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<bgsound src="ich.mid" loop=-1> 北アルプス  弓折岳
2007年4月28日(土)


”熊の踊り場付近から秩父沢を見下ろす”

[概要]
双六岳周辺のコースを狙って、新穂高温泉から入ったが季節外れの寒波に見舞われ、 弓折岳手前(2550m地点)で撤退。
残念ながら目的地まで行くことは出来なかった。

[メンバー]  :単独
[山域&山名]:北アルプス(岐阜)、弓折岳手前(2550m)
                 
[天候 ]      :小雨のち吹雪
[行程 ]      :新穂高温泉(1090m)4:50 - 6:40ワサビ平 - 10:20熊の踊り場 - 12:30弓折岳手前(2550m)12:50 - 17:00登山口

予約済みの双六小屋事務所から前日に電話があり、26日に小屋開けの為に入山したスタッフが弓折岳の稜線付近から滑落し亡くなった。 これにより、小屋の食事はまともなものは準備できないが。とのこと。
出だしからショックな話にモチベーションは上がらない。

前日まではそれ程悪くなかった天気予報が現地に着いたら、余り良くない。時々パラパラと雨が落ちる。
天候が悪化する前になるべく前へ進もうとの思いで早めに出発。


4:50   新穂高温泉の無料駐車場を出発。

途中の登山指導センターで入山届を提出。 貼り紙で双六小屋は通常営業できないとある。

スキーをザックに付け、兼用靴を履いて雪のない林道を進む。食糧が入ったザックとスキーを合わせると17kgの重さ。 久し振りの重い荷物にペースが上がらない。

1kmほど進んだ地点からほぼ雪がつながりだしたのでシール歩行に切り替える。 大分楽である。
わさび平小屋あたりから気になっていた雷が鳴り出し、雨も本格的に降り出した。








 ”わさび平小屋付近のブナ林”


林道を過ぎるといよいよ、このコース名物の大デブリ地帯。秩父沢、抜戸沢からの底雪崩の置き土産である。









 ”大デブリ地帯に突入”


このデブリは約1km近く続く。ひどい所はスキーを担がないと進めない。









 ”比較的なだらかなデブリの上を行くテレマーカー”


秩父沢を渡りきる辺りからデブリは無くなり、いよいよ本格的なシール登行を開始。









 ”秩父沢の終点近く”


勾配が少し出てきたあたりから、空が明るくなり、先に希望が見える感じ。









 ”秩父小沢の入り口”先方に単独の登山者が見える










 ”時々暗くなるが、先の方は明るい。”


1900mに来ると勾配は段々きつくなる。シールの食い付きが良いので、直登で進める。ツボ足の先行登山者に追いつき。ここから先頭に立つ。









 ”左手に雪庇の張り出した大ノマ乗越が見える”










 ”なだらかな熊の踊り場はもうすぐ”



熊の踊り場で一息つく。

10:20   熊の踊り場(2100m付近)


既に5時間半を費やした。なかなか厳しいコースである。下では雨であったが、この辺りでは雪である。

ここから進路をやや西寄りに取り、弓折岳を目指す。
2300m辺りに来たら、雪が強く降ってきた。雪は小さな玉状の形をしてボツボツと顔 にブチ当たり大変痛い。








 ”丸い粒の雪が降る”



2400mからは積もった新雪が滑って、シールが効かなくなったので。スキーを担ぎ、 アイゼンを着け、ピッケルを抜き、キックステップしながらのラッセルとなる。

先程まで鳴っていた雷は少し遠くなったが、降る雪がひどく、視界が極端に悪くなってきた。 GPSがあるので進む方向は何とかなる。後続の登山者が私のトレースをついてきている。

2550m地点の岩陰で体勢を整え進退を見極める。

12:30   弓折岳手前(2550m地点)


2500mを越えてからの風は2000m付近と比較にならないくらい強い。 風雪が激しくなり、ズボンもヤッケもバリバリに凍り着いている。気温がかなり低く、雪面は完全にクラスト状態。

二日前に双六小屋のスタッフが吹雪の中、滑落死亡したというのは、多分この辺りであろうか。 合掌。

吹雪は怖い。体温を容赦なく奪っていく。寒い。時折吹く突風のような強い風に耐風姿勢で構える。

稜線まであと40m。無理すれば行けそうにも思えるが、何が起こるか 解らない。
この天候で先に進むのは危険。 退却と決定。
単独行の登山者は行きたそうであったが、私が撤退と決めた ことで、同調した。


さて進むのも困難だが、降りるのも困難。傾斜は30度以上。おまけに視界がゼロのホワイトアウト状態。
スキーを着けて、GPSを見ながら斜滑降で少しづつ高度を下げる。

何も見えない状態で滑るのはバランス感覚が全く効かない。
止まっていても、動いているように錯覚し、転んでしまう。

2200mまで降りたらやっと10m先がかすかに見えるようになり、ひと安心。
短時間にかなりの新雪(10cm位)が積もり、滑りは快適だが、視界が悪いので少しづつしか滑れない。
天候が良かったら、このコースも素晴らしい斜面だろう。

秩父沢まできたら、雨を含んだ重い雪質に変わる。それでも朝登った時はデブリで歩き難かったのが、デブリの上に新雪が載り、 何とか滑ることが出来る。

これから登る登山者数名と出会う。この人たちはテントを持参し行けるところまで行ってテント設営するようだ。
デブリを越え、林道に出てほっと一息。ここから勾配のない林道をスキーで滑って雪が切れた地点でスキーは終了。

右を見上げると雪崩で有名な穴毛谷が間近に。









 ”林道から穴毛谷を見上げる”


登山指導センターで下山届を提出する。

残念ながら今回は予定未完のまま終了。 こういう日もある。12時間に及ぶ行動で疲れたが、大変良い経験になった。
課題は来年に持ち越し。

17:00  登山口




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