岩手県立盛岡第一高等学校1960年卒在京同期会
在京白堊三五会・盛岡方言辞典

『盛岡地方の方言』は旧都南村を中心として集録したものです。


「盛岡地方の方言」を集録して

〔2009年に 改訂 しました。〕



           熊谷高正

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2012年6月1日以降、どれだけアクセスされるか
試しにカウンターをつけてみました。


 時代の変化の中で、方言が急速に消滅しつつあります。十年で10パーセントづつ消
えていってるのだそうです。

 昔、子供の頃に使われていた言葉がこのまま忘れ去られてしまうのは惜しい気がして
記録に残したいと考え、思い浮かぶままにメモをしていたらいつの間にか500語を越
えました。思いのほかの多さに驚いています。かなりの数拾い集めたつもりでいますが、
しかしまだまだ漏れがあると思います。

 記録しながら「盛岡弁」(と言っても私の生まれ育った旧都南村中心の言葉ですが)
の特徴点として私なりに気が付いたことを以下のようにまとめてみました。

 岩手を離れて五十年近く過ぎた今、忘れかけていた昔の言葉を思い出すたびに当時の
情景が浮かび、郷愁を誘います。
           
  1. アとエの間の中間音(英語の「ae」の音)が多い。元々の「ア・イ」の二つの音
    が詰まってこの発音になっている。
     「・・・したけゃね(甲斐がない)」「やめぇ(病)」「れぁさま(雷さま)」
    「へゃる(入る)」「あめぇ(甘い)」「かれぇ(辛い)」「すっけぇ(酸っぱい)」
    「くせぇ(臭い)」「ふけぇ(深い)」「あせぇ(浅い)」など

  2. 「せ」の音が「へ」に変わる。
    「へわ→世話」「へげ→堰」「へなが→背中」「ねへる→寝せる」「へぐ→急く」
    「へっかぐ→せっかく」「へづね→切ない」「へめる→責める」など

  3. 盛岡地方特有の言葉があり、それを表す「共通語」が見当たらない。
     バケツやコップなどの水、みそ汁、鍋などを「まげる」は「捨てる」でも「撒く」
    でもない、「空ける」も違う。湯飲み茶碗を倒して机の上にお茶を「まげだ」とき、
    とっさに「うわっ、お茶まけた、布巾持ってきて!」と言ったら「『まけた』って何
    ですか?」と言われた。
     ほかに「きゃっぱり」「ふどる」「へなぐる」「もじょれ」 「やがねる」「ほっこむ」
    なども同じ、 ぴったり当てはまる言葉が無い。

  4. 漢語、古語がそのまま残ったと思われるもの。
    「かなみる(艱難)」「きてぇだ(奇態)」「じょせした(如才)」「どでした(動
    転)」「きゃね(甲斐)」「じぇんて(全体)」「げゃんに(げに)」「さればえ
    (さ・あれば)」「ごで(御亭)」「しはんこ(四半)」など。

  5. 生活や農業のやり方の変化に伴ってその事物が存在しなくなったものは、方言に
    限ったことではないが、それを表す言葉もやがては無くなっていく運命にある。今
    その瀬戸際にあると思われるもの。
     「かどこ」「たなげ(種池)」「すふる(据風呂)」「ひぼど(火元)」「くど(竈)」
    「まげ(馬飼)」「ちょうじどご(手水所)」「おがわ(厠)、おまる」「けら」「つ
    まご」「しべ」「こしぴり」「かめのこ(亀のこ)」「ゆで(結手)」「えんちこ
    (嬰児篭)」「かまやぎ」「ころし(粉おろし)」「かさっこ(笠っこ)」「じょみず、
    ぞみず」「さへどり」「まんが(馬鍬)」「ばしゃかげ」「ダー! バイキー!」「まへ
    ぎ(馬栓木)」「まだめ」「まのぐれぇ(馬の喰らい)」「ぼんぐのくそ」「たんご(担桶)」など。

