茨城に保存を託された蒸気機関車(6台)
蒸気機関車(Steam Locomotive)は略してSLとも呼ばれている。
SLは蒸気機関を動かして旅客列車や貨物列車を牽引する先頭車で、ボイラに発生した蒸気を
シリンダに送り、その圧力でピストンに往復運動を起こし、ピストンの一方をクランクに
結合し、レール上の動輪を回転させて走行する。動輪2軸をB型、3軸をC型(旅客列車用)、
4軸をD型(貨物列車用)という。
また蒸気の性質により飽和蒸気機関車と過熱蒸気機関車があり、蒸気にする水とボイラ加熱
用の石炭を炭水車(テンダー)で運ぶテンダー機関車と機関車内部に保有するタンクで運ぶ
タンク機関車に別けられる。
SLは加熱効率が低いことと、鉄道の電化、無煙化を目的としたデーゼル化が進んだことから
次第に姿を消し、国鉄(日本国有鉄道)は1975(S50)年に営業運転を全廃した。
その後SLの動態保存を目的として一部で運転を再開し、観光と地方創成を主眼に不定期で運
行しているエリアがあり現在に続いている。
かって旅客列車用、貨物列車用、構内入換用、勾配区間用、などで活躍したSLには郷愁に
似た特別な思いがあり、情報を収集して「茨城に保存を託された蒸気機関車(6台)」を
訪ねてみた。
常陸大子駅前広場 2019(R1)年6月21日見学
C12187蒸気機関車
重さ39t、幅2.95m、長さ11.35m、高さ1.4m、動輪直径1.4m
来歴
1938(S13)年7月27日日本車輛株式会社名古屋工場で誕生、門司鉄道管理局、西唐津機関区、
豊後機関区、宮崎機関区を経て鹿児島機関区で枕崎線を走行し、1967(S42)年7月から水戸機
関区に移転し水郡線を走行した。
1970(S45)年3月、動力の近代化に伴う水郡線の無煙化で引退し大子町で保存することにな
った。
(以上は現地設置の説明板による)

C12187斜正面
C12形蒸気機関車は国鉄の前身である鉄道省が1932(T7)年から製造した小型軽量の機関車
で、水、石炭を機関車本体に掲載するタンク式で主としてローカル線で活躍した

C12187正面
C12187背面

C12187運転室外観
C12187動輪
保存状況
良く手入れされているように見受けた。一部に保護柵はあるがSLに触れることは可能、見
学者向けの運転室出入り用階段の布設がないため運転室には入れない。
下記の指示板あり
ー注意ー
SLに登りますと落下等によ
り怪我をする恐れがあります。
危険ですので、SLには絶対に
登らないようお願いします。
大子町
これには参った。大子町には運転室出入用階段を布設して運転台を自由に見せる度量が
ないのだろうか。
高萩市勤労青少年ホームの横(高萩市高浜町)2019(R1)年6月22日見学
9667蒸気機関車
形式 9600形(キウロク)9667 長さ16.543mm、高さ3.813mm、
来歴
国鉄から無償貸与の名機キュウロクが高萩市で余生を送ることになりました。この機関車
は、大正4年9月3日、川崎造船所兵庫工場で生まれて以来今日まで56年間各地で動き続けら
れました。
大正4年9月神戸機関区、大正4年11月浜松機関区、大正12年6月敦賀機関区、昭和2年5月
糸魚川機関区、昭和12年3月30日富山機関区、昭和18年10月1日高山機関区、
昭和21年9月23日青森機関区(仙鉄)、昭和25年8月1日青森機関区(青函局)、昭和27年8月
5日青森機関区(盛岡)などで客車、貨物列車、構内入換機としてその使命を果たしました。
国鉄近代化、各線区の無煙化にともない、昭和46年10月1日廃車となりました。その間56年
1ヵ月間、運転キロ数は2,485,253.8Kmに達し地球を64.9回、回ったことになります。また残存
価格は26,608,149円が使用最後の価格となっております。
高萩市
(以上は現地設置の説明板による)

