山歩きのページ

<bgsound src="scar.mid" loop=-1> 北アルプス 
薬師岳、黒部五郎岳、三俣蓮華岳、水晶岳、赤牛岳
2003年7月28日(月)〜8月2日(土)


水晶岳からの”黒部五郎岳と雲の平”


[概要]
室堂から入り、五色ケ原、薬師岳、黒部五郎岳、三俣蓮華岳、水晶岳、赤牛岳を経て黒部ダムまでの 黒部川源流を巡るゴールデンコースである。今までで一番重い、25kgの荷物を担いで歩いた、山中5泊(テント泊)の縦走コースは、 厳しかったが、それに見合う素晴らしい感動が得られた。

[メンバー]  :単独
[山域&山名]:
北アルプス(富山、長野、岐阜):薬師岳(2926m)、黒部五郎岳(2840m)、三俣蓮華岳(2841m)、水晶岳(2986m)、赤牛岳(2864m)
[天候 ]      :三日目は雨、以外は晴れ&曇り
[行程]
(7/28):室堂(2430m)9:30 - 11:00竜王岳 - 13:00獅子岳 - 13:50ザラ峠 -14:50五色ケ原キャンプ場(テント泊)
(7/29): 五色ケ原キャンプ場5:00 - 7:15越中沢岳7:30 - 10:30スゴ乗越小屋10:45 - 14:00北薬師岳- 15:00薬師岳- 17:20薬師峠キャンプ場(テント泊)
(7/30): 薬師峠キャンプ場7:00 - 9:00北ノ俣岳 - 12:00黒部五郎岳 - 14:30黒部五郎小舎キャンプ場(テント泊)
(7/31): 黒部五郎小舎キャンプ場6:30 - 8:30三俣蓮華岳9:30 - 10:30三俣山荘キャンプ場(テント泊)
(8/1): 三俣山荘キャンプ場4:50 - 8:00水晶岳8:20 - 12:00赤牛岳12:10 - 17:20奥黒部ヒュッテキャンプ場(テント泊)
(8/2): 奥黒部ヒュッテキャンプ場4:30 - 6:15平の渡し6:40 - 7:00平の小屋 - 12:00黒四ダム
一日目:室堂〜五色ケ原キャンプ場
扇沢を朝一番のトロリーバスに乗ってアルペンルートで室堂に9:20着。

9:30  室堂を出発する。
室堂の周りは観光客で一杯だ。ザックを担いだ登山者もチラホラ。
重い荷物を腰を入れて担ぐ。覚悟はしていたが25kgの荷物はやはり重い。このコースを歩き通せるか、ちょっと不安がよぎるが、 まずはゆっくりと歩き始める。石畳を外れて登山道に入るとまもなく雪渓が始まる。浄土山の展望台までは軽装の人も数人 歩いていた。 雪渓をトラバース後、浄土山への登りにかかる。いきなり岩のある厳しい登りである。これを登りきると、なだらかになり 左手に雄山方面が眺められる。一ノ越からの登山者が上がって来ている。
竜王岳の裾を巻きながら鬼岳へ向かう。この辺はまだ雪渓が残っている。
鬼岳から獅子岳へ向かう途中は黒部側へ落ち込む、急斜面の 雪渓があるが、トレースがしっかりしているので問題なく通過できる。
獅子岳を過ぎると、戦国時代の歴史の地、ザラ峠まで一気に下る。
ここから今日最後の登りをクリアすると、なだらかな五色ケ原に出た。五色ケ原の入り口で登山道に雷鳥が歩いていた。ちょっと見つけずらい保護色に変わって いる。









”登山道を横切る雷鳥”
 



五色ケ原山荘まで行ってテントの申し込みをし、ついでにビールを購入、少し戻る感じでキャンプ場へ着いた。

14:50 五色ケ原キャンプ場

五色ケ原キャンプ場の周りはまだ豊富な残雪があり、雪が解けた所から、いろいろな花が咲き始めている、 まさにオアシスといったところである。
既に数張のテントが設置されて思い思いに時間を過ごしている。大部分が室堂からの人たちで、 明日はスゴ小屋までと云っていた。