不思議に思うこと、『もんこ』って何?
  怖いもの、恐ろしいもの、妖怪、の意味のことを『もんこ』と言っていた。語源
 は「蒙古」から来ているとのことである。

  蒙古が日本に攻めてきた元寇は,700年以上も前の鎌倉時代(文永の役1274
 年、弘安の役1281年)である。しかもずっと遠い九州博多湾への来襲である。
 そんな遙か昔のずっと遠方の地で起きた出来事が、何故今日までの長い間「怖いも
 の」を表す言葉としてこの地方に残り続けてきたのだろうか。

  その時代に蒙古軍との戦いに参加した人々が居て、戦闘から帰って蒙古軍の恐ろ
 しさ、怖さを語り、伝え残された言葉なのだろうか。蒙古襲来のあった福岡県を含
 め、各地の出身の人にこの『もんこ』について聞いてみても、「うちの方でもそう
 言う」と答えた人には出会わなかった。九州やその近辺に残っている言葉なら分か
 るが、どうして辺境だった岩手の地に残っているのか興味深い。






盛 岡 地 方 の 方 言  (集録:熊谷高正)

         

   言      葉        意        味    
・・・ごった ・・・だごった ・・・だろう ・・・だと思う (来るごった、喜ぶごった)
・・・だず ・・・だずな ・・・だずおな ・・・だそうだ ・・・だと言ってるな ・・・だと言うことだそうな
・・・だなはん あのなはん ・・・ですね あのね
・・・だはんて ・・・なはんて ・・・だから ・・・と言う訳で (綺麗だはんて みだぐねはんて)
・・・どめで ・・・だとみえて・・・した様子で (忘れできたどめで)
・・・にかってぇ ・・・のせいで ・・・としたことが (あいづにかってぇ・・・)
・・・まぎ ・・・の親戚、・・・一族
はいそうです ええそうです  肯定を表す丁寧語
あがめってぇ あかんべえ
あがりっぱ 土間から家に入る上がり口
あぐ
あぐど かかと
あぐどつぐ あぐどたれる 悪態をつく
あげず あぎず とんぼ
あげもす (仏壇などに)供物を供える へりくだって持ち上げる
あせ あせっこ おかず 副食物 合わせ
あっぱあ
あっやぁ あっやぁほに おやまあ またまたどうして
あねっこ 若い娘 姉っこ
あぶりご 魚などを焼く金網
   言      葉        意        味    
あべぇ 行こう 行きましょう
あめる 酸化していたむ 腐る
あらがう からかう 
あわぇに たまに 時々
あんじこどだ 案じられる 心配事だ 案じ事だ
いじくされ 意地悪
いじらぐ しょっちゅう 度々
いだみた 勿体無い いたわしい
いっぱぢ 踊りの道化役(男)
いろさめる 色があせる
いろっぺわり 色つきが良くない 色具合が悪い
うえっか えっか 上 上部
うしろこど 後頭部
うしろっけ 裏 背面 後方
うそまげる うそたれる 嘘をつく 嘘を言う
うっちゃめぐ うっちゃしね うろつく うろうろする ぱたぱたしてうるさい
うでぬぎ 衣服の袖の汚れを防ぐため腕にはめる円筒形の布
うるげる うるがす うるぎあがる 潤ける 水に浸して柔らかくする おだてに乗って有頂天になる
うんちぇ 「何だそんな事嫌だ」という感嘆詞
うんてぇ うんでぇ そうだ たしかにそうだっけ
   言      葉        意        味    
うんにゃ まずは ところで さて
えぐね いぐね 屋敷周りの樹木 屋敷林 居久根(いぐね)
えげずれ ずるい こずるい
えっくれ 一杯 沢山 いい加減に
えづだり えづだりかずだり おかしな時に 変な時に
えったりかったり いい加減な時に 変な時に
えっちゃめぐ 周りをうろうろする
えなさん 兄さん
えへとり 発情した雄鶏
おあげんせ お召しあがりください お食べください
おおあらめ 彫りの深い顔 目鼻立ちのすっきりした
おがる 大きくなる 植物が生えている
おがわ お厠 おまる
おごらみ 奥ゆかしさ
おさがり お祭り
