'99茨城県芸術祭映像コンクール
入賞作品紹介と審査評

特 賞 「近くの遠い島を見た」 日立市・中島 朗さん
● 観光気分で、納沙布岬に立った私達だったが、北方四島問題の現実に直面して、目を醒まされた。双眼鏡でやっと貝殻島を見つけたが、そこは「近くて遠い島」だった。それにしてもカモメ達は自由に大空を飛び回っている。彼等の自由さと国際関係にまつわる人間の不自由さは対照的に感じられた。四島返還への期待とともに、カモメ達の自由さに羨望を感じる心境を表した。

優 賞 「おれは三百歳」
       日立市・滝 孝光さん
優 賞 「やったぜ乗鞍岳」
       十王町・友部丈夫さん
● 実家の門口に樹齢300年と言われる黒松が寿命がつき、余命いくばくもない状態なので、記録を残すと同時に公害について社会にアピールしたかった。 ● 乗鞍岳といえば3000m級の山、そこに身障者が登山するというので、ビデオ撮影の許可をいただき、一緒に登山した記録です。

奨励賞「つくしんぼ保育園の一日」
       日立市・小池金治さん
奨励賞「大内宿『心のふるさと』探訪記」
       日立市・内山久弥さん
● 諏訪山の斜面につくしんぼ保育園(社会福祉法人)が建っている。今の保育園ってどんなものか興味を持った。生き生きと団体生活を送り、下の子の面倒をよく見る年長児など、いまどき珍しい情景に感心した。 ● 昭和50年、国内に数少なくなった宿場町に「重要伝統的建造物郡保存地区」の制度が定められ、大内宿が昭和56年に国の指定になった。歴史の原点を訪ねてみました。
奨励賞「徳川慶喜展示館閉門式」
       水戸市・松本勝世さん
奨励賞 「我がさけび」
       日立市・及川春治さん
● 3月31日、展示館の閉門式に出席したときに、その模様を撮影したものです。 ● 8月15日終戦記念日を前にして、直接戦争体験者に会い、当時の様子や今後私たちに何を望むかをさぐる作品。

茨城新聞社賞 「会えてよかったね」
          日立市・大森多嘉子さん
● 年老いた母親と栃木県に住んでいる母の古い友達、互いに体力の衰えとともに出掛けることができなくなってしまった。電話で会いたいと言っている姿を見て、ビデオで会わせてあげた。


審 査 評
 前回に比べ応募数が少なかったのが残念です。しかし、内容的には、かなり豊かなものがありました。
 今回の作品の優劣の分かれ目は、そのまとめ方、構成の工夫にあったと思います。この頃は、映像情報をそのまま伝えればよいという風潮がありますが、作品としてメッセージ性も持たせなければ意味がありません。
 何を誰に伝えたいのか、そのためには、どういう語りかけをすればよいのか。見てくれている相手を想定して、その心に入り込んでいくような工夫も必要です。
 いまさら起承転結などという基本的なことはいいたくありませんが、映像を自分の言葉として、有効に的確に使いこなし、魅力的な表現を心がけてほしいものです。
 特賞の「近くの遠い島を見た」、茨城新聞社賞の「会えてよかったね」、優賞の「おれは三百歳」、奨励賞の「つくしんぼ保育園の一日」などは、そういう意味で魅力のある面白い作品でした。優賞の「やったぜ乗鞍岳」、奨励賞の「我がさけび」は、せっかくのいい題材を得ながら、作者の心情が伝わりにくかったのがちょっと残念でした。
 従来ビデオは、画質の面でプロユースとホームユースに大きな差があり、これが表現の大きなネックになっていましたが、デジタル技術の進歩で、その差が小さくなってきました。その美しい映像情報を、先にも書いたように、ただ情報として提供するのではなく、調理人としての腕を十分に振るって、おいしい味わいのある料理として、楽しませてください。

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update:1999.11.16 by m.toyoda