山歩きのページ

<bgsound src="scar.mid" loop=-1> 後立山連峰 
白馬岳、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ケ岳、針ノ木岳
2004年7月20日(火)〜7月24日(土)


天狗の頭からの”不帰嶮、唐松、五竜、鹿島槍、槍穂高”


[概要]
梅雨明けとにらめっこしながら、 後立山連峰の白馬岳から入った。初日は北陸側の梅雨の最後に引っ掛かったようで 雨と強風に見舞われた。2日目からは梅雨明け本番の好天になり、快調に縦走が出来た。  このコースは約40年前に逆方向から歩いているが、当時の記憶は薄れているので、 新鮮な目で歩くことが出来た。 不帰嶮、八峰キレットなどの岩場を考慮して、ザック重量を限界まで軽量化。 昨年より7kg軽い18kgとした結果、軽くて良好。  食糧はすべてフリーズドライのもの。アルコール類は山小屋で購入など。 しかし、フリーズドライの食事はやっぱり、いまいちだった。 

[メンバー]  :単独
[山域&山名]:
北アルプス(富山、長野):後立山連峰:白馬岳(2932m)、唐松岳(2696m)、五竜岳(2814m)、鹿島槍ケ岳(2889m)、爺ケ岳(2670m)、針ノ木岳(2821m)
[天候 ]      :初日は雨、以後晴れ
[行程]
(7/20):猿倉登山口(1230m)14:00 - 15:00白馬尻テント場(テント泊)
(7/21): 白馬尻テント場4:30 - 8:30白馬岳 - 8:50白馬山荘9:20 - 12:30天狗山荘(小屋泊)
(7/22): 天狗山荘6:00 - 9:00不帰嶮 - 9:40唐松岳10:00 - 12:30五竜山荘(テント泊)
(7/23): 五竜山荘4:30 - 5:30五竜岳 - 10:30鹿島槍ケ岳11:00 - 12:40冷池山荘12:50 - 15:00種池山荘(テント泊)
(7/24): 種池山荘5:00 - 7:10新越乗越 - 12:20針ノ木岳12:40 - 13:10針ノ木小屋13:30 - 16:40扇沢
一日目:猿倉登山口〜白馬尻テント場
白馬駅前の登山相談所に登山者カードを提出し、バスで猿倉へ向かう。今日は天候が悪く、諦めて下山した登山者が駅前で恨めしそうに空を見ていた。

14:00  猿倉登山口を出発する。
猿倉荘の裏側から歩き始める。しばらく行くと幅の広い林道に出る。途中林道の上を小沢が流れている。このところ雨続きだったので水の量も多い。 山の方はガスっていて何も見えない。二つ目の沢を過ぎると道は登山道に変わる。濡れた岩の道を滑らぬよう注意しながら登っていくと、白馬尻に出た。

15:00  白馬尻
二軒ある小屋のうち下側の白馬尻荘でテント申し込みを済ませる。今日は幕営者は少ないらしく、小屋脇の平らなコンクリート のところを指定されテントを設営する。小屋と小屋の間の一等地だ。
その後続々と小屋泊りの登山者が上がってくる。明日の早発ちを考え早々に夕食を済ませ明日の好天を祈りながら寝る。

二日目:白馬尻テント場〜天狗山荘
4:30  白馬尻出発









”白馬の大雪渓”を下から見る
 雪渓から上はガスと雨であった。



白馬尻付近は晴れている。昨日は殆ど見通しのきかなかった雪渓も今日は良く見えるが、上の方はガスっている。振り返ると妙高方面は晴れている。
緩やかな勾配の雪渓であるが、念のため軽アイゼンを付け、雪渓上に引かれた赤いベンガラの線に従って登る。勾配が少し急になったあたりで雪渓が終わり、すこし ザレた道を登ると葱平に出る。このあたりからガスがかかり、霧雨となってきたので、雨具を着用する。稜線まではロープの張られた広い登山道であり、天気が良ければ 高山植物のお花畑が眺められるはずだが残念ながら殆ど見えない。 村営頂上宿舎の脇を通って暫くすると稜線に出る。視界不良であるが、とりあえず白馬岳の頂上へ行くことにする。