おっけぁす おっけぁる 倒す 転ばす 転ぶ
おっちょる 折る ぽきっと折る
おっつめす おっつらめす 押し倒す ぼんと押す
おっほ ふくろう(鳥)
おでぁる おでぁった いらっしゃる おいでになった
   言      葉        意        味    
おどげ
おどし 食物を保管する地下保管庫(落とし)
おどでな おととい
おどゆび 親指
おどろぐ 目を覚ます 目覚める
おなごぶり 女の容姿
おねばこ 水を多く入れて米を炊いた上澄の汁 おもゆ 病人・乳児用 御粘
おふるめ 結婚式 お振る舞い
おべだぶり 知ったかぶり
おめにかってぇ お前とした事が
おめはん あなた(女言葉)
おもさげながんす 申し訳ございません
おらほ 我が家
おんじ 弟  長男に対し次男以下の者
おんにゃ 外庭 お庭
がおる 疲労困憊する様子 疲れてげっそり衰える
がが
かかべ 蛾 蝶々
かがりかがる 経費がかかる
がぎみら がぎめら 子供ら 餓鬼奴等
   言      葉        意        味    
かぐし ぽけっと
かさっこ 木製の小皿
かさっと 少し 軽く 飯など、軽く盛ってもらうときに言う
かだがだし 片ちんぱ
かだげわり 弱々して体形がおかしい 体つきが悪い
かだごど 遠慮深い 固い
かだひた 片方
かっきね とっても 随分と
かっちゃぐ ひっかく
かっちゃます かき回す
かっつぐ かっとす 追いつく 追い越す
かでる 加える 仲間に入れる
かどこ 家の前の水路に作った洗い場 農作業の後手足、農具等を洗う
かな
がは すぐに笑い、なかなか笑いの止まらない人
かばねぇえ 体格がいい
かまかげる かまかげできいでみる 誘導して答えを問い質す 誘い水を入れて答えを聞く
かます かきまわす
かまどけゃし 破産人 身上つぶし
かまやぎ 中に味噌などを入れ、米の粉で作った蒸し饅頭
かまり かまる 香り 嗅ぐ
   言      葉        意        味    
かめのこ 赤ん坊を負うときに付ける、亀甲の形をした綿入れの覆い
からくぢきぐ 口ごたえをする 減らず口をきく
からげ すり鉢
からこしゃぐな 小癪な 余計な でしゃばりな
がんこ  がんこや 葬式  葬儀屋
かんなみる 難儀する 苦労する 艱難みる
きちゃがまし やかましい うるさい
ぎったぎったど飲む ぐいぐいと飲む
きてぇだ 奇態だ 不思議だ おかしい
きどごろね 昼寝
きなぐる 切る
きなさま 昨日の朝
きなね きんなね 気に入らない 気にくわない いやだ
きびちょこ お茶を入れる急須
きまやげる 腹立たしい (肝が焼ける)
きみじか 短気 気が短い
きむぐちょ 気難しい人 気ままな人
ぎゃぐり 周り 周囲
ぎゃだご 毛虫
きゃっちゃ 上下・表裏反対 逆さ 裏返し
きゃっぱり 転んで川や田んぼの中に入り込み、ずぶ濡れになること
   言      葉        意        味    
きゃねぇ 甲斐がない 弱い
ぎゃらご おたまじゃくし
きらず おから 豆腐のから
きりきりず 冷えた、冷たい様子
きりせんしょ ゴマ、胡桃、黒糖を入れ、縦縞模様を刻んだ細長い米粉饅頭
きりまい 米の収穫後1年の農作業の苦労に報いるため嫁に与えたお金
くえる 塞ぐ 間隔を詰める
くがげる 食いかける 途中まで食べてやめる
くされもの くされがぎ くされ・・・ 馬鹿者 いやな奴 あの野郎 憎たらしい・・・
くたず 藁の柔らかい鞘の部分
くっちゃがる かじりつく
くど 竈(かまど)
くな 来るな
くなんしぇ ください
くぴた
ぐやめぐ ごちゃごちゃ言う 小言を言う
くらえる  くられる 叱られる 怒られる
げぁだ ひどい
げぁにが げぁんに 実に とっても ひどく 「げに」
けえ 食え
けがしっこかげる 足で歩行の邪魔をして転ばす
   言      葉        意        味    
けずまず  ぐけずまげる 躓く(つまずく)