二日目:五色ケ原キャンプ場〜薬師峠キャンプ場
5:00 五色ケ原キャンプ場出発
明日の天気は余りよくないという予報。今日は出来るだけ先に進めるよう早めの出発とした。 登山道は五色ケ原山荘の脇を通って進む。鳶山を過ぎたあたりから振り返ると、離れていく五色ケ原と後方の立山が望まれる。 アップダウンを数回繰り返して、広い尾根を進むと越中沢岳(2591m)に着く。








”越中沢岳から針ノ木岳方面”
 



ここで小休止。東方面に黒部湖がかすかに見え、その後ろに針ノ木岳や裏銀座の山々が連なっている。
ここからは下り。スゴ乗越まで楽に下りられると思ったら、ちょっと予想が外れた。急な坂と、岩のある小さなアップダウンが いくつもあって、なかなか下って行かない、タフなところだ。
やっと先が見通せる、スゴの頭に出た。スゴ乗越の先に スゴ乗越小屋とその向こうに雲がかかった薬師岳の前衛が見える。









”スゴの頭からスゴ乗越小屋と薬師岳の前衛”
 



スゴ乗越まで急坂を下り、樹林帯の中を登っていくと、スゴ乗越小屋へ出た。

スゴ乗越小屋 10:30

この時間、小屋には客はいなく、がらりとしている。小屋の前のベンチでラーメンを作り早い昼飯とした。 ここから次のキャンプ地、薬師峠まで、約6時間強はかかる。ちょっときついが、先に進むことにした。

いよいよ長い薬師越えである。気を引き締めてスタート。シラビソの樹林帯を登って行くと見通しの良い間山(2585m)へ出た。
ここで薬師岳からの登山者が一人コーヒーを沸かしていた。今日で一週間目だが、ずっと雨で昨日から少しよくなったとのこと。




    ”間山から北薬師岳の前衛”なだらかに見えるが、なかなか疲れる登りである。

ここから比較的歩き易い道になり、高度を上げていく。しかし、薬師岳はでかい。なかなか北薬師岳に着かない。 ゴロゴロの岩を越してやっと、北薬師岳に着いた。左に金作谷の大カールが落ち込んでいる。




    ”北薬師岳からの薬師岳大カール”

カールの向こう側に薬師岳が見える。やせ尾根を登ると祠のある薬師岳の頂上に着いた。

15:00 薬師岳









”薬師岳頂上”
 



頂上には太郎平からの登山者が数人休んでいた。 南方を見るとどんよりとした雲の下に明日歩く、黒部五郎岳と3日後に歩く赤牛岳、水晶岳が遠望出来た。









”薬師岳から黒部五郎岳を遠望”
 






    ”薬師岳から赤牛岳、水晶岳方面を遠望”

下りに入る。薬師岳山荘まではクッションの効く砂礫の道である。さらに進むと整備された薬師平へ出た。ここまでは 歩き易かったが、ここからが、沢沿いの悪路を200mくらい下る。疲れた身体にはこれが非常に長く感じた。 やがて下りたコルがテント場の薬師峠である。

17:20 薬師峠キャンプ場

到着が遅いので余りいい場所は残っていない。端のほうにスペースを見つけてテントを張った。水場もちゃんとできている テント場である。

三日目:薬師峠キャンプ場〜黒部五郎小舎キャンプ場
7:00 薬師峠キャンプ場

夜中に降り出した雨は朝になっても依然として降っている。今日はここへ停滞も考えて、ゆっくりと起床。
周りをみると、続々と出発して、残りのテントは少なくなっている。
モチベーションは今ひとつだが、意を決して出発することにした。
雨具、スパッツを着けて出発。太郎平小屋を過ぎると太郎山までは緩やかな登りである。雨はそれ程ひどくないが、視界は悪い。
北ノ俣岳の手前に来ると雨が次第に強くなってきた。雨は容赦なく顔をたたく。眼鏡が濡れて非常に見通しが悪い。
この辺はハクサンイチゲの大群落だ。晴れていたらさぞかしとの思いで歩いていく。









