8.遍路御礼と後日談

 遍路結願の御礼
四国八十八ケ所遍路道を夫婦で歩き、八十八番大窪寺で結願、その足で高野山お礼参りをし、長い長い遍路旅が終わりました。
 遍路では四国の皆さんから沢山のご接待、子供達や多くの方々からの元気な挨拶、激励の言葉に励まされました。遍路が終わり、四国での色々な場面を思うと充実と満足です。遍路を決断した時は、群れから離れる勇気と覚悟が問われ、悩みましたが決断・決行し結願でき、これからの人生を生きる、「はぐれる勇気」が鍛えられたと実感しました。また、一期一会の歩き遍路さん、自転車遍路さんから多くのアドバイスと談笑が非常に有難かったです。遍路道は「遍路みち保存協力会」の皆さんの地道な努力で、江戸時代からの遍路道が残っており感謝します。
 初遍路は、一国巡り、区切打ちなので、四季折々の自然現象との戦いでした。梅雨の大雨での初遍路転がし焼山寺登山、大雪の久万高原峠超え、最後は、台風21号で避難勧告が出ている中、七十一番から七十六番金倉寺まで歩き、翌日以降は屋島での崖崩れや、橋沈下でコース変更となりました。多くの難行を克服し大窪寺での結願は感動です。
 結願し、結願証と遍路大使任命書・大使バッチを授与し、これからの人生の励みになります。これも四国でお会いした皆様のおかげと感謝しております。帰宅後、感謝の言葉をフェイスブック、趣味のHP等に発信しました。
 初遍路は人生の深呼吸です。息を吐き切り、新鮮な空気を体内に一杯入れ、ひたすら歩きました。札所で手を洗い、宿で杖・体・衣類を洗い、翌早朝から、またひたすら歩きました。遍路の明け暮れは「洗い」の繰り返しで、心の垢を洗い流すのは難しいですが、思いが内側に向く時があり、心が洗われる事を実感しました。
 遍路の祈りは請求書(お願いします)でなく、領収書(有難う御座います)と思い、ひたすら歩きましたが、仕事や天候等の事情で一部公共交通機関や車接待を使用したのは悔やみますが、予定通り1400kmを結願できました。
 遍路道は、接待の数珠で繋がれ、清楚な札が遍路人の心を洗ってくれたと感謝しております。遍路道で被っていた菅笠に書かれている、「迷故三界城」「悟故十方空」「本来無東西」「何処有南北」(迷うが故に三界城、悟が故に十方は空、本来東西無し、何処に南北有らん)は何だか意味が分かりませんでした。結願し、「迷えば狭い枠の中、悟れば宇宙のただの中、風に任せて歩くだけ」を実感し、また遍路に行きたいと感じ、四国病になったと思います。
 最後に、妻とこれだけの時間を共有したのは新婚旅行以来だと思います。現役時代は、残業・休日出勤、単身赴任等で何日も一緒にいた時は無かったです。これだけの期間、同じ目標に向け歩き結願でき、妻に感謝、四国に感謝します。また、90歳の母を自宅に1人残しての遍路でしたが、母も頑張り何事も無く安心し、母にも感謝です。
 毎日の歩行計画
①歩くペースは30㎞/日、5㎞/時で6時間歩き、山登りは3㎞/時、下りは6㎞/時の計画。
②休憩は1時間に1回5分、6時間で25分とする。

③寺の参拝は30分/回を目安とする。

 遍路の一日
①朝食は6時から6時半にとりました。
②6時前に出発する時には、前夜にお握りをお願いしました。
③但し、宿坊は朝のお勤めがあり予定通り出発ができず、其の日の歩行計画が大幅に遅れる事がありました。
➃昼の時間に食堂がなく時間遅れの昼食が多かったです。山道では一日食堂がない所も多く、宿でお握りやパンを接待され助かりました。
⑤納経は17時までなので、納経に間に合うよう15時までに参拝できるよう一日の歩行計画をしましたが、17時ギリギリに間に合いヒヤヒヤした事が何度かありました。
⑥歩行計画の遅れた原因は、道間違い(逆歩きもあり)、沈下橋の沈下、崖崩れで道寸断、雪道での迷い、疲れで休憩時間延長、団体客の納経で長時間待ち等、想定外の事が多くありました。
⑦遍路宿は、2食付で6000円から7500円でしたが、美味しい料理と楽しい談笑ができました。

 お接待
お接待は、行き暮れた旅人や、きつい修行に取組む遍路への「援助・支援」という人間同士が助け合う基本的な姿です。しかし、「お遍路接待」は二重の意味があり、一つは「弱者」への支援で助け合いの延長にある「施し」、もう一つは、自分自身の身代わりにお大師様にお参りして欲しい「寄託」のようです。また、苦行の道を歩くために来訪する遍路は弘法大師の代身とも言われ、上の二つの気持ちが混じりあった形として、弘法大師へのお布施として差出すという意味もあるようです。遍路には、おそらく自己資金ゼロや、お接待・托鉢のみに頼り歩いている遍路もいました。食物や現金は遍路が頂くのではなく、「お大師様」への信仰と、四国を歩く遍路に対する「お接待」と思います。従い、必要としなくとも断る事はないよう言われました。断るのは、「お接待」をする方の信仰に対する無礼な行為なようです。
私達は、下記の「お接待」を頂きました。
①昼食のお握り、パン、お茶、②車送迎、③スーパーでのドリンク、➃山登りでの荷物預かり、⑤お賽銭のお金、⑥遍路宿での洗濯、⑦同行道案内、⑧手造り品(巾着、テッシュケース等)、⑨お菓子、飴、⑩子供達の元気な挨拶(これを接待と思う自分は未熟と思います。)
 後日談
結願して1年たちました。思えば、遍路前半は脊柱管狭窄症を気にしながら歩きました。最近、友人から腰の具合を聞かれ、今は全く気にならないと言ったら、信じられないと驚いていました。これも遍路結願の効果と感謝してます。また、10年ぶりに参加したハーフマラソンでは、夫婦で参加し共に自己新記録更新しました。これからの人生、どうなるかは予想できませんが、この経験がこれからの人生を楽しい方向に導いてくれるように思います。四国に感謝、感謝です。