けっぱる 頑張る 力を入れる
けゃしとる 仕返しする
けゃねぇ 弱い 劣る
けら
ける けろ 呉れる 呉れろ
げんだあ 悲しい
こぉ 来い
こが 漬物などを漬ける木製の容器 大型の樽
こごどまげる 小言を言う
こごり  凝り 土などのかたまり 鍬で「こごり」を砕く、など
ごしっぱらやげる ごしゃやげる 腹が立つ
こしぴり 男性用の腰元まではおる作業着
ごしゃぐ  怒る 腹を立てる
ごためぐ ごたごたする ごちゃごちゃする
こちょがす こちょがって くすぐる くすぐったい
こっこまる ここまる しゃがむ
こっこゆび 小指
ごっつお ご馳走
こっぱし こわっぱし 飯などが硬い こわい
こっぺぁまげる おせっかいをやく でしゃばる 横から口出しして知ったかぶる
   言      葉        意        味    
こっぽでね うるさい 騒々しい やかましい
ごで 旦那さん 亭主 御亭
こどだ 困った 大変だ
こどやった 困ったことした 悔やまれることした
このげ 眉毛
こび こんび 垢 あか
ごめんくなんしぇ 御免ください
こやばち 汚れた 薄汚い
ころくてね ろくでもない
ころし こおろし 碾き臼でひいた粉をおろす、底にメッシュを張った容器
こわぇ 疲れる 難儀だ
ごんぞ ごんど ごみ
こんちける 途中でおかしくなる いびつになる 正常に成長しない
こんにゃ 今夜
ごんぼける ごんぼほる 酒を飲んだりしてからむ
さがしい 賢い
さがっぷらになる 逆さになる
さかめぐ どきどきする はらはらする
さがりくる さがりつぐ 発情する
さきた さっき
さぎのひ このまえ この間 先日
   言      葉        意        味    
さっささ、こどやたごどした やれやれ失敗した、さあさあ大変なことをした
さっちむり さりむり 有無を言わせず 無理やりに
さっと さっとしたごど 少し 僅かに こっそりと ちょっとしたこと 些細なこと
さへどり 田んぼの代掻きで馬の轡に棒をつけて誘導すること 采配取り
さむつらしに なんぎつらしに 寒いにもかかわらず 難儀なことにもかかわらず
ざらめぐ 気味悪い ぞっとする
さればよ だからね そういうことだからな 「さ、あればね」
ざんぞ 噂 雑言
じぃな 爺さん
じぇじぇ、へってこね さあさあ、お入りください
じぇじぇ、もっしゃげね やあやあ申し訳ない いやはや申し訳ない
じぇってが 絶対に
じぇんてぇ 一体全体 そもそも だいたいにして
しが
じぎ 肥料
じぎなしで 遠慮無しで お辞儀無しで
しくった しくたごどした しくじった 失敗した まずいことした
じぐなし 意気地なし
したども ほだども へだども そうだけれども
したら ほんだら そうしたら そうならば
   言      葉        意        味    
じっためぐ じなめぐ じなじなず 湿ってじめじめする
しど しんど 川下など下の方
しねぇ なかなか切れない  するめなど中々噛み切れない
しはんこ 四半 正方形に切った布巾
しべ 藁で作ったつっかけ様の履物(冬、雪の上で履いた)
しみる 凍る
しもる 滲みる
じゃ! よお! ところで
じゃじゃ
じゃっかん 水の中への飛び込み
じゃみる 羨ましい
しゃれぇ 去れ
しょうふ しょうふのり 小麦粉を練って作った糊 正麩
じょぐじ 屋敷の入り口
しょし 恥ずかしい
しょじが くわがたむし
じょせした うっかりした 失敗した 不注意だった
じょせね 如才ない
じょっこまっこ 竹馬
じょっぱる ぞっぱる 強情を張る 言い張って聞かない
しょで 最初 初め 初手
   言      葉        意        味    
しょなしょなどあるぐ お嫁さんなどがしゃなりしゃなりと歩く
じょみず ぞみず 米のとぎ汁(馬の飲料にした)
しょり
しんこどせ 静かにしろ
すがり
すけんけ 片足とび
ずたっと ずったり しょっちゅう いつでも
