語り合うことで
 私は、手足や口が利きません。会話は、トーキングエイド(声が出る機械)でしています。

 近ごろ、虐待やいじめなど、心が痛むニュースをよく耳にしますが、私もそんな体験をしました。前、ある福祉施設に入所し

ていました。当時はトーキングエイドがなく、指で指せないために文字盤も使えませんでした。このことがきっかけになり、看護

婦さんや寮母さんから陰でつねられたりごちゃまぜにしたごはんを食べさせられました。たしかに食べさせやすかったかも知れ

ませんが、どうしても好きになれませんでした。夜、カラカラに喉が乾いても朝まで待っている時もありました。今でも待つことが

心配だったり、まぜごはんが苦手です。

 必死に助けを求めて、親や外部の人に話したら、さらにエスカレートして、しまいにはぜんぶ私が悪いようにされました。

『なぜ、怒られるのか?』と不思議でした。こんな出来事があってから、怖くて、人に自分の考えをストレートに言えません。

 こんどは、友達からも無視や暴力・暴言などのいじめにあいました。耐え切れない時、じっくりと話を聞いてくれたり、助けて

くれる仲間が欲しかったです。

 私も強くなり、もっとはっきり言っていれば、わかってくれる人が一人でもできたかも知れません。今でも仲間外れや、だれも

相手にしてくれない気がします。特に春になるとその記億がよみがえってしまい、気持ちがすっきりしません。

 でも、Kさんに出会って、トラウマ(過去の心の傷)はだんだん無くなりました。話を私のペースでゆっくりと聞き、引き出して

くれます。相手のペースで聞くことや、尊重することは、一見簡単なことだとみえてもすごく難しいことです。

 Kさんに会えて、自分が好きになり、何事もチャレンジするやる気が湧きました。私にしてみれば、命の恩人のような存在

です。

 分かってくれる良い友人もできました。『どこか行きたい!』と言えば、連れて行ってくれます。なかには、遠方から『親友は

君しかいない。』と言って、会いに来てくれる友人もいます。

 今、こんな暖かさを持っている人は、多くありません。逆に悪質な犯罪や、我が子を死に追い詰める時代です。

 この原因は、人の愛情や、厳しさ、コミュニケーション不足だと思います。

 独りで悩めば悩むほど、子供や弱い人を傷つけます。友達、近所の人、家族に苦しい気持ちを打ち明ければ、その心の

わだかまりがなくなります。何より、周りも真剣に耳をかたむけてほしいです。そうすれば、『一緒に考えてくれる仲間がいる。』

と思うだけで、気が楽になり、思いやりのある人間になると信じています。

 仲間の輪に入れない人がいたら、やさしく声をかけてあげてください。はじめは、嫌がるかも知れません。でも、語りかけて

いくうちに心を開いてきてくれると思っています。相手を認めること、お互いにうれしいことや、悩みを語り合うことで、きっと

虐待は、なくなってゆくでしょう。

 生きるうえで一番大切なのは、心の健康です。落ち込んでいる時は、体の調子も悪くて、心が元気な時は、すぐ治るもの

です。かつてのつらい日々の経験も、良い勉強になりました。だから、みんなと笑いながら自分らしい毎日を送りたいのです。

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