[概要]
今年は昨年に比べて雪が多そうである。 飯豊山の本社(おむろ)ノ沢を目指すには今が適期と判断し出掛けた。
土、日だが、この時期に、この山域へ入る人は少なく、2日間で一人と出会ったのみの静かな山行だった。
毎年残雪期に地蔵岳から飯豊山を眺めて、正面の本社ノ沢をいつか滑りたいと思っていたが、やっと実現した。
[メンバー] :単独
[山域&山名]:飯豊連峰(福島、山形、新潟)、飯豊本山(2105m)(登山口からの累積標高差2300m)(延べ距離19km)
[天候 ] :晴れ
[行程]
(5/9):大日杉登山口(610m)6:30 - 10:30地蔵岳(1539m)11:00- 11:40大又沢 - 14:00無名尾根 - 15:40飯豊本山小屋(泊)
(5/10): 飯豊本山小屋7:40 - 8:10大又沢 - 9:50地蔵岳10:20 -12:40大日杉登山口
一日目:大日杉登山口〜飯豊本山
6:30 大日杉登山口
今日は土曜日だが
駐車スペースには車は見当たらない。
大日杉の小屋の周りはまだ雪が残っている。
登山届用のハウスはまだ設置されていないので、大日杉の小屋の入口ポストへ
登山届を提出して出発。
登山道は最初から雪で覆われて、道形は解らない。
GPSに入れたルートを頼りに進むが、急斜面に差し掛かった辺りで行き詰る。
残雪が切れた急斜面でヤブに行手を遮られてしまった。
国土地理院の地図の登山道は現状の登山道より東側へ100mほどずれているのである。 ここで気が付いても後の祭り。
やむなくスキーを担いで急斜面のヤブを強行突破。 思わぬ時間のロスと、ここでスタミナを消耗。 これが後になってボデーブローのように効いてくる。
稜線に上がりホッと一息。 長之助清水付近から雪が繋がったので、シール登高に切り替える。 登りは雪を拾いながら行けるが、
この辺りの下りの滑りは期待ができない。
”1250mで左側三国岳方面の視界が開ける。”
ダマシ地蔵まで来ると前方の地蔵岳、その向こうの飯豊山が見え始める。 好天で気温が高く、汗だくである。 アンダーウェアのみになる。

”ダマシ地蔵から行手の地蔵岳と、その向こうの飯豊山。”
最後の急登をひと頑張りすると地蔵岳である。
10:30 地蔵岳(1539m)
ここまでにかなりの時間を費やしてしまった。 8ケ月振りに重いザックを担いだのだから仕方がないか。
早速飯豊山方面の雪の状態を観察する。 昨年の同じ時期よりかなり良さそうだ。 予定通り本社(おむろ)ノ沢を目指すことにする。

”地蔵岳から見た飯豊山と本社ノ沢(頂上からすぐ右に落ちてくる沢)。”

”地蔵岳から南へ延びる稜線と、 種蒔山、三国岳。”
休憩のあと、シールを外して大又沢までの滑りのスタート。 雪面は適当に緩んでいて滑り易い。
地蔵岳直下の沢の入り口を通り過ぎてしまったので、 ちょっと南側に下った所で沢に入る。
デブリと汚れが目立つ沢だが、滑りは楽しい。 大又沢まで降りて、更に少し下ると本社ノ沢の入り口へ出た。 遅い時期だと水流が出るところだが
まだ完全に雪で埋まっている。

”大又沢と本社ノ沢の交点。”
再度シールを付けて、長い登りのスタート。 最初はなだらかな歩きやすい沢が続く。
崩落はほぼ落ち着いているが、回りに注意を払いながらの登りが続く。 時々ガラガラという小さな崩落の音が聞こえる。

”1250mで右の尾根に突き上げる沢に入る。”
名も無い支沢とはいえ幅、傾斜ともに門内沢を彷彿とさせるような立派な沢である。

”1500m付近から沢の下方を見る。”
沢は次第に急勾配になり、シール登高が辛くなるが、スキーを外すのも厄介な急斜面の為、我慢して大きくジグを切りながら其のまま進む。