ずっかり ずっと よりずっと
すっけぇ 酸っぱい
ずったり むったり ずたっと しょっちゅう 頻繁に ずうっと続けて
すっぱげであるぐ 裾をまくりあげて足を露出して歩く様
すっぱねあげる ぬかるみを歩いてズボンの後ろに泥を跳ね上げる
ずっぱり 沢山 腹いっぱい
すっぺえ 「酸っぱい」から、ずるい、けちな
ずっほに とても たいへん
すてっと すとんと すっかりと
すとっこ すと 納豆を作るときに中に豆を入れる藁で作った入れ物
すねから
すふる 風呂 据え風呂
ずらめがしてかぐ 字をくずして書く すらすらと字を書く
ずるける ずるをする さぼる
   言      葉        意        味    
ずんべら きちんと事を運ばない者 怠惰
せっこぎ へっこぎ 怠け者
せどな へどな 先頃
せんば せんばいだ 菜板(さいばん) まな板
ぜんぶ 随分
そう 言うの丁寧語 おっしゃる そう言う
そこっと こっそりと 静かに
そざす 粗雑にする 台無しにする
ぞさね じょさね 簡単だ 雑作ない
ぞっぱり(じょっぱり) 強情張り
そんまに すぐに
ダー! 歩いている馬を止める掛け声 「止まれ!」 歩けは「しっ!」
だあれぁ そう言っても どうしたって
たがる 留まる 蝿などがとまる
だっても 誰も
たなぐ もつ 担ぐ
たなげ 池 種籾を漬ける池 種池
たのぐろ 田の畦
たもづぐ つかまる
たろしが つらら 垂る氷
たんご 担籠 天秤で担ぐ木の桶
   言      葉        意        味    
たんぱ
ちゃし
ちょじどご 便所
ちょす いじる 手を触れる
ちょっちくちょ(そ)にす いじくりまわす いじくってめちゃめちゃにする
ちょっとぎま いっとぎま 少しの間 ちょっとの間
つすもす とうとう いよいよ
つだす 差し出す 手渡す 突き出す
つっつぐまる しゃがむ
つまご 藁で作った雪の中で履く靴
つらつけね 図々しい 遠慮知らず
つらふぎ 顔拭き タオル
でぇどご 台所
てぇんご 同じ 同等
でがらげす 外出、出席などしたがらず億劫がる
てきゃし 手甲 農作業で手の甲を保護するために作られた当て布
でっつまる でっつばる 尿、便などが出そうになる
てっぽまげる 嘘をつく
てどぁえ てんどぁえ 手先が器用だ 上手だ
ではる 出る
でろっと てろっと べろっと すっかり全部 残さず全部
   言      葉        意        味    
でんきたま 電球
でんきべかっとける 電気が突然ぱっと消える
でんきべっかめぐ 電気が点いたり消えたりする 点滅する
てんきり てっぺんまで
でんづぐ 攻撃して突きまわす
でんでぽっぽ ほっぺたがふっくらして可愛い赤ん坊
でんび
どかめぐ どきどきする
どごのしぎに とんでもない 非常識な 「何処の式に」
とってまる 子供がパタパタと走り回る
どっとはれ 昔語りで「おしまい」、「おわり」の意
どっぱり どっぱどっぱど 一杯 沢山
とっぽでね 途方でもない とんでもない
どでら 丹前
どでんす どでんした どんでした 驚く 動転する びっくりした
とどお
とのげる 取りのける 片付ける
どまずぐ どぎまぎする どきどきする うろたえる
どろ(でろ)くるめ 泥だらけ
どんじる 汚く汚れる 色あせて汚くなる
どんだりこんだり 滅茶苦茶に 粗末に いい加減に
   言      葉        意        味    
どんぶぐ 綿の入った防寒着
とんむぐれる とんむぐれっこ ひっくり返る 裏返しになる どんでん返し
 んな んなど おまえ 汝 君達 汝共
ながらはんぱ 中途半端
ながらへんじ 気の無い、いい加減な返事
なぎつめたでる 泣きべそをかく 泣きそうな顔をする
なぎべっちょ 泣きべそ
なして 何故 どうして
なす 生む
なずぎ ひたい
なっても 何にも 何でも すべて みんな
なにしたぐも 何としたところで どうしてのなのか