”北ノ俣岳手前のハクサンイチゲ大群落”
 



スパッツを着けているが、靴がゴアテックスでないので、湿ってきた。雨の中をただ黙々と歩く。 赤木岳で今日初めての登山者と出会う。黒部五郎小舎から太郎平へ向かう人だ。
黒部五郎岳の登りにかかる辺りで雨は小降りになってきた。

12:00 黒部五郎岳

黒部五郎岳へ着いたが、相変わらず視界は悪い。








”黒部五郎岳頂上”
 



ガイドブックによると、視界が悪い場合はカールでなく、稜線歩きがよいと書いてあったので、それを信じ稜線を下ることにしたが、これが 問題であった。アップダウンのある岩場をペンキ印を頼りに下りるのであるが、これがしんどい。なかなか高度が下がって行かない。 その内に視界が良くなって、上からカールの中を歩いている人が見えるようになると、下の人のほうが遥かに進みが速い。
少し晴れ間が出て、雲の平方面が明るくなってきた。
やっと傾斜がゆるやかになり雪渓を何度か渡って、小舎の裏手のテント場に出た。

14:30 黒部五郎小舎キャンプ場

テント場は小舎から離れたところにある。小舎でテント受付とビール購入をする。 余りいい場所ではないが、場所を見つけて設営する。晴天ではないので、乾きは余り期待できないが、濡れたものを回りに干し、 のんびりと過ごす。
四日目:黒部五郎小舎キャンプ場〜三俣山荘キャンプ場
6:30  黒部五郎小舎キャンプ場

朝起きたら、晴天である。どうやらやっと夏らしい天気になった。 今日は楽な行程なのでゆっくりと出発をする。 黒部五郎小舎からいきなり急登は始まるが、晴天で眺望を楽しみながらの歩きで、疲れは余り感じない。
2661mのピークから振り返ると黒部五郎岳が大きなカールをこちらに向け迫って見える。









”三俣蓮華岳手前から黒部五郎岳”
 



分岐を右へ曲がり、三俣蓮華岳への急登に入る。やがて緩やかになり、三俣蓮華岳へ出る。長野、岐阜、富山の三県の境の標識 が建っている。

8:30 三俣蓮華岳









”三俣蓮華岳頂上”
 



時間が十分あるので、ここで景色を楽しみながらのんびり過ごす。双六小屋からの登山者が数人ここまで足を延ばしていた。 ゆっくり休んだ後、下りに入る。双六岳方面がなだらかに見渡せ、カール状斜面のお花畑が素晴らしい。




    ”三俣のカールと丸山岳、左は双六岳”

行手には鷲羽岳が羽根を広げたような形で迫って見える。下り終わるとハイ松の向こうは三俣山荘である。

10:30 三俣山荘キャンプ場

テントの申し込みをして離れたテント場に設営。周りに昨日の雨で濡れたものを干す。
その後、三俣山荘へ行って二階のレストランで生ビールとカツ丼で早い昼飯にする。久し振りのまともな食事である。 それにしても生ビールまで飲めるとは。ちょっとやりすぎの感がしないでもない。
テントへ戻って脇の木陰にエアーマットを敷き、昼寝をする。今日は休養日である。


五日目:三俣山荘キャンプ場〜奥黒部ヒュッテキャンプ場
4:50 三俣山荘キャンプ場

今日はこのコース最大の山場である。ガイドマップによれば、奥黒部ヒュッテまで11時間弱かかる。荷物が重いのでそれ以上 を覚悟しなければいけない。
夜明けと同時に出発。明るみかけた南東の空に槍ケ岳が天を指している。








”朝の槍ケ岳”
 



三俣山荘から鷲羽岳へは登らずに黒部源流に下りて岩苔乗越へ向かう。源流から振り返ると三俣蓮華岳に陽が射し始めた。









”黒部源流と三俣蓮華岳”
 



岩苔乗越まで来ると、左手に薬師岳、右手にこれから向かう水晶岳が広がる。ワリモ岳の分岐を過ぎると水晶小屋まではなだらかな 道が続く。登山道脇にはさまざまな高山植物が咲いて、目を楽しませてくれる。水晶小屋を過ぎてしばらくは歩き易い稜線漫歩である。 目の前に荒々しい水晶岳が見えてきた。









