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<bgsound src="scar.mid" loop=-1> 北アルプス  笠ケ岳-槍ケ岳-穂高岳縦走
2005年7月20日(水)〜23日(土)


”槍-穂高縦走路、大キレットのコルから獅子鼻を振り返る” 険しいこの壁を下りてコルに立つ。


[概要]
やっと梅雨明け宣言が出た。2日程天候の様子を見たあと、恒例の夏の北アルプス山行に出掛けた。
一ケ月前に蝶ケ岳から見た槍-穂高の稜線が頭から離れず、今年はここを縦走することにした。それに笠ケ岳を追加して 新穂高を拠点とした周回コースである。
最終日は雨に降られたが、それ以外は好天に恵まれ、日本を代表する縦走路、槍-穂高を満喫することが出来た。


[メンバー]  :単独
[山域&山名]:
北アルプス(岐阜、長野)、笠ケ岳(2898m)、槍ケ岳(3180m)、北穂高岳(3106m)、涸沢岳(3110m)
(登山口からのMax標高差2090m)
[天候 ]      :晴れのち雨
[行程]:
(7/20):新穂高登山口(1090m)8:00 - 8:55笠新道入口 - 12:50杓子平入口13:10 - 15:00笠ケ岳山荘(テント泊)
(7/21):笠ケ岳テント場5:30 - 7:00秩父平7:20 - 9:10弓折岳 - 10:20双六小屋10:50 - 16:20槍ケ岳山荘(テント泊)
(7/22):槍ケ岳山荘6:00 - 8:00南岳8:20 - 10:00長谷川のピーク - 12:10北穂高岳小屋12:40 - 14:40涸沢岳 - 15:00穂高岳山荘(テント泊)
(7/23):穂高岳山荘7:00 - 9:10重太郎橋9:30 - 10:10白出小屋10:20 - 11:40新穂高登山口
一日目:新穂高登山口〜笠ケ岳

7月初めの土砂崩れで158号の上高地線が通行止め、乗鞍スーパー林道の迂回路を経由して、新穂高温泉へ入る。
平日の為か、新穂高の無料駐車場は7割程度と比較的空いていた。

8:00   新穂高登山口の駐車場を出発。


途中、登山指導センターで入山届を提出して蒲田川の左俣に沿って進む。







”新穂高温泉から穴毛谷の奥に抜戸岳が見える”




1時間弱で笠新道の入口に着く。この登山口は国土地理院の地形図のものより、500mくらいワサビ平寄りにある。
入口から暫くは緩やかな歩き易い登山道であるが、次第に急登になってくる。初日であり、ザックの重さが少しづつ肩に食い込んでくる。

この笠新道を地形図で見ると、平均斜度35°の驚くほどの急勾配である。実際の登山道はジグザクに作られており、 勾配は緩和されるが、その分歩行距離は長くなる。いずれにしても登山口から笠ケ岳までの標高差は1800mある第一級の登りであること には間違いない。

最初は樹林帯の中を歩くので日射しが遮られて涼しいが暫くすると、木立が低くなり見通しが効き出すとともに 夏の太陽にさらされるようになる。
焼岳と乗鞍岳が視界に入ってきた。








”笠新道の途中から、焼岳、乗鞍岳”




ジグザクの登山道を歩くこと約4時間、やっと杓子平の入口の平坦地に出る。


12:50  杓子平入口

素晴らしい景観であるが残念ながらガスで部分的にしか見えない。 時折、ガスが切れて穂高連峰が全貌を現す。





         ”杓子平から奥穂高ー西穂高の稜線を望む”
             ジャンダルム、天狗の頭、間ノ岳などの険しいギザギザが登行意欲をそそる。





         ”時折ガスが切れて、抜戸岩、笠ケ岳が顔を現す。”

杓子平のカールに入ると高山植物が今が見頃と咲き誇っている。代表的な花をその都度、写真に収めるが、これがちょうど良い休憩になる。
やがて稜線に出て、今日の目的地が少しづつ近づいてくる。







”稜線上からの笠ケ岳”




緩やかな稜線歩きを1時間、笠ケ岳の山荘に到着。


15:00  笠ケ岳山荘

ここは百名山であるが、ロケーションが厳しいのか、夏のシーズン入りなのに、宿泊者は余り多くない。 テントの申し込みをし、その足で笠ケ岳に登る。頂上からは明日歩く稜線と遥か彼方に槍の穂先がかすかに見える。







”笠ケ岳から、明日歩く稜線を望む”




テント場は山荘より5分程下がった所の岩のガレ地にある。今日のテントは4張のみ、静かな夜が約束される。




         ”夕陽の中に槍ケ岳と抜戸岳までの稜線がクッキリと見える。”





         ”夕暮れのテント場から見た槍-穂高の稜線。”



