安達太良山は標高僅か1700mであるが、冬期の気象条件は厳しい。 晴れ渡ることは少なく、おまけに頂上付近は常に強風
にさらされるため毎年遭難事故が発生する。
今日は比較的安定した天気だろうと予想して出掛けたが、今回も山は笑顔を見せなかった。
9:00 ゴンドラ降り場。
早速シールを付けて歩き始める。 ルートには赤布がこまめに付けられているので迷うことはない。
数日前の雨で堅くなった雪の上に新雪が少し載って、この付近の歩行は非常に楽である。
予報では余り悪くない天気の筈だったが、安達太良山の山頂方面は曇っている。 ここの気象はいつも厳しい。
先行の登山者を抜いて先に行く。 暫く行くと早くも、くろがね小屋からの登山者が10名ほど下山して来た。 上の天気は厳しいよ、と云っていた。
1500mからは完全にガスの中。 視界は2〜30m程度しかない。 目印の旗が立てられた無木立のガリガリの斜面を最短距離で登る。
1600mからはスキーアイゼンも殆ど刺さらないガチガチのアイスバーンで、新雪は全く付いていない。
やがて方向案内標識が現れて、そこは頂上の直下だった。
10:00 安達太良山。
”安達太良山の頂上直下。”
強風で視界もないので頂上はパス。 岩陰で風を避けて休憩。
この間にもくろがね小屋からの登山者が続々と上がってきた。昨夜は30名くらいが宿泊したという。
天候が回復する気配はないので、長居は無用、先に進む。
牛の背の稜線は強風が吹き付け、シュカブラを通り越した氷の彫刻のような凹凸で覆われて、かつ視界も悪いので、歩行が大変難しい。
長時間強風に晒されると体力を消耗するので、10分毎に岩陰を見つけ、風を避けながら
GPSとコンパスを頼りに矢筈森の大岩を目指す。
峰の辻への分岐から右に折れて矢筈森の下へ回りこみ、大岩の下に辿りつきヤレヤレ。
11:10 矢筈森下。
大岩の陰は風が当たらないのでまるで別天地のよう。 相変わらず視界不良なので、ここで大休憩をする。
40分ほど過ぎたら
少しづつ周りが見えてきた。

”矢筈森の直下から見上げる。”

”矢筈森の直下から振子沢を見下ろす。 向かいは篭山。”
何とか滑れるような視界になってきたので、シールを外して滑走の開始。
ここまでのルートは殆ど新雪が積もっていなかったが振子沢だけは全く別格。 ボール状に吹き溜まった新雪が素晴らしい。

”振子沢から矢筈森を見上げる。 素晴らしい斜面に感激。”
手つかずの斜面を一人歓声を上げながらどんどん降りる。

”振子沢の中間から下部を見下ろす。 吸い込まれるような斜面。”
沢が段々狭くなって、滑りも終盤に近づく。標高差300mは瞬く間に終わる。

”谷の終盤部”
くろがね小屋を左に見ながら、登山道を勢至平まで推進滑走。
しっかりしたトレースがあるので楽々に進む。
勢至平へ出てちょっと休憩。 昨年と同様にこの時間になったら完全に晴れてきた。
12:20 勢至平。
振り返ると安達太良山の乳首から、篭山、矢筈森まできれいに見渡せる。

”勢至平から振り返る” 右に滑り降りた振子沢が見える。
休憩の後は、スキー場まで下るのみ。
登山道のトレースを踏んで滑る。 雪質が良いので緩斜面でも快調に滑る。
烏川に掛かる橋を渡り、ちょっと登り返して、最後はスキー場を滑って出発地に戻った。
12:50 駐車場
振子沢の最高の雪質に大満足。 頂上付近の厳しい気象条件を十分に補った一日だった。