08/11/22〜24 信州の旅

一日目 真田氏ゆかりの城下町、上田を歩く

朝日のオレンジに染められた特急列車に飛び乗って、僕らは一路信州へと向かった。

最初の目的地、上田には11時前に到着。駅前にたたずむ真田幸村像の前で写真を撮り、街のメイン通りを歩き始めた。周りを見渡すと、商店街のショーウィンドウ、信号機の下の案内板、果てはトイレの壁にまで、「六文銭」が描かれていた。このあまりの徹底ぶりに、上田という町がいかに真田を愛しているのかが伝わってきた。


■上田城大手門


■上田駅・真田幸村像

駅から歩いてそう遠くないところに、上田城はあった。天守はないが、立派な門構えと石垣の中に埋め込まれた一際大きな「真田石」が目立っていた。城内にあった真田神社で旅の安全を願い、市立博物館で上田城の歴史を学び、城を後にした。

次に向かったのは歴史小説家の池波正太郎記念館。しかし事前の勉強不足のため大きな感心は生まれなかった。その近くで何やら小さい催し物が開かれていて、そこの出店で食べた豚汁がやたらとおいしかった。

お昼ご飯は刀屋へ。この店は前述した池波正太郎ごひいきのそば屋で、僕らは本場の信州そばを食すべく盛りそばを頼んだ。並盛を頼んだはずなのに、出てきたのは山のように盛られたそばであった。そばの旬とあってコシがあり、スルスルと口に入っていくのだが、いかんせん量が多く、食べ終わった頃には「年越しまでそばはいらない…」という状態になっていた。


■しなの鉄道大屋駅


■刀屋の盛りそば(並)

上田を後にした一行は、次なる目的地「海野宿」を目指し、ローカル線しなの鉄道に乗って大屋駅へと向かった。駅から海野宿へと向かう途中、工事中の道路に出くわしたため、千曲川沿いを歩くルートに変更した。道は細く、側面は崖になっており、落ちたらどこまでも転がっていってしまいそうな感じであった。だが、こういうところへ来ると、僕らの中に普段眠っている冒険心のようなものが刺激されて、むしろ楽しくなってくるのであった。この道も先で切れていたが、力ずくで崖をよじ登り、フェンスを乗り越えて、先へと進んだ。

しかし、歩けど歩けど目的地は見えてこない。さらに、時折り横切る車は確実に80km越えと思われる猛スピードで走り去り、しかもそのドライバーは皆、浜崎あゆみのようなサングラスをかけていた。この時ばかりは長野県民というものを疑ってしまったが…。

駅から歩いて約30分、海野宿へとたどり着いた。まるで時が止まってしまったかのような町並み。その残り方は完璧に近いものがあった。しかし、観光地にも関わらず人の姿はほとんどなく、相変わらず猛スピードの車が走り去っていく。これだけの素晴らしい町並みがありながら、観光客に優しくないこのような現状があることについては、何とももったいないという感じがした。

ウミノが海野氏ゆかりの白鳥神社でお参りを済ましたその頃には、夕日の赤が山の向こうへと沈もうとしていた。


■白鳥神社の夕暮れ


■海野宿

再び上田に戻った僕らは、新幹線に乗って長野駅へと向かった。しかし、長野駅に着いたもののお腹はお昼に食べたそばのおかげで一向に減らず、本屋、土産物屋、ドトールと、行くあての定まらない時間が続いた。このままではらちが明かないので、ひとまず本日の宿がある篠ノ井駅へと向かうことにした。

駅から宿までは結構な距離があったが、ともかく早く休息したい一心で、歩を進めた。そして、暗闇の中怪しく光る「ナイスイン村一番」の看板を見つけた。外観も内部も突っ込みどころが満載であったが(その話はここでは置いておくこととして)、部屋で一息つくと、さすがに腹が減ってきたので、外へと食事に出かけた。だが、辺りを見渡す限り目ぼしい店はなく、「コンビニ弁当で済まそうか…」という誘惑に負けそうになったが踏ん張り、遠くに見えたファミレスらしき看板の希望の光へ向かって、僕らは全力ダッシュした。

そこにあったのは「グーギーズカフェ」という馴染みのない名前。とりあえず入ってみることにした。店内は5、60年代?のアメリカを彷彿とさせるような雰囲気。食事のメニューはファミレスより若干高めに設定された洋食が中心のものであったが、試しに頼んでみたポークステーキは良い意味で期待を裏切られたおいしさだった。宿に戻り、今日の感想もそこそこに、眠りについた。


■グーギーズカフェ

二日目 世紀の大決戦地、川中島を駆け抜ける!

