2001茨城県芸術祭映像コンクール
入賞作品紹介と審査評

特  賞 「三百歳御臨終」 日立市・滝 孝光さん
● 平成13年に出品した「おれは三百歳」の黒松が、平成12年10月に突然枯死しその伐採の様子を擬人化して映像にした。

優  賞 「水郷ちょっぴり感傷紀行」 日立市・中島 朗さん

● 体調不良で撮影会に参加できないでいた私に娘が付き添いを買って出てくれた。しかも、現地では頼んだ写真撮影まで懸命にやってくれた。そうした娘の行動をいぶかっていた私だが、撮影をしながら娘の気持ちに気づいた。まもなく結婚する娘は父親への最後のサービスであったらしい。娘の父に対する思いと、父の娘に対する思いがあやめ咲く水郷で微妙に交錯する。

優  賞 「朝日に映える名峰マッターホルン」 日立市・細川 正男さん

● マッターホルンを眺めにスイスに出かけ、天候には恵まれなかったが日程とホテルにこだわった個人旅行のおかげで4日目の朝に念願の朝日を見ることができた。氷河急行を含む4日間の旅日記をまとめた。

奨励賞 「56年目の証言」
       鹿嶋市・市毛 光さん
奨励賞 「追  憶」
       大洋村・中村 昌義さん
● 特攻隊として戦死した、兄のレポート。兄はどんな生き方をし、そして戦死したのか。● 少年の頃眺めた車窓よりの景色、追憶を頼りに一度たずねてみたいと考えていた思い出の地を訪れて見た時の記録をまとめてみた。

奨励賞「 雪 」
     つくば市・寺田 英雄さん
奨励賞「おふくろと畑にて」
       高萩市・時崎 清さん
● 朝窓を開け外を見ると一面銀世界。千載一遇、待ちに待った雪景色。カメラを持って近くの万博公園に出かけた。幻想的な風景でポエム調にまとめたつもり。● おふくろとの日常生活を記録し、まとめた。一見何の変哲もない日常であっても喜怒哀楽があり四季があり、何かが変わり生まれている。人生は素晴らしく、生きとし生けるものが讃えられる。そんな作品をと心がけた。

茨城新聞社賞 「新治村・小町伝説の里」
         土浦市・岩城 英夫さん
● 新治村に小野小町の墓といわれる五輪の石塔がある。なぜここに小町の墓があるのか?小野小町伝説を基にその由来を尋ねると共に、最近復活した小町万灯の行事を取材した。


審 査 評  21世紀を迎えて最初のこのコンクールにも、たくさんのすばらしい作品が寄せられました。ありがとうございます。
 今回は、身近かな題材をテーマにした作品に秀作が多くありました。ふだんのなんでもない自分の生活の中からテーマを見出すことは、アマチュア作品の本質なので大変良いことだと思います。
 ただ、他人に見てもらうための語り口、話の作り方が大事になってきます。興味、共感、好奇心などを持ってもらうための工夫、ふつうの話をいい話にして感動をさそう話術です。他人の話や知識の請売りでは感動を呼べません。作者自身の心のこもった話を語ってほしいのです。
 撮影の技術だけでは決して良い作品は作れません。撮影や編集の技術というのは、自分のメッセージをより効果的に伝えるための手法にすぎないのです。
 さて、今回特賞の「三百歳ご臨終」は、一昨年のこのコンクールで優賞の「おれは三百歳」の続編として作られたもので、擬人化された老松の最期を看取るという話で、話術、技術ともに優れた作品になっています。
 優賞の「水郷ちょっぴり感傷紀行」と「朝日に映えるマッターホルン」は、ベテランと新人の対照的な2作品ですが、前者はキッチリと作りあげられた名人芸としての魅力。後者は気負いのない素直なナレーションとさりげない表現の語りかけが心地よい作品でした。
 奨励賞の「56年目の証言」「追憶」「おふくろと畑にて」も各々に自分自身や肉親とのかかわりを一生懸命に語り、伝えようとしている心情にうたれるものがありました。
 茨城新聞社賞の「新治村・小町伝説の里」は、地域の記録映像として貴重な作品です。
 今回入賞にいたらなかった作品の中には、せっかくすばらしい題材をとりあげながら、それをただの記録にしかとどめなかった作品が多くあったことが残念です。
 映像作品は、題材にされる人や物事と作者と観る人の三者の気持ちが共鳴できたときにすばらしいと評価されるのではないでしょうか。  (審査員:豊田正夫、沢田忠、久保田節男)

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update:2001.11.4 by m.toyoda