二日目:笠ケ岳山荘〜槍ケ岳山荘

笠ケ岳テント場出発  5:30

今日は晴天が約束されたような、清々しい朝である。ゆっくりと稜線歩きを楽しみながらのスタート。
笠新道の分岐を過ぎて、誰もいない朝の稜線を気持ちよく進む。
振り返ると笠ケ岳が特徴ある姿で見送ってくれている。







”抜戸岳付近から笠ケ岳を振り返る”




歩き易い道であるが、同じような地形と光景が続くので、少し飽きて来る。
やがて秩父平への下りとなり、光景がガラリと変わる。

7:00  秩父平

カール状の秩父平は高山植物の楽園。様々な花が目を楽しませてくれる。




         ”秩父平の景観”







”お花畑と奇岩。バックは西穂高岳”




秩父平で休憩のあとは、朝の強い日射しの中の稜線歩きが続く。秩父平から大ノマ乗越の間は 高山植物が百花繚乱。その中でも、今が盛りと斜面に咲く、コバイケイソウの大群落は圧巻である。







”大ノマ乗越付近のコバイケイソウの大群落”




大ノマ乗越に来ると双六岳がゆったりとした姿を現す。山スキーのメッカで、スキーに適する斜面が広がる。いつかここを拠点に 山スキーに来たいものだ。







”大ノマ乗越付近から双六岳”




弓折岳を過ぎ、小池新道との分岐に来ると鏡平方面からの登山者も合流するので少しづつ賑やかになる。
双六小屋への稜線には途中に雪田が残り、その脇がお花畑になっている。







”稜線上のお花畑。バックは双六岳”




やがて背面に鷲羽岳を従えた双六小屋が見えてくる。この光景はいつ見ても素晴らしい。







”双六岳と樅沢岳のコルに立つ双六小屋。バックは鷲羽岳”




10:20  双六小屋

小屋の前のベンチで大休憩。ラーメンを作って昼飯とする。この時間、小屋の登山者は出払った後で、休憩者がパラパラといる程度である。
これから槍の山荘まで600mの登りである。日射しも強くなって辛い登りが始まる。
樅沢岳に来ると360°視界が開ける。西鎌尾根の先に槍ケ岳の威容が見え、振り返ると双六岳から三俣蓮華岳、 鷲羽岳が緑と白のコントラストを付け、たおやかに広がっている。







”樅沢岳頂上からの西鎌尾根と槍ケ岳”








         ”左から、双六岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳。遠方に薬師岳”

樅沢岳からは余り大きくはないアップダウンを繰り返しながら進むが、この歩きは段々飽きてくる。 休憩でザックを下ろし、仰向けになると スーっと10分間くらい寝てしまう。これがまた気持ちが良い。そしてまた鋭気を取り戻して歩き出す。
硫黄乗越へ来ると左手に周囲と全く異なった景観の尾根が目に入る。硫黄尾根である。







”生物を寄せ付けないような、荒涼とした硫黄尾根”




硫黄乗越を過ぎ更に小さなピークをいくつか越す。北鎌尾根を従えた槍ケ岳が次第に大きく迫ってくる。千丈沢から 天を突くように聳える姿はやはり絵になる。







”槍ケ岳と北鎌尾根”




千丈乗越に来ると岩肌が槍ケ岳と同じような黒っぽい色に変わる。
ここから西鎌尾根の最後の400m弱の登りに掛かる。 これまではアップダウンの繰り返しであったが、ここからは効率の良い急登で、小気味の良いくらいに高度が上がる。 最後は左側から回りこんで、山荘の横に出た。


16:20  槍ケ岳山荘


受付でテントの申し込みをして、まずビールを購入し喉を潤す。
テント場は大喰岳方向へちょっと行った地点に階段状に区画されている。マチュピチュの空中都市を連想させる ような形だ。夜中に酔っ払って外を歩くと下に落ちそうな場所だ。







”槍ケ岳山荘脇のテント場”




良く晴れているので、夕方の5時を過ぎても槍へ登ることは出来そうだが、今日は十分に歩いたので、明日の朝 の楽しみに残し、山荘前でのんびりする。







”夕日に染まる槍ケ岳”





三日目:槍ケ岳山荘〜穂高岳山荘

日の出前に槍の頂上を目指す。もっと多くの人で賑わうと予想したが、5〜6名が頂上で日の出を待っていた。







”槍ケ岳頂上で日の出を迎える”










”槍ケ岳頂上から朝の穂高連峰”




槍ケ岳には以前に数回登っているが、今は登り、下りが別ルートになっていて、 昔に比べ容易に登り下りが出来る。


6:00   槍ケ岳山荘出発

大喰岳から中岳、南岳までは適当なアップダウンのある稜線漫歩の縦走路である。 中岳直下の雪渓の水場で水を補給する。


8:00  南岳

南岳まで来ると北穂高、奥穂高岳が目の前に広がる。 ここで休憩しこれから行く縦走路の核心部に備える。







”南岳頂上から北穂高、奥穂高方面を望む”