昨日に引き続き、二日目も快晴に恵まれた。チェックアウトを済ませ、歩いて篠ノ井駅へと戻った。そこからタクシーに乗り換え、長野電鉄松代駅へと向かった。松代も松代藩真田氏の城下町として栄えた場所で、近くには川中島合戦とも関わりのある松代(海津)城跡や真田宝物殿、真田邸等がある(今回は残念ながら時間の都合上回ることができなかったが…)。

ひとまず僕らは、不機嫌の塊のような駅長のおじさんをいなしつつ、駅構内にあったレンタサイクルを借りて、何とも荒い出発をしたのであった。朝ご飯をまだ取っていなかったので、近くの土産物店でおやきとお茶をいただいた。おやきには野沢菜、ごま味噌、じゃがバターなど、具に様々なバリエーションがあり、どれもとてもおいしかった。信州に訪れた際はぜひ!お勧めである。


■松代駅前の土産物店のおやき


■あたらしい出発

自転車に乗った5人組が川沿いの道を突っ走る。しかし、昨日に引き続きまたしても道は橋のたもとで切れており、仕方なく二人組になって自転車を橋の上へと力ずくで持ち上げた。橋を渡ってすぐのところで、偶然見つけた「典厩寺」。ここは武田信玄の弟信繁の墓所であり、川中島合戦の戦死者を共に弔っている寺であった。日本一のエンマ大王の迫力もさることながら、川中島記念館と称する寺所有の宝物展示室には目を見張るものがあった。

次に向かったのは、長野五輪スタジアムの隣にたたずむ、山本勘助終焉の地「勘助宮」。ここではノガがお決まりのパフォーマンスをしてくれた。昼食をドライブインで取り、いよいよ川中島古戦場(八幡原史跡公園)へ。ガイドのおばさんが川中島合戦についてとてもわかりやすく説明してくれ、理解が深まった。上杉謙信と武田信玄の一騎打ち像の前で写真を撮り、八幡神社でお参りをして、公園内の土産物屋へ。ここの店のおばさんには、不意の落し物を助けてもらったほか、おまけにりんごをもらったりで、義を感じずにはいられなかった。


■川中島を駆け抜ける


■強行突破

次に向かったのは、山本勘助の墓。ところがここに来て、道の先導をしていたノガの「山勘」が働かなくなり、辺りをさまようこととなった。急がば回れ、先ほどの古戦場に戻り、道を教えてもらって、再び走り始めた。車とスレスレで行き違う橋を懸命に渡ると、その橋のたもと近くに山本勘助の墓はあった。ここでもガイドのおじさん(というか近所の良いおじさんといった方が妥当か)が丁寧かつわかりやすい説明をしてくれた。説明を聴き終わったその頃には、日はとっくに沈み、夜の暗闇が空全体を覆い始めていた。寒風が吹きすさぶ中、僕らは駅へ向かってひたすらペダルを漕いだ。

そしてようやく、スタートの松代駅に到着。今日一日お世話になった自転車の鍵を返しに行こうと駅の窓口へ行くと、またしてもカンカンに怒ったおじさんの姿が…。その後のやりとりの内容はここでは省略するとして、何とかその場を乗り切った僕らは、傷心のままタクシーで篠ノ井駅へと向かい、電車を乗り継いで本日の宿がある松本へと向かった。車中、窓の外には長野えびす講煙火大会の花火が晩秋の空を華やかに彩っていた。


■川中島をさまよう


■謙信VS信玄一騎打ちの像

7時、松本駅に到着。駅前からタクシーに乗り、美ヶ原温泉へ。本日の宿「ニューことぶき」は俗にいう和風旅館であった。別室に用意された夕食を、ビールで乾杯しつつ、おいしくいただいた。温泉で今日の疲れを癒し、明日に備えて眠りについた。


■旅館での夕食

三日目 国宝天守松本城、そして舞台は甲州へ

8時起床。やはりしっかりとした朝食を食べると気合いが入る。ララが納豆がないと嘆いていたが。チェックアウトを済ませ、タクシーで松本城へ。立派な門構えと、その奥に見える五層六階の立派な天守閣。別名烏城と言われただけあって全面が黒塗りで覆われ、白壁が美しい姫路城とは対照的な力強さがあった。


■松本城U


■松本城T

城内は薄暗く、歩を進める度に床のきしむ音が響き、まるで人を拒むかのような急な階段が、各階に設けられていた。さすが現存天守といった趣であった。城内の展示品としては、刀剣類よりも銃砲類の豊富さが目立った。松本には銃砲のコレクターでもいたのだろうか。その辺りは想像の域を出ないが。ようやく辿り着いた天守からは、雄大な南アルプスの山々が周りをぐるりと囲んでいた。

松本城を後にした僕らは、街中にあった「カフェ・ダイニング 吟」で昼食を取った。信州牛を使用したカレーをいただいた。おいしかったが、量的に物足りなかった…。まだ若いという証拠か?それから駅ビル内の土産物売場で買い物をして、特急列車に乗り込んだ。外はあ〜め〜が♪降り始めていた。


■カフェ・ダイニング吟の信州牛カレー


■松本城V

列車は山間部を通り抜け、やがて視界が広がり始めると、間もなく甲府へと辿り着いた。駅前からタクシーで武田神社(躑躅ヶ崎館)へ。境内にある宝物殿を見学した。上杉軍の「毘」の旗や、七星が描かれた軍扇、太刀など興味深いものが多くあった。

夕食は駅前通りにあった「小作」で甲府の郷土料理ほうとうをいただいた。あつあつの味噌仕立ての鍋に、平打ちの麺と野菜類がたっぷりと入っている。ホッとする味に、心もお腹もいっぱいになった。


■小作のほうとう


■武田神社

甲府駅に戻った僕らは、特急あずさに乗って、新宿へと向かった。いよいよこの旅の終わりも近づく…。ノガ、コッキと別れ、10時過ぎ、日立に無事到着。今回の旅もいろんなことがあったが、振り返れば楽しい思い出ばかり。しばらくしたら、また次の旅の準備にとりかかることにしよう。

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