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記事更新日2007/1/1
 3−1 ドイツのマイスター 

きっと、みなさんも、一度くらいは、マイスターという言葉は耳にしたことがあるでしょう。
ドイツ語で Meister は、親方(国家試験に合格した職人の最高位)、名人、の意味を持つほか、優勝者、団体の長など、の意味があります。

ドイツの手仕事、職人の世界を語る上で、まず知っておくべきこととして、マイスター制度(親方制度)というものがあります。
制度自体は中世までさかのぼるとされています。
もともとは、徒弟が、親方を訪ねあるいて、修行する旅だということのようです。 このような制度は、かつてどのヨーロッパ諸国にも存在したのでしょう。
日本の “渡りの職人”のようにして修行したのでしょう。

近代に入り、現行の社会環境、習慣にあわせ、
法制化した現在の職業訓練制度になりました。
何年も修行し、多くの経験と、試験を乗り越え、
マイスターの称号を取得し営業することを許されるわけです。
記事更新日2006/10/18
 3−2 手仕事

因みに ドイツで言う手仕事とは、大工・石工・指物・パン屋・床屋・肉屋・・・・などもちろん 、鍛冶屋も入ります。
そして、近代に入り自動車整備士や機械工なども新たに加わる。

職業階級は、三階層に分かれ、
レアリング(Lehrling見習)・ゲゼレ(Geselle職人)・
マイスター(Meister親方)レアリング(見習)は三年間、マイスター(親方)工房で修行しながら、専門的な職業学校に通わなければならない。

三年間ある修行期間中の半分は、工房にて実践的に経験をつみ、半分は学校で理論的に学ぶ。最後に、職人になるための国家試験をうけ、合格して、晴れてゲゼレ(職人)となるわけだ。職人になると、レアリング(見習)より賃金もあがり、より責任ある仕事を任されるようになる。
記事更新日2006/9/17
 3−3 Lehrling

レアリング(Lehrling見習)の年齢は様々だが、
全体的に若く10代後半〜20代前半がおおくみうけられた。
興味深いのは、日本だと圧倒的に中学を卒業すると、
高校等に進学する若者が多いが、ドイツでは、義務教育終了後、職人になるため、職業訓練に入るものもめずらくない。(もちろん、大多数ではないが・・)

その背景にあるのは、教育システムが複雑なことや、
兵役義務(もしくは、社会福祉)で約1年、など若くして将来設計を立てなければならないという理由もあるが、なによりも職人に対する社会的理解と地位が与えられていることだろう。若くして、将来を決め、職人の世界に飛び込んでこさせる環境があるのだろう。

そういえば、ドイツ修行時代、同僚の若い見習いが、「来年、試験を受けて、ゲゼレになって、そのあと兵役に行って、そのあと工房にはいって・3年・・・・
それから・・・マイスターになるのは・・・」などと、指折り計算していたのが印象的でした。
  
記事更新日2007/9/5
 3−4 Geselle

ゲゼレ(Geselle 職人)
レアリング(見習い)は、3年の修行期間を終えたあと修行の締めくくりとして、職人になるための国家試験を受ける。試験は、筆記と実技がある。実技の試験では、それぞれが腕を振るって、ゲゼレンシュテゥクを製作する(試験のために作る卒製のようなもの)これらの試験を終えて、ゲゼレ(職人)になるのだ。

職人になると、晴れて一人前と認められ、与えられる給料も仕事も充実していく。これらの制度が体系だってできていることは、職人の社会的地位、技術の継承等に大な意味を持っている。職人ライセンス制度によるドイツにおいては、プロとアマチュアの差は大きいといえるだろう。

  2001年ドイツ
  ベテラン ゲゼレ(職人)と 若いレアリング(見習い) 

記事更新日2007/11/13
 
3−5 伝統のワンダーゲゼレ  Wander geselle

現代の日本もドイツも、渡りの職人がなかなか成り立ちにくいですが。ドイツ語圏の職人の中には、約3年間をワンダーゲゼレとして過ごす者もいる。
(注:職人みながワンダーゲゼレをやるわけではない。)


ドイツ語でワンダーは、さ迷う ゲゼレは職人直訳すると、「さ迷う職人」だが、渡りの職人といったところだろうか。伝統的な風習にのっとり、家を離れ家族とはなれ、ドイツの街角でたまに彼らの姿を見かける。

以前、彼ら自身いろいろ聞いてみたことがある。
それによると、彼らにはいくつかの決まりがあるようだ。
最低約3年、職人として実務を積む旅だが、旅の間、自分の家の半径50km以内に立ち寄ってはならない。一つの場所に、3ヶ月以上居てはならないなど、持ち物は、何を持っていってもいいが、自分自身で、持てるだけ(通常彼らは、数枚の作業着など、最低限のものしか携帯しない)
過酷な旅だ、これには、いろいろな工房で経験をつみ腕を磨く以外にも、精神性を鍛えるという意味もあるようだ。

記事更新日2007/12/9
 3−6 我が家に来たワンダーゲゼレ

我が家には、なぜか毎年、事前に何度かメールがあって、日本語もわからずワンダーゲゼレが訪ねてくる。 写真の彼もその一人で、スイス人(ドイツ語圏)のセバス(仮名)。
彼らは、一様に写真の格好です。(伝統的な服装です)彼の旅も3年目を過ぎ、帰国して、家に帰宅して終了の儀式をし、開放されるそうです。

写真の彼は、背丈も2mぐらいあってスマートで、ビシッと決まってますが、以前来たのは、少しズングリとしたドイツの若者でした。 4月でしたので、ちょうどその週末に地元の桜祭りがありました。 せっかく日本に来たのだから、花見ぐらいしなきゃ!
ということで祭りにつれだした。(外出時は、いつも正装のこの格好です)


シルクハットに黒のコールテン地のパンタロン(ラッパ)・チョッキにネクタイに杖・・だから目立つのなんのって、みんなの目線が・・
そのうち、行きかう人たちに 「何の芸やるの?」、 「がんばって!」などと声をかけられて・・・どうやら、みんな大道芸人だと思っているようです。祭りだったし、確かに見ても、踊るポンポコリン・・だよな・・・・あの格好って・・・

注:職人みながワンダーゲゼレをやるわけではない。 
つづく 

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シルクハットに、チョッキに パンタロン、
杖ついて、この格好で世界を旅してます・・・・

又、様々な伝統的な職業によってワッペンが違ったり、
コスチュームは、同じ形だが、職業によって色が違うらしい。
(肉屋は・・・パン屋は・・・大工は、何色とか・・・)
因みに、鍛冶屋の色は、黒く見えますが、実は微妙に青味がかってます。
 

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E-mail: s.zwei@net1.jway.ne.jp                                →このページのTOPへ

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