8:30  白馬岳頂上
巨大な白馬山荘の間を抜けて暫く登ると白馬岳の頂上へ出た。登り始めてからここまで2〜3人の登山者と出合ったのみである。何も見えない 頂上を早々に引き揚げ、白馬山荘に戻り休憩。







”白馬山頂(2932m)”
 何も見えない。



8:50  白馬山荘9:20
山荘の受付フロアには4〜5人の登山者が暖をとっていた。白馬大池方面から来た人たちで、天候が悪いのでこの先どうするか迷っていた。

風雨はそれほどひどくはない。雨具を再点検し天狗山荘まで行くことにする。
杓子岳の巻き道あたりまでは視界は50m位あったが、鑓ケ岳付近からは強風と横なぐりの雨になった。足を踏ん張らないと風で倒されてしまう。 視界は数メートルしかないので、足元の踏み跡を確認しながら耐風姿勢で少しづつ進む。鑓ケ岳の頂上はパスして先を急ぐ。 白馬鑓温泉への分岐を過ぎればあと一息である。天狗山荘近くは雪田になっている。所々ベンガラマークが見えるが途切れているため判りずらい。 発電機の音が聞こえてきたので、それを頼りに進むとようやく天狗山荘に着いた。

12:30  天狗山荘
この強風と雨。考えるまでもなくテントは止め小屋泊を申し込む。山荘には今朝白馬山荘を発った登山者が10名程、暖をとっていた。
靴を含めて全身ずぶ濡れ。早速乾燥室で濡れたものを乾す。この山荘は今年改築したばかりで大変感じが良い。 山小屋で小屋食を食べるのは久し振りである。夕食は鍋料理も付いたなかなかのものであった。風雨は夜中まで小屋の屋根、壁をたたいていた。

三日目:天狗山荘〜五竜山荘
6:00  天狗山荘出発

朝起きたら快晴である。どうやらやっと梅雨明けの天気になったようだ。今日は五竜山荘までの楽な行程である。ゆっくりと朝食をとり出発。 山荘に泊まった隣の部屋の人は今日は冷池小屋まで行くという。荷物が軽いとはいえ驚きである。普通の人の二日分の行程だ。
振り返ると昨日は全く見えなかった白馬鑓ケ岳が朝日に輝いて美しい。







”白馬鑓ケ岳、杓子岳”を振り返る




進行方向には立山、剱がくっきりと眺められる。今月に入って晴れたのは一日だけだったと山小屋の人が言っていた。 今日からは夏山本来の姿になりそうだ。晴れやかな気分で稜線漫歩が出来る。








”剱岳遠望”
 風格のある姿を見せてくれた。



天狗の頭に来ると前方が一気に開けた。これから歩く後立山連峰の唐松岳、五竜岳、鹿島槍ケ岳の全景。その先に槍、穂高。 思わず身震いがする光景である。(このページトップの写真)写真を撮りながら暫し見とれる。

天狗の頭からの緩やかな下りが終わると急降下となる。”天狗の大下り”と称するところだ。これと同じような下りがどこかであったなー。 そう、南アルプス悪沢岳から中岳への下りが似ている。300m以上を一気に下る。この下った分をまた登らなければいけない。下り終わると不帰ノ嶮に入る。

9:00 不帰ノ嶮
一峰を過ぎると不帰の二峰の岩壁が、垂直にそそり立っている。一瞬、どこを登るのだろうと戸惑うが取り付いてみると ホールドがしっかりしているので、鎖に頼らなくても着実に高度を上げていくことが出来る。ここで今日始めての登山者とすれ違う。








”不帰ノ嶮の二峰”
 一瞬どこを登るのか戸惑う。



二峰の頂上から振り返るとさっき下りて来た、天狗の大下りがこちらを向いている。その向こうに白馬鑓ケ岳がちょこんと見える。 三峰から唐松岳まではあと一息である。








”不帰ノ嶮から天狗の大下りを振り返る”




9:40 唐松岳
ここで小休止。唐松岳の頂上から先ほどの不帰ノ嶮の縦走路がよく見える。 行く手を見ると五竜岳が威容をかまえている。堂々として圧倒される。 少し下ると唐松岳頂上山荘に着いた。