なにすけぇ 何しにそんなことをやるか そんなことやるもんか
なぼそれなんぼで 値段など、いくらいくらで
なんじょして なんたにして どのようにして
なんだけな なあんだ 何としたことだ 何やってんだ
なんただり なじょだり どうなりと いかようにでも
なんたに どんたに どのように
なんたらまだ どうしてまた
なんてかんて なんたかんた どうしても いくら言っても
なんにしたぐも 何でなのか どういう訳なのか
   言      葉        意        味    
なんぼしても どうしても
にがしぎ 台所仕事 食事の準備
ぬぎ 暑い 温い
ぬぐだまる 温まる
ぬげさぐ こぬげ 気が抜けている 呆けている
ぬたくたど ぬったぬったど 人が地、床を這う様子
ぬたっと ぬったりど 一面に
ぬだばる のだばる 腹ばいになる
ねった ねったつじ 粘土
ねっぱる ねっぱめぐ 粘る ねばねばする
ねぶかげ 居眠り
ねぶる 舐める
ねほれる 寝坊する
ねまる 座る
ねんねこ 子供を負ぶったときに上からはおる着物 寝んねこ
のげは のぎは 軒端 家の端の部分
のっけなし 頭が悪い 脳気無し
のっこり のっちょり 沢山 いっぱい
のっちゃがる 上に乗っかる
のはる 乗る 乗り重なる
のめ ものもらい(目のできもの)
   言      葉        意        味    
はぁ も早 早くも 今すぐ
ばぁな 婆さん
バイキー! 馬を後退させるときの掛け声 バック!
はがいぐ はかどる
ばがづらさげで 馬鹿みたいな顔して 馬鹿な顔をさらして 「馬鹿面下げて」
はかめぐ 心臓がどきどきする
はぎ 箒(ほうき)
ばしゃかげ 馬車仕事 馬車引き
はしり (台所の)流し
はせあるぐ 走り回る
はだぐ 叩く 殴る
はだげる 剥ぐ 剥ぎ落とす 削り取る
はだしたび 地下足袋
はだる せがむ 要求する
はちゃがる 上に乗っかる
ばっけ フキノトウ
はっけえ しゃっけえ 冷たい
はったぎ イナゴ
ばっち 末っ子
はっと すいとん
はねしゃる さっと退く さっと立ち去る 跳ね去る
   言      葉        意        味    
はやさがり 早退
はらくそわり 気分を害した いやな気分だ
はらくだり 下痢
ばんきぃしい ばんちぃしい じゃんけんぽん
ばんげ 夜 晩
ひして 一日 丸一日
びった 女の子の蔑称
ひっつみ すいとん
ひにたれで 一日かけて 一日費やして
ひぼど いろり
ひまだれす 無駄時間を費やす
ひやぐ 柄杓
ひゃりぐぢ 入り口
ひょんたな 変な おかしな
ひらからど さっさと はやく
ふうわりい きまりが悪い
ふぐべ 瓢箪
ふたつける ふたすける 叩く 殴る
ふっちゃぐ 裂く
ふっつまぬげる 隙間が開いて楔などがすぽんと抜ける
ふどる 泥、雪の中などに足がのめり込む
   言      葉        意        味    
ふなぐる ふなぐってあるぐ 引きずる 引きずって歩く
ふるし 古い
ふるだびっき とのさまがえる
ふんばじぐ 蹴る 蹴飛ばす
へぁっこに ずっと以前に
べぁっこ 少し 僅か 小さい
へう へった 言う 言った
へぇってごじぇ お入りください 入って御座い
へぇりぐじ 入り口
へぐ せぐ いそぐ
へげ
べご
べごまに しょっちゅう 頻繁に
へだくしぇ 下手な へたくそな
べった めんこ
へっちょ
へっちょはぐ せっちょはぐ 苦労する 難儀する 一所懸命やる
へでぐ 連れて行く
へでも それでも
へどな せどな せんころ このあいだ
へなぐる 鍋などの底からさらう
   言      葉        意        味    
へる 入れる
ほいど 乞食
ぼう ぼったぐる 追う 追いかける
ほぎだす 吐き出す 口から出す
ぼぐど
ぼだす ぼんだす 追い出す 離縁して家に帰す
ほだだし へだだし んだだし そうだから したがって
ぼっこ 赤ん坊 歳不相応な幼稚な人