”水晶岳”
 



やがて岩の厳しい登りをいくつかクリアすると水晶岳だ。

8:00 水晶岳
ここからは360度のパノラマが広がる。水晶岳の頂上は狭く、数人分のスペースしかない。2人の登山者が休んでいた。
北アルプスの最奥部の眺望は、残雪と緑と空の青さとが調和して絵を見ているようだ。



    ”水晶岳から三俣蓮華岳、祖父岳、黒部五郎岳”

この景色をいつまでも見ていたいが、そうもいかないので、先を急ぐ。これから先を歩く人は見当たらない。
温泉沢の頭までは、岩の道を下っていく。左手に3日前に越えた薬師岳が大きく構えている。でかい山だ。



    ”温泉沢の頭付近から薬師岳遠望”

この辺から山肌は赤茶けた土に変わる。比較的なだらかなアップダウンを繰り返し赤牛岳に到着。

12:00 赤牛岳








”赤牛岳頂上”
 



北アルプスの最深部に来たという感じがする。振り返ると今日歩いてきた山々が遠くまで連なっている。
ここからが今日の正念場、読売新道の長い下りが始まる(赤牛岳から標高差1360m)。最初はガレた急坂だ。足元に注意して下る。 その内に大きな岩が出現する。かすかに残るマークを頼りに岩を登り降りしてやがて、樹林帯に入る。
これが一番のクセモノであった。登山道とはいうものの、大きな木の根を登り、ぬかるんだ泥道を越え、急な 斜面の鎖場を降り、まるでアスレチックトレーニングまがいが延々と続く。読売新道というイメージとはかけ離れたルートだ。
これに相当する厳しい下りは、飯豊山のダイクラ尾根が思い浮かぶ。

いい加減くたびれた頃、やっとまともな林の中の登山道になった。右と左から川の音が聞こえ出し、その合流点にある 奥黒部ヒュッテキャンプ場に出て、長い一日が終わった。

17:20 奥黒部ヒュッテキャンプ場
奥黒部ヒュッテから少し離れた所に砂地のテント場がある。ここは黒部側の上流の沢登りの拠点で、それらしきいくつかグループ がテントを張っていた。
最後のテント場なので残りの食糧を出して夕食とする。テントで横になったらすぐに寝てしまった。


六日目:奥黒部ヒュッテキャンプ場〜黒部ダム
4:30 奥黒部ヒュッテキャンプ場出発
平の渡しの時間に合わせて、暗いうちに出ようと思ったが、どうやらキャップライトをどこかに忘れてきた。 周りが少し見えるようになったので出発。
黒部川沿いの平坦な道と予想したが、予想と大外れ。入り組んだ沢を高巻きし、ハシゴを登り、大変な道である。 6:20に乗り遅れると、10:20まで船はない。焦りながら先を急ぎ5分前に渡し場に着いた。

6:15 平の渡し

時間が過ぎても船が来ないので、既に行ってしまったのかと不安になる。 20分遅れてやっと船が来たので胸をなでおろす。乗客は私一人。乗船簿に名前を記入。渡し賃は無料。









”やっと来た渡し船”
 



平の小屋からは再び、黒部湖沿いのダムまでの道である。やはり大きく入り組んだ沢を回り、ダムの管理者が毎年整備していると思われる ハシゴの登り降りが再三出てくる。中には高さ50mくらいのものもあり、スリル満点だ。








”50mくらいのハシゴ”
 



御山谷の大きな入り江を過ぎてロッジくろよんに到着。ここからは道も広く、ハイキング客もちらほら見える。 やがて、かんぱ谷橋を渡りトンネルをくぐって観光客が溢れる黒四ダムに到着し、6日間の北アルプス縦走が終わった。

12:00 黒四ダム

トロリーバスで扇沢に下り、帰りに大町温泉の薬師の湯で6日間の疲れをとって、帰途に着いた。



    出合った花々


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