唐松岳から見た”五竜岳”
 堂々とした大きな山だ。



唐松山荘から先は楽な縦走路に見えるが、どうして。脆い岩のやせ尾根が続いている。不帰ノ嶮よりむしろ神経を使う。岩場を過ぎると緩やかに 下り、鞍部に出る。ここから少し樹林帯に入る。強い日射しに照らされていたので林に入るとほっとする。 五竜山荘までの緩やかな道がハイマツ帯の中に見える。白岳の巻き道を過ぎ、しばらく行くと五竜山荘に着いた。

12:30 五竜山荘
時間は早いが今日はここまで。早速テントを申し込む。山荘前のベンチでラーメンを作りながらビールを飲んで一息つく。 日射しが強いので、テントの中は暑くていられない。テントの外にエアーマットを敷き、昼寝をした。
三時頃になると登山者が続々と登ってきて山荘の宿泊申し込みをしていた。殆どが八方尾根か遠見尾根を登ってきた人達で明朝、五竜岳を登り、 下山するという。
夕方食事を済ませ、寝る準備をしていたら五竜岳方面から明かりが近づいてくる。20:00に近いこの時間に登山者が山荘へ着いた。中年の夫婦である。 多分キレット小屋からの行程を甘くみたのであろう。遭難の予備軍である。
四日目:五竜山荘〜種池山荘
4:30  五竜山荘出発

今日も快晴である。予定では今日は冷池小屋まで。長丁場を考え、早発ちをする。五竜岳への最初は緩やかな登りであるが、 しばらくすると岩場になりペンキマークを頼りに登る。途中で日の出を迎えた。雲海の上からのご来光である。








”五竜岳でご来光”




5:30  五竜岳

五竜岳の頂上は細い尾根を少し戻ったところにある。360°遮るものが無い素晴らしい展望である。行く手に八峰キレットのやせ尾根が続き、その先に 鹿島槍の双耳峰がでんと構えている。








”五竜岳頂上から八峰キレットと鹿島槍”




八峰キレットへの道は最初はザレた急斜面の下りである。これを越すと鎖の付いた岩場のアップダウンが延々と続く。登ったと思ったら下りる、 この繰り返しは精神的に疲れる。口の沢のコルを過ぎて更に鎖、ハシゴの岩場を数回繰り返すとやっとキレット小屋だ。
ここからは鹿島槍までの急登が始まる。急斜面の岩稜帯で一気に高度を上げる。キレット小屋がみるみる小さくなっていく。
登り詰めると吊り尾根のコル部分だ。ザックをデポして北峰を往復する。吊り尾根のコル部分に大きな雪田が残っていた。ストックできれいな雪を掘り起こし ポリ袋に詰める。後で清涼水になるだろう。南峰の登りにかかる。頂上は見えているがなかなか着かない。朝から歩いた疲れが出てきたのと 暑さで足が重い。









”鹿島槍ケ岳吊り尾根から八峰キレットを振り返る”
 信州側から雲が湧いている



10:30 鹿島槍ケ岳
南峰の頂上には大勢の登山者が休んでいた。殆どが扇沢からの往復登山者達だ。
ここで今日始めての大休憩をとる。先程とってきた雪がすこしづつ融けているのでこれでのどを潤す。ラーメンを作って早い昼飯とする。

鹿島槍からの下りの最初はザラザラの滑りやすい道だ。右手に剱岳、立山を見ながらどんどん下る。途中、ハイ松の中の布引山のピークで小休止。 さらに下ると傾斜はなだらかになり、お花畑に出る。例年だと残雪があるが今年は残っていない。テント場を過ぎて暫くしたら冷池山荘にでた。

12:40 冷池山荘
今年改築したばかりの山荘で快適そうだ。山荘前のベンチで一休み。時間はまだ1時前、もう少し先まで進めそうだ。 明日の行程を楽にする為に種池山荘まで行くことにする。

ここから爺ケ岳までは緩やかな登りである。樹林帯を過ぎて、ハイ松の中をトラバース気味に進む。爺ケ岳の手前の斜面にコマクサの株があるが、花 は終わっていた。2年前に来た時はちょうど見頃だったが、今年は殆どの花がピークを過ぎている。
爺ケ岳頂上からは種池山荘を見下ろす形になり、後方に剱岳、立山連峰を従えた絵になる風景だ。この風景を見ながら緩やかな斜面を下りた ところが種池山荘だ。

