私の竹炭焼き日記から
平成17年1月  

 1月9日朝5時前起床、今年初の竹炭焼きです。家から車で十分、街灯が途切れて真っ暗な山道に入ったところに私の炭焼き小屋が在る。満点の星空の下といえば優雅だが、子供の頃の肝試しのような恐怖感がよぎる闇の中だ。前の日に炭材(竹)、燃材(薪)の詰め込みを済ませてあるので直ぐに火入れにかかった、5時半だった。
私の炭焼きはドラム缶を使った簡易なものですが、改良を重ねた今の窯なら結構良質の炭が出来ると思っています。とは言え、硬くて金属音のする炭になるのは極僅かで、歩留まりの点で未だに試行を繰り返しているところです。

 炭にするとは、燃やさずに炭化させることですから、如何にうまく炭化にもって行くかがポイント。焚口に一杯詰め込んだ薪を手前で燃やしながら、中の竹を酸欠状態にするのですが、燃やし方が足りなければ炭化は持続せず、多ければ燃えてしまう。このコントロールを煙道の煙の温度を見ながらするのです。
 初めのうちは目を離せませんが数時間たつと安定して来るので、窯の傍にある小屋(自作の掘立て小屋)の囲炉裏に火を起し、暖をとったり飯を作ったりします。
 10時ころ、薪割をしていると「ようやってますね!」と近所のおかみさんがひょっこり現れた。何回か来たことのある人だ。「ネンキが入って来たしいい炭が出来ッペ!」とはその旦那さん。初対面なのに向こうが知っているらしい。ガーデニング用の材木を切りに近くに来たから寄ったとコーヒーとクッキーをご馳走してくれた。

 可愛い来訪者(?)もありました。ジョウビタキ(メス)です。冬になると何時も来る鳥だが、薪割りしている私を遠巻きに見ているのです。お目当ては割った薪の中にいるサナギのような虫。私が物陰に隠れると直ぐ飛んで来て、2・3回くわえてはずしたと思ったら次に一気に呑み込んだ。満足してどこかへ飛んでいきますが15分位するとまたやって来るお友達です。
 12時ころになると窯の温度はさらに安定して、家に帰っても良いのだが今日はここで鍋焼きうどんを作ってお昼を。材料の野菜は勿論ここの畑で作った小松菜などです。

 以前はよく家内が手伝いに来ていたが最近は来なくなった。陶芸が忙しくなったからだ。年末にはエトの鶏の焼物がウケて、今や店に出してくれと頼まれて数十個作ったがまだ足りず年が明けても作り続けているのでした。お互いに趣味の範囲でやっていることだが、目下のところ私より家内の方が評判が良いのだ、残念ながら。

 午後4時半、夕焼け雲が空に浮かんできれいだ。ジョウビタキ君は日没まで近くにいた。この頃、窯の中の竹全域に炭化が進み、窯全体の温度が上がって来る。5時半、陽は完全に沈んで薄明かり、6時になると真っ暗闇、暗闇の中に一人でいるのはつらい。囲炉裏の火をどんどん足し、ラジオをつけ、気を紛らわせながら窯の温度が目標に到達するのをひたすら待つ。
 午後7時、ようやく目標温度に到達したところで出入り口を塞ぎ、全体に土を被せると今日の終わり、後は数日後冷えてから窯出しへ。これが私の竹炭焼きです。

 退職してから始めてもう4年、売るほど沢山は作っていないので自分と一部のお友達に使って頂いている程度です。しかし、私は炭焼きをしていることにより、炭の恩恵もさることながらそれ以上に、周りの田舎の人々とつながりが出来、また、趣味の話題からまったく異分野の人とも交際の輪が広がり、友達が増えたことをとても嬉しく思っています。