9667斜正面
9600形(キウロク)蒸気機関車は国鉄の前身である鉄道院(正しくは国鉄、鉄道省の前身)
が1913(T2)年から製造した日本で初めてのテンダー式蒸気機関車で「キウロク」と愛称され
四国を除く日本全国で活躍した。

9667正面
9667背面

C9667先端部
9667運転室
保存状況
極めて悪い。SLは施錠された鉄柵の中にあり触れることはできない。勿論運転室への出入りは
不可能。方々に錆が発生し、全体が劣化しているため目を覆いたくなる。高萩市はこのまま名機
キウロクが朽ち果てるのを待つのだろうか。
水戸市千波公園、ふれあい広場(千波湖の西端) 2019(R1)年6月19日見学
D51515蒸気機関車
D51形蒸気機関車について
重量 76.8t、けん引力 1,100t
長さ 19.5m、蒸気圧力 14,0Kg/cm2
高さ 3.98m、動輪径 1.4m
このD51515号機は昭和16年3月国鉄大宮工場で製作され、昭和23年7月水戸機関区に配置となり、
昭和33年2月大宮機関区に転出されるまで、常磐線の石炭輸送に大きな役割を果たした。
その後高島線の入れ換を最後に、延べ1,842,939Km(地球を46周した距離)走行し、昭和45年11月
廃車となった。ちなみに製作時の価格は110,580円であった。
(以上は現地設置の説明板による)
(注)高島線は神奈川県の鶴見ー桜木町間8.5Km、現在は主として貨物列車用として使用、JR東
日本の所有だが鶴見ー桜木町間の旅客運賃の設定はない。

D51515斜正面
D51形機関車はデゴイチの愛称で親しまれ、国鉄の前身である鉄道省が1936(S11)年から設計、製造
したテンダー式蒸気機関車で主に貨物輸送のため用いられ、太平洋戦争中に大量生産しその数は
1,115両に達した。

D51515正面
D51515背面

D51515運転室
D51515運転室内
保存状況
極めて良好、誰でも機関車に自由に触れることが可能、運転室出入り用として階段が布設され
運転室内でも好きなことができる。子ども達に人気のようだ。
笠間市石井児童公園(笠間市石井2068、笠間市民体育館横) 2019(R1)年7月3日見学
C58275蒸気機関車
1.製造年月日 昭和16年3月20日
2.廃車年月日 昭和50年3月31日(工事1609号)
3.製 造 所 汽車製造株式会社
4.配属機関区
仙台局・宮古機関区 昭和16年3月20日〜昭和28年5月4日
秋田局・横手機関区 昭和28年5月5日〜昭和28年9月10日
秋田局・新庄機関区 昭和28年9月11日〜昭和47年4月24日
鹿児島局・志布志機関区 昭和47年4月25日〜昭和49年3月31日
5.主な運転区
山田線、北上線、田沢湖線、奥羽本線、陸羽西線、志布志線
6.運転粁 1,737,359.7粁
7.保存場所 茨城県笠間市石井児童公園
(以上は現地設置の説明板による)

C58275斜正面
C58形蒸気機関車(愛称シゴハチ)は国鉄の前身である鉄道省が1938(S13)年から製造した機関
車で8620形の速度と9600形の牽引力を兼ね備えたもので431両製造された。