南岳小屋の裏手からキレットが落ち込んでいる。今まで歩いてきたルートとは一変して、まさに厳しい 下りだ。ここからはストックはザックに収納。
ハシゴ、鎖場をいくつか越えてキレットのコルに下りる。振り返ると獅子鼻とその直下の岩壁が素晴らしい景観である。(トップの写真)

コルに下りてから、易しい縦走路もほんの束の間で、すぐに厳しい岩のアップダウンになる。岩に付けられた ペンキマークに従って進む。まさに両手、両足を駆使しての前進で、このコースは体力を要する。
長谷川のピーク、飛騨泣き、と難所を過ぎるが、全体が厳しいルートなので、そこだけが特に厳しいという感じ はしない。







”長谷川のピークを振り返る”
  両脇がスパッと落ち込んで物凄い高度感である。









”飛騨泣き、とその向こうの長谷川のピークを振り返る”




北穂高小屋への最後の登りは少し左手に回りこんで、そこから直登すると小屋の脇に出る。 狭い岩棚にへばり着く様に小屋が立っている。

12:10  北穂高岳小屋

小屋の後ろの展望台で大休憩。持参したパンを食べて昼飯。

振り返ると通ってきたキレットとその先の槍ケ岳が見渡せる。感動の光景である。






         ”北穂高からキレット、槍ケ岳を振り返る”

ここから涸沢岳まではキレットに優るとも劣らない厳しい岩場が延々と続く。一つ一つは大したことないと思っても、 これの連続なので気を緩めることが出来ない。







”北穂高側から見たドーム”
  ここは左側を巻いて進む。









”涸沢岳手前から見た滝谷”








         ”涸沢岳への縦走路からの前穂高岳と涸沢カール”

涸沢岳への最後の登りは、かなりの急勾配の岩場の連続で、殆どがクサリ付きである。 最後は垂直なチムニー状のクサリ場を登ると平坦な涸沢岳へ出た。
ここから穂高岳山荘までは一変して緩やかな一般登山路になる。








”涸沢岳付近にいた雷鳥の親子”





15:00  穂高岳山荘

テント場は山荘の涸沢岳寄りにあり、槍ケ岳のテン場に比べれば比較的平坦な地形である。 一日厳しい岩場歩きをしてきたので、今から奥穂高岳へ登る元気は無い。早々にビールを買い込んで夕食の準備 に掛かる。
テン場からは奥穂高岳の斜面とジャンダルムが時折顔を見せる。







”テント場から奥穂高斜面とジャンダルム”





四日目:穂高岳山荘〜新穂高温泉

未明にテントを叩く雨と風の音で目が覚めた。どうやら今日は雨のようである。 こんな天気に奥穂高岳へ行く気はしない。そうなると結論は早い。下山。
ゆっくりと朝食をとったあと下山に掛かる。

7:00  穂高岳山荘出発

山荘の裏手より白出沢に向かって下る。 このコースはガレた岩の中にルートが付けられており、ペンキマークを頼りに下りる。 雨とガスで視界は悪く、時々マークを見失う。 岩が濡れているので滑り易く一歩一歩に神経を使う。







”白出沢の下り”ガスで視界不良




2600m地点から約150mが雪渓である。事前の情報により、今回アイゼンを持参したのがここで、やっと役に立つ。 ツボ足でも下りられるが、アイゼン着用の方が安全、快速だ。 雪渓の長さはそれ程でもないが、傾斜は白馬雪渓や、剣沢雪渓より急である。

荷継小屋跡近辺は底雪崩によるデブリの山。歩きにくい斜面をクリアし再び目印のある岩道に出た。 重太郎橋の手前の数百mは谷の右岸の岩をへつるように造られた岩切道で要所にクサリがある。







”岩切道から重太郎橋を見下ろす”




重太郎橋で休憩。清流で顔を洗い、雨具を脱ぐ。この辺からボツボツと登山者とすれ違う。 今日は土曜日で、悪天候にも関わらず登山者は多そうだ。
重太郎橋を渡り、白出沢の左岸から少しづつ離れてコメツガの巨木の林の中を歩く。 やがて右俣林道との交点にある白出小屋に到着。

10:10  白出小屋

この小屋は現在は営業していないが、水場には豊富な水が流れていた。
ここで休憩していた二名の年配登山者と話をする。70歳と65歳の この方たちは昨日、西穂高岳から奥穂高岳を縦走したという。驚きである。 世の中には凄い人がいるもんだと、改めて感心。
白出小屋からは右俣林道をのんびりと下る。

11:40  新穂高登山口

登山指導センターで下山届を提出。目の前の食堂に入り、無事下山を祝ってビールで一人乾杯。 久し振りにまともな食事である。バス停脇の公営の無料温泉で4日間の汗を流したあと、 車に戻って数時間仮眠し、帰途に着いた。



    咲いていた花々(主なもの)



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