女の子は、男に寄り添うように付いて行ってしまった。

さて、変わったバイクと、持ち主が近くに居ないバイクは、そこに居合わせたバイク乗りに、なめ回すように見られる、、、というのは、世界中どこでも見られる光景です。我々も当然その2台のバイクを、まるで持ち主の知り合いであるかのように、ジロジロ、と見ていたのである。族っぽい彼のバイクにしては、何と言うか、我々と一緒に走ってもおかしくないバイクに見える。(人を見た目で判断してはいけませんね。)でもまあ、ZRXが珍しいわけじゃない。私も、「1100と400はどこが違うのかな?」ぐらいの意識で見ていた。

それを発見したのは私だった。1100の正面ライトの上、ビキニカウルの部分に何やらシールでロゴっぽいものが貼ってあった。見てみると、とてもキレイに出来ている。一字づつ、丁寧にシールを切り抜いたように見える。手の込んだ作りである。手作りか、プロの仕事か、判断に迷う ― そんな出来映えである。そこには、英語で単語が2つ。その下に、日本語で単語が2つ書かれていた。

日本語は『二代目 影狼』。と書かれている。「かげろう」と読むのだろうか?私は、さっきの族っぽい兄ちゃんを思い出し、「まあ、それらしいな」などと思っていたのである。「夜露死苦」系?、、、だとしたら、何とも微笑ましいではないですか。

しかし、英語の方を見たとき何か違和感を憶えた。ん?『sadow wolf』???サドーウルフ???あ〜!もしかして『shadow wolf』って書きたかったんじゃ、、、日本語とも合うし(合う?かな、、、一字づつなら!)しかし誤字か???、、、それにしては、あまりにも出来が良すぎるのである。むむ、、、私はうなってしまった。はっきりと断定できないまま、私はみんなに見てもらった。

「間違いだよ」「初代は気付かなかったの?」「いや、二代目だから何か深い意味があるのかも、、、」「茶道だったりして」「英語?これ」「この出来はプロっぽいよ」「プロなら気付くでしょ?」「意外と彼は、器用なのかも」「でもこれ、貼ったばっかりって感じじゃないよね」「今まで誰も気付かなかったのかな?」「あの彼女も」「みんな気付いてても言えないとか」。。。。。。さっきまでぐだぐだにダレていたくせに、暑さも忘れ、みんな喧喧諤諤である。「初代はきっと、死んでいて、、、」勝手に物語を作り出す者まで出て来た。

真相は本人に聞くのが早いのだが、あの族っぽい(しかもキレやすそうな)兄ちゃんに、「ねえねえ、これスペル違うよ〜」と、子供のように指摘できる勇気を持つものは居なかった。わざわざ待っているのも嫌だし。我々の意見は、次に誤字をやらかした人間が『三代目 サドー・ウルフ』だ!という全然関係無い方向にまとまった。

暑さも忘れ議論をした我々は、少し元気を取り戻し、ようやく重い腰をあげた。そうだ。我々は、この街へ餃子を食べに来たのであった。その事をやっと思い出したように、我々は宇都宮の街中へ歩き出した。その時!「三代目は誰か?」という思いが、みんなの背中から陽炎のように立ち昇っていたのを、私は見た気がしたのである。

『二代目 サドー・ウルフ』事件
- 了 -


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