C58275正面
C58275背面

C58275運転室内
C58275運転室内
保存状況
良好、天井には屋根が設けられ降雨を避けるようになっている。周囲は鉄柵に囲まれ施錠
されているため機関車に触れることはできない。当然運転室への出入りもできない。特別の
日に開放しているのかは確認できなかった。
ザ・ヒロサワシティ
(筑西市茂田)ザ・ヒロサワシティ・レールパーク 2019(R1)年7月3日見学
D51116蒸気機関車
D51形(愛称デコイチ)蒸気機関車は日本国有鉄道(国鉄)の前身である鉄道省が設計製造し
た単式2気筒で加熱式のテンダー機関車で、主に貨物輸送のために用いられました。のちに
新幹線を開発した島秀雄氏が設計したことでも有名です。
1936(S11)年から製造され、太平洋戦争中に大量生産されたこともあり国鉄における所属総
数は1115両に達しており、ディーゼル機関車や電気機関車などを含めた日本の機関車1形式の
両数でも最大を記録しています。
この記録は現在も更新されていません。形式名から「デゴイチ」という愛称を持ち、日本の蒸
気機関車の代名詞にもなっています。
1116号機は太平洋戦争中の1944年8月に製造され、重さ95t、長さ約20m、高さ4mの大きさです。
旧国鉄宇都宮機関区での東北本線を皮切りに本県や北海道などで走行し、1976年引退しました。
戦時中に製作されたため戦時型と呼ばれ、資材節約と工期短縮のため台枠を省略した船底形炭
水車に変更されていました。また北海道に渡ったことから寒冷地対策として、開放形運転台か
ら乗務員扉の付いた密閉形運転台への改造が実施されているのが大きな特徴です。
(レールパーク到着日)平成30年10月19日、 ザ・ヒロサワシティ・レールパーク
(以上は現地設置の説明板による)

D51116斜正面

D51116正面
D51116背面

D51116運転室
保存状態
極めて良好、見学通路はプラットホーム式となっているため機関車に触れることは可能、運転
室は出入口が施錠されているため中に入れない。他の保存車両と共に専門の係員がメンテナン
スを行っている。
(参考)
D51116蒸気機関車の他に下記の鉄道車両が保存されている。
1.新幹線E2系(E224127)
2.「北斗星」電気機関車(EF81138)
3.「北斗星」24系客車(オロハネ24551)
4.「北斗星」寝台車(オハ25530)(オハネフ2512)
5.鹿島臨海鉄道、マリンライナー「はまなす」
6.関東鉄道、気道車(キハ101)(キハ102)
つくば市さくら児童公園(つくば市吾妻4-3-3) 2019(R1)年7月13日見学
D5170蒸気機関車
「D5170」は日立製作所で製造され昭和12年9月に完成しました。はじめ岡山機関区に置かれ
山陽本線の姫路と広島の間を走っていましたが、昭和25年8月に北海道に移され、五稜郭、小樽
築港、追分等の機関区で昭和50年12月まで活躍しました
その間に走った距離を合わせると287万8164キロメートルにもなります。地球から月までの距離
がおよそ38万キロメートルありますから、月まで3往復してまた月まで行くことが出来る距離を
走ったことになります。
「D5170」のDは動輪の数(ABCDのDですから動輪が4つあります)51は型式、70はこの型式の機
関車の番号を現わしています。D51(デゴイチ)型の機関車は早さよりもひく力が強いので主に
貨物列車用に使われていました。SLというのは英語のSteam Locomotive(蒸気機関車)の略称
です。
(以上は現地設置の説明板による)

D5170斜正面

D5170正面
D5170背面

D5170運転室内
D5170運転室内
保存状態
極めて良好、天井には屋根が設けられ降雨を避けるようになっている。見学通路はプラット
ホーム式になっているため機関車に触れることは可能、運転室への出入りは自由。子ども達が
運転室の中で嬉々として遊んでいたのが印象に残った。
つくば市さくら児童公園では子ども達が交通ルールを学びながら遊ぶことが出来る場所で、自
転車や三輪車を1時間50円で貸し出している。
自転車の走行コースには車両用の信号機が設置され、横断歩道や歩行者用信号機もあり、交通
教室や映画、スライドをを使った学習指導も行っている。
オランダのアムステルダムをアレンジしたレンガ造りの建物が事務所になっていて、
蒸気機関車、D5170と共に独特の雰囲気を醸し出している。また園内には1977(S52)年6月まで東名
高速道路、名神高速道路で活躍した高速バス、ドリューム号(日野RA900P,1969年式)が保存され
ている。

D5170保存の様子
アムステルダム駅舎を模した事務所
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