こだわりの夜通し焼き      平成17年10月22-23日


 今回は、TさんとIHさんが夜通しで炭焼き体験をしたいとのお話を受け、実現することになったんです。
炭焼きを始めて5年になりますが、殆どは早朝から焼き始めて夜までに焼き上げていたんです。偶に翌日まで続けることもあったんですが、その場合でも火を絞って帰宅していたので、今度の様に小屋で仮眠を取りながら夜通し焼くというのは初めてなんです。
 もともと、炭材の自燃が始まれば出来るだけ低い温度で長く時間をかけて焼くのが理想的なんです。普通は13時間前後で焼いていたんですが、より堅く・より上質の炭を焼くには今まで以上に時間をかけて、例えば20時間位かけて焼いて見たかったんです。だから、今回のTさん・IHさんの申し出は、実は大歓迎だったんです。今まで何故やらなかったか?ですって、えぇ、やれば出来たんですが、夜一人でこの山の中にいるのが怖くて出来なかっただけですよ。

 さて、3人で炭焼きをするという情報はFさんとIKさんにも漏らしてあったものだから、当日仕事に掛かろうとしていたら、ひょっこり予告無しで来てくれました。いつもは一人でやっているところであるが、今日はこんな素晴らしいお友達がやって来てくれて、本当に気が乗って来るね。スタート前のミーティングを終えてさあ始まり、先ずは炭材詰め。炭材は普通、ドラム缶の長さに合わせて切った長いもの(勿論割って)入れる様だが、私の場合は15センチ位の短冊に切り刻んでおく。そして、その短冊をドラム缶の底から上まで綺麗に隙間なく、しかも竹の表を上にして敷き詰める。竹に付着したゴミやオガクズは払拭しておく。こうすることにより焼き上がり後の手入れがうんと楽になるのである。(Tさんが丁寧に炭材を詰めている様子をご覧下さい。)

 炭材を詰め、蓋をして、ドラム缶の上にしっかり土をかけたら火入れです。そうそう、これも私の独特のやり方ですが、炭材を詰めたドラム缶(炭化室)の前に3分の1に切ったっ別のドラム缶が付いていて、そこが燃焼室になっており、火入れの前にこの空間に出来るだけ多くの燃材(薪)を入れておくのだ。これは安定した自然と最終焼き上げ温度を高くする為なんです。こうして火入れ・着火したのが午後3時でした。
 火が点いて少し落ち着いたと思ったらFさんが「お神酒を上げなくちゃダメじゃないの?」と。「そりゃそうだ!いいこと言うね、じゃ!」と神妙に私とIHさんがお神酒を上げました。そして上げたお神酒のお裾分けとばかりに小屋に入って皆で、「乾杯!!」。
 十分おき位に薪をくべ、焚口に滓が溜まると滓を除いて新しい薪を詰め込む。そして窯の後ろにある煙突の煙の温度を観る。これを3時間からそれ以上、中の炭材が自燃するまで続けるんです。自燃したかどうかどうして分かるかって?うん、煙の温度が80度を超え、薪くべしなくても温度がさがらなくなることで分かるんだね。でも今日の炭材は切ってからまだ2ヶ月たってない青い竹だから中々温度が上がらない、76度までで。火入れから5時間が経過したが76度は変らない、「うーん・・・、温度は上がらないが自燃しているかもしれないから焚口を絞るか!」と決断、15センチ角の焚口をレンガと土で塞ぎ直径4センチのパイプ1本の空気穴だけにして様子を観た。次第に温度が下がる、1時間後には72度まで下がった。70度を切ったらもう一度薪をくべ様と考えて我慢して様子を観続ける。更に一時間、依然72度、「よし!なんとかもっている」、更に一時間、同じく72度「これなら行ける!!」結局竹の乾燥期間が短かった為水分が残っていて温度が上がらなかったが、何とか自燃は持続出来ていたのである。夜の11時頃になると少し温度が上がって来た様だ73度だ。
 温度が安定するまで皆んな落ち着かなかったでしょう?ですって!いや、どうして気楽でしたよ、「失敗も体験だ!!」の程度でしたから。そう、FさんとIKさんが帰った後晩御飯の準備、といっても家内が作ってくれたトン汁と鉄板焼きに焼きお結び、それにビール・日本酒の豪華版だ。鉄板焼きは勿論いくらでもある竹炭の火で焼くのである。こういう時囲炉裏って最高だよね。
 長い夜もこの3人ならば飽きることが無い、山の話・マラソンの話・ヨットの話・南極の話・・・炭焼きの話以外にこんな話が有る人っているっ?? たぐい稀な名物男たちばかり集まったもんだから・・・。 お酒も程々に入って本当に時間の経つのも忘れて。
 煙突の煙の温度は午前1時になって76度となり、完全に安定したので、寝ることにした。食べたものや食器をざっと片付け、3人の寝るスペースを作り寝袋に入ると忽ちイビキが始まった。
 寝る時は星空が見えたが、午前3時頃突然の雷雨があった。しかし私以外は覚えていない、二人は死んだようにグッスリ寝込んでいたのだった。
 朝6時起床、雷雨は完全にあがって良い天気になっていた。煙突の煙の温度は80度、文句無しの順調さである。その後も順調で正午に300度UP(温度計が300度までしか測れないのでそこで外してさらに30分焼き上げ、マッチを煙に近づけて発火するのを確認して、ねらした後窯止めした。終了は午後1時、火入れから窯止めまで22時間のこだわり焼きでした。

 窯止めから6日後に窯出ししました。ご覧の様です。外観からどう見えますか? とにかく、堅く・きれいでとっても良い炭が出来ました。これならどこへ持って行っても恥かしくない出来映えです。
 Tさん・IHさん! 二人の熱意が良い炭を作ってくれましたよ。Fさん・IKさん!激励有難う。