ほっこむ 穴を掘って埋める 土中に埋める 埋葬する
ぼったぐる 追う 追っ払う
ほでくてねぇ さっぱり分からない
ほでね そでね そうではない 違う
ぼど ぼろ ぼろきれ
ほどげかげ 仏事
ほどる 火照る 熱くなる
ぼへる ピッチャーがストライクが出なくなる 「ボーンヘッド(骨頭)」
ほろぐ ほろう 打ち払う 払い落とす
ぼんぐのくそ 馬糞
ほんでくってね 訳が分からない
ほんでねぇ ほんじねぇ 分からない 知らない 訳がわからない
ぼんぼになる 鉛筆の芯などの尖った物がこすれて丸くなる
   言      葉        意        味    
まがってみる 体を曲げて覗いてみる
まげ 土間の上階 飼い葉を揚げて保存した 「馬飼(まげ)」
まげる 撒く 捨てる こぼす
まだきたんじぇ 御免ください また来ましたよ・・・
まだめ 馬の飼い葉桶  馬溜め
まぢびゃし 待ち遠しい
まぢる おまぢぇってくなんしぇ 待つ お待ちになってください
まつぺ 眩しい
までにす までだ ものを無駄にしない もったいなく使う
まなぐ 目 まなこ
まなぐえず えずい ゴミなどが入って目がちくちくする
まなぐたま 目玉
まなぐひぐる 目を閉じる
まねける ふざける
まのぐれ うまのぐれ 馬の飼い葉 馬の喰らい
まへぎ 馬小屋の馬の出入を止める横木 馬塞木(ませぎ) 馬栓木
まみし 元気 達者
まや 馬小屋 厩
まんが 馬鍬 馬に引かせて代掻きを行う農具
みずまし 洪水
   言      葉        意        味    
みだぐなし 醜い人 不美人
みだぐね 醜い 見苦しい
みみかぐし 耳かけ(耳の保温用) 耳隠し
むさぐなる むせ からむ からみつく 難癖をつける
むじぇ 可愛そうだ 無情だ
むったむったど むったくたど 引き下がらず無理やりに 熱心に
むっためがして 一生懸命 精魂込めて 精を出して
むったり むたっと しょっちゅう いつも
むんちける からむ
めあしたなぐ 告げ口する
めぐせぇ 醜い
めにぎたでる 目くじら立てる 目の敵にする
めんめこ ねこやなぎの芽
もじょる もじょれ 横による 横にずれろ
もだもだづ もだもだどなる いらいらする
もっきり コップ一杯の酒 盛りきり
もっくらおぎる さっと勢いよく起きる
もっこもっこどこえでる 丸々と太っている
もっす (店などで)ください 今日は 「申す」
もっつもっつどくう 食べる時の様子 大口で食べる
もよう 着る
   言      葉        意        味    
もっておでんしぇ 持ってってください
もんこ 妖怪 ばけもの 怖いもの 「蒙古」が語源
やがねる やきもちをやく
やぐだれ わざと わざわざ
やぐど 本気でない 嘘の 冗談に
やすんでぐむしぇ 休んでってください
やせねぇ やるせない 見ておれない
やっぱまれる でしゃばる 何にでも口出ししてくる
やばち やばちね こやばち 汚い 汚らしい
やめぇと 病人 病いびと
やめる ひりひりと痛む
やらしぐね 憎たらしい よろしくない
やんた いやだ
やんべだ いい塩梅だ 丁度いい
ゆぐね 良くない 悪い
ゆっつける 結わえる 結わえつける
ゆで 子供をおんぶする帯
ゆぶて ゆぶる 煙い 煙る
ゆべな 夕べ
ゆるぐね 難儀だ 大儀だ
よえる より分ける 選ぶ
   言      葉        意        味    
よが 夜蚊
よぐたげる よぐたがり 欲張る 欲張り
よったぐれ よったぐれる 酔っ払い 酔っ払う
よっちゃめぐ よたよたする
よばう 呼ぶ
れぁさま 雷 雷さま
ろくさま ろくに ろくすっぽ
わがね 駄目だ 良くない
わっちゃめぐ わやめぐ わやくやず 周りでうろうろする
わっぱぐ 予定した仕事 ノルマ
わらしゃど 子供達
んだば へだば ほだば したば ならば それでは
んだらば ほだらば したらば ならば それでは
んな んなど おまえ 君 君達 「汝」 「汝共」