”支沢の最上部。 高度感が凄い。”
最後は少し右に巻きながら1650m地点で尾根に到達した。 もう少し右の尾根の低い部分を目指した方が楽だったようだ。 (反省)

”支沢から尾根に登ったところ。 地蔵岳が目の前に。”
ここまで来ればもう先は近い、と思うのは早過ぎる。 頂上はズーッと先である。
勾配はなだらかになったが、段々疲れが出てきて、休憩の回数が多くなる。

”本社ノ沢の上部を眺める。 素晴らしい斜面が続く。”
日が西に傾くに従って、風も出て、雪面は少しづつクラストしてきた。氷の薄い膜が強風で飛んで顔に当たる。 飯豊山はいつも強風に晒されるところである。
最後の50mはかなりの強風を正面から受け、耐風姿勢を取りながらの前進で小屋に到着。
15:40 飯豊本山小屋
一階の入口は雪で覆われているので、2階の冬季入り口から小屋の中へ入る。
当然のことながら、小屋には誰も見当たらず、今晩は私が占有することになる。
荷物を降ろしたら、動くのがいやになってしまった。
シュラフに潜って暫く昼寝とする。
夕方になり、晩飯の準備。 今晩はちょっとデラックスにウナギ丼とハンバークである。
定番の焼酎の雪割りを飲みながら静かな小屋泊を楽しむ。
二日目:飯豊本山〜大日杉登山口
夜半に小屋を揺るがすような風の音で何度も目が覚めた。
いつもの事ながら、この小屋は物凄い音がする。
朝食後外へ出てみると、
小屋を叩く音ほどではないが、かなりの強風である。 本山方面は視界ゼロなので、飯豊山の山頂はパス。
7:40 飯豊本山小屋出発
もう少し雪面の緩むのを待ちたかったが、ガスと風がおさまる気配がないので、下山とする。
スキー靴の金具を締めて、いよいよ滑降のスタート。 初めてのルートはいつも緊張し胸がわくわくする。この緊張感がたまらない。
気温が低く、雪面がクラストしているので、最初は慎重な滑り。 左側の方が少し日が当っているので、そちらに移動。 少し下ると
雪面は滑りにはまずまずの状態となる。
”ガスが切れて地蔵岳が正面に。頂上からすぐ下に落ちる沢を登り返した。”
改めて、気合いを入れて滑降。 誰もいないが一人歓声を上げながら急斜面を滑る。
この瞬間に、厳しかった登りの苦労も忘れる。

”急斜面を滑る。 でっかい斜面なので、急だが怖さは感じない。”

”二俣合流の、のど部。 雪面が少し荒れてデブリが半分塞いでいる。”
のど部を過ぎると傾斜は緩くなり、まったり気分の滑りを楽しむ。

”本社ノ沢の下部。”
昨日登った支沢の付け根付近で、単独の山スキーヤーとスライド。 今回唯一出会った人である。 話をお聞きすると、
時々山行記録を拝見させて戴いている
「東北アルパインスキー日誌」
のHPを主宰する、坂野さんである。
本日日帰りでこのコースを踏破するというから、全くの驚きである。
大又沢まで下降して、再び地蔵岳まで400mの登り返しになる。
取り付きは昨日下った地点だが、途中から地蔵岳を直接突きあげるルートをとった。急斜面だが雪面の状態は良くシールで
登ることができる。

”地蔵岳への沢。 狭く、かなりの急斜面である。”
やがてなだらかになり、地蔵岳に到着。
10:30 地蔵岳(1539m)

”飯豊山と本社ノ沢の見納め。 今日も天気は良い。”
ゆっくり休憩のあと、最後の滑りに入る。 ダマシ地蔵を直下に見ながらの滑り。

”地蔵岳からダマシ地蔵を見下ろす。”
雪が途切れ出した、1200m付近からはスキーを担いでの下りとなる。
雪道の下りはよいが、完全に雪が切れて、兼用靴で木の根を踏みながらの下りは大変疲れる。 苦行僧よろしく、一歩一歩降りていく。

”ザンゲ坂。”
まだ雪の残るザンゲ坂を慎重に降りて、最後のひと頑張りで大日杉に到着。
12:30 大日杉登山口
下山届を提出し、目の前の沢で顔を洗ってさっぱりした後、帰途に着いた。
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