***高木技術研究所***

<高木式画像解析による水位計の紹介>




従来の典型的な河川の水位計の例

フロート式水位計

図1 フロート式水位計

図1は従来の河川の水位計測に適用されていたフロート式の水位計です。陸上の井戸と河川の 底とを導水管で結び、井戸中の水位をフロートと滑車機構により計測し電気信号に 変換する方式です。その他にも各種の水位計測方式がありますが、いずれも本方式と同じよう に、計測機器が直接流水に触れる接触式の水位計でした。接触式の水位計では洪水等の時にどう してもトラブルを発生しやすく(導水管出口部等に土砂や木の葉で塞がる等)、必要な時に計測で きないという問題があり、人が目視で行うように画像により非接触式で水位計測が行えないかと 多くの人たちが考えました。非接触式の画像による水位計では、計測機器類(カメラや画像処理装置) を陸上に設置でき、洪水等の影響を受け にくく、且つ、保守管理が容易であると考えたからです。


画像による水位計測が困難とされた理由

壁面の面境界の写真


図2 コンクリート壁面水面境界の写真(水面境界が不明瞭)

カメラ画像を解析して水位計測が可能であれば、水位を陸上で計測でき理想的ですが、 以下の理由で画像による水位計測は実現できませんでした。水の透明性や水面での鏡面反射 という水の特性のために水面境界部が不明瞭であり水面境界を画像処理で認識できないという 問題がありました。図2は、水面境界部が如何に不明瞭かを示したコンクリート壁面(水面境界 部分)の写真です。写真の中央部に水面境界線がありますが、全く水面境界線が不明瞭で目視で も認識困難です。写真の中央より上方は実像で中央より下方は水面表面の反射像です。 このような水面境界が不明瞭であるという問題を解決されるまで画像による水位計測は実現できませんでした。





ニューアイデアの登場

傾斜板画像の写真


図3 傾斜板と垂直式量水標の画像比較


水中に設置した傾斜板の画像が水面境界部で屈曲することに注目して上述の問題点を解決しました。 図3の右方は垂直式の量水標の画像ですが水面境界部が不明瞭です。同図左方の画像は傾斜板の画像 ですが水面境界部が屈曲して水面位置が明瞭です。 画像による水位計測には傾斜板の画像を 解析すると効果的であることがこの写真をみてよく理解できると思います。





水中に設置した傾斜板の効果
水面境界部は必ず屈曲するという原理を使用する

傾斜板画像の3態


図4 傾斜板画像の3態


図(a):水の明度が高い場合です。水面下の屈折像が屈曲して見えます
図(b):濁水で水面が鏡面反射の場合です。水面上の実像と水面の反射像で「く」の字に見えます。
図(c):水面部に波浪のある場合です。水面下の屈折像や水面の鏡面反射は散乱のため見えません。 水面上の実像部のみが見えます。
通常は、上述の3つの形態の混合した状態ですが、いずれの状態であっても境界部分に変曲点があり屈曲して 画像処理で容易に水面境界を検知できるのです。





某ダムの水位計測への実施適用例

ダムへの適用例


図5 画像による水位計測システム構成


被写体部(傾斜板、垂直量水標等)、カメラ、画像処理装置、データ管理表示部等から構成されています。





某ダムの水位計測への実施適用例

ダ被写体部の全体を示す写真


図6 被写体部(傾斜板、量水標等)の全体を示す写真


ダム壁面に設置した既設の量水標と新規設置の多段式傾斜板の設置状態を示す写真です。 この多段式傾斜板の画像を画像解析して高さ約25mの範囲のダムの水位を計測致します。



某ダムの水位計測への実施適用例

傾斜板画像の水面境界部詳細


図7 傾斜板画像詳細


図7はダムに設置した傾斜板の水面境界部の詳細を示す写真です。 カメラで撮り込むエリアはこの程度の範囲です。水面境界部がこの程度に明確であれば、 カメラ画像を解析して水面位置を容易に検知できます。そして水位計測ができるのです。



画像による水位計の精度評価

既設圧力式計測結果との比較


図8 水位計測実験結果


図8は、既設の圧力式水位計と画像による水位計測結果の比較を示します。両計測結果の差は極めて小さく画像による水位計測が精度的にも問題がないことが実証されました。


今後の問題点と対策案

傾斜板設置問題の対策案


図9 カーテン式傾斜板の新規アイデア


傾斜板を使用すると画像による水位計測が可能であることが実証されました。 しかし、傾斜板の設置が問題になってきました。既設のダムに傾斜板を設置することを考えてください。 ダム湖の水面上にあるコンクリート壁への傾斜板の設置は容易ですが、水面下にある壁面への傾斜板の設置は大変です。 このように画像による水位計測では、未だ解決すべき課題が残っているのです。 この課題の解決案の一つを図9に示します。設置が容易なカーテン式傾斜板の適用です。この方法では、 傾斜板の設置は極めて容易であり設置費用も小さく有利と思われます。実用できるかどうかの検討はこれからです。


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