盛 岡 地 方 の 方 言 <補遺>

      『盛岡地方の方言』は熊谷君の長年の労苦の賜物です。コレを編集している間に
「この言葉はどうなんだろう?」と思うものがあって、ご本人に照会して見ようとも考えました。
しかし、彼の生まれ育った旧都南村を中心にという“純粋性”を考えるとごちゃ混ぜになるのは避
けたほうが良いと判断して、<補遺>をつくることにしました。彼が追加・修正する場合は本体の方
に入れ、他の人が集録したものは<補遺>に入れることにしたいと思います。どうか、「こういう言
葉はどうだ」とか「この言葉の意味はこうだ」とかいうものがあるときは、「掲示板」に書き込ん
でください。<補遺>も増やしてこの『盛岡方言辞典』が更に充実していけばいいと思います。空空
                                     (管理人)
  p1140-ipad04morioka.iwate.ocn.ne.jp

   言    葉        意      味      集 録 者    
 ・・・したった  「する」の「現在(過去)完了形」(共通語にはない)
(用例:行ったった、来たった、など)
 村野井
 ・・・すか?  ・・・しますか? (用例:行ぐすか)  村野井
 ・・・むしぇ  ・・・動詞の命令形の丁寧語 (用例:行ぐむしぇ)  村野井
 あのなっす  「あのなはん」と同義  村野井
 えらすぐね!  腹が立つ  村野井
 おでもつ  お金、(神仏への供物の意味も)  村野井
 げぁだが  トンボ  村野井
 けっけらご  片足とび けんけん  村野井
 このげ  眉毛  村野井
 ごんぼほる  (子供が)駄々をこねる  村野井
 じぇんこ  お金、(語源:「銭っこ」か?)  村野井
 じぇんご  田舎、(語源:「在郷」か?)  村野井
 じぇごたろ  田舎者  村野井
 しょす (おしょす、とも)  恥ずかしい  村野井
 ずぐなし  臆病者、意気地なし  村野井
 せっごぎ  不精  村野井
 せっごぎたがり  不精者  村野井
 たんぱら  短気  村野井
 つらつけねぇ  憎たらしい  村野井
 ぺっこ  少し  村野井
 もっつもっつとふってる  (雪が)いっぱい降っている  村野井