15:00 種池山荘
テント場を申し込み、まずは生ビール。今日は結構歩いたので、生ビールがいつになくうまい。一杯で終わらず二杯飲んでしまった。 テント場は山荘から少し離れた木立の中にあって、きれいに整地された一等地だ。既に10張が設営済みで、それぞれ夕食の準備に取りかかって いる。夕食を済ませ、ちょっと早いがテントの中で横になったらあっという間に寝てしまった。

五日目:種池山荘〜扇沢
5:00 種池山荘出発
今日も天気は良さそうである。後立山連峰でも種池から先を歩く人は余り多くない。稜線はなだらかに見えるがそれぞれのピークは思ったよりアップダウンがある。 左下に扇沢を見ながら歩き始める。岩小屋沢岳あたり来ると左手に形の良い針ノ木岳が見え、その左に蓮華岳が横たわっている。その間に針ノ木雪渓が見えるが やはり雪は少なそうだ。すぐ近くに見えるがこれが意外と遠いのだ。



 ”岩小屋沢岳付近からの針ノ木岳〜蓮華岳”

岩小屋沢岳で今日始めての登山者と出会う。新越山荘からの人達で、素晴らしい眺望を前に写真を撮りながら歩いていた。 岩小屋沢岳の先のピークを一つ越えて下って行くと今日の稜線の中で一番標高の低い新越乗越に下りる。ここに新越山荘が建っている。 山荘の信州側斜面は一面のお花畑だ。








 新越乗越から
”コバイケイソウと針ノ木岳”




鳴沢岳から振り返ると今まで歩いてきた後立山のピークが朝もやの中に墨絵のように幾重にも重なって見える。絵になる風景だ。
黒部側を見ると剱岳と立山が大迫力で間近に迫って見える。







 鳴沢岳から
”白馬、五竜、鹿島槍を振り返る”







 ”鳴沢岳からの剱岳と立山連峰”

ここから赤沢岳とスバリ岳へ吊尾根を二つ越していく。近くに見えるがピークへはなかなか着かない。暑さも加わってきて、歩くペースが 段々落ちる。スバリ岳に近付くと今までの砂地状から岩稜帯に変わった。スバリ岳と針ノ木岳の登りは何れも勾配がきつい。これが最後の ピーク、針ノ木岳に着く。

12:20 針ノ木岳
針ノ木岳の頂上に着いたら周りはガスに包まれて眺望はない。行動食を何種類か食べて今日の昼飯とする。針ノ木峠から登山者が大勢登ってくる。今日は梅雨明け最初の土曜日だ。 この分だと針ノ木小屋は満員だろう。
針ノ木峠に下りてきたら雨がポツポツときた。予想した通り針ノ木小屋は登山者であふれておりテント場もびっしりだ。 予定を変更し扇沢まで下りることにした。
針ノ木沢を下りていくと、登山者が続々と列をなして登ってくる。今夜の針ノ木小屋は超満員だろう。峠から一時間くらい下りてきたら雷雨になった。 安全と思われる地形を選んで休み、しばらく様子をみることにした。物凄い雨で、これがバケツをひっくり返したような。と言うんだろう。 20分くらいで雨がおさまってきたので、行動再開。
(後日ニュースで知ったが、この時間に不帰ノ嶮で落雷による遭難があったようだ)
雨は上がったが視界はよくならない。雪渓にさしかかるがコースがはっきりしない。今年の雪渓は雪解けが進み、雪渓の崩落があちこちで見られる。 慎重にコースを選び雪渓歩きを終了した。








”崩落が進む針ノ木雪渓”
 崩落した脇を登山者が下りてくる。



ここからは川の左側を下りてゆく。歩きずらい道だ。途中、大沢小屋を過ぎ、沢を二つ程渡ると平坦になり扇沢まであと一息。 車道を数回横切って自然歩道と呼ばれる登山道を下っていくと、扇沢に着いた。

16:40 扇沢到着
身体は疲れているが、後立山連峰の縦走を終えたという満足感でいっぱいだ。デポしておいた車で大町温泉の”薬師の湯”に向かい五日間の疲れをとる。 近くの食堂で久し振りにまともな食事をし、 車の中で5時間ほど眠ったあと帰途についた。